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第四話 炎の中で
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暗闇の中で何かが聞こえて来る。頬を撫でる熱風、悲鳴の声、馬蹄の音。たくさんの音が入り混じって、頭の中を響き渡る。
重たい瞼を開けた。夜なのに不思議なことに夜空はオレンジ色に染まっていた。パチパチと何か弾ける音がした。
そこへ視線を向ける。
どうしてだろうか。炎は激しく燃え上がり、隣の家屋へ燃え広がっていく。
重たい身体を手をついて起こし目を凝らす。
熱風が顔に当たり思わず手で覆ってしまった。
「うっ」
目の前には見慣れた茅葺き屋根の家。その隣に鶏小屋があって、庭には木が一本生えていた。父と母、一緒に苗から植えた思い出の木は今、炎の中に包まれている。
パチパチと弾け、火の粉が舞い上がっていた。
「……え?」
頬に伝う雫が顎へと流れ落ち、乾いた土に滴り落ちる。
真っ赤な雫にそれが自分の血だと分かった。
思い出した。何者かによっていきなり、後頭部を殴られたことを。
黒色の髪の少女は殴られた箇所を手で押さえる。ベットリと血がついたのがわかった。いまだにズキズキと脈を打つたびに痛みが来て、顔を歪めた。
状況がつかめない。とにかく、辺りを見渡すことにした。
横たわる街の人々。折り重なるように倒れた母と子供。農具の鍬や鋤を手に持ったまま生き絶えた農夫たち。それを漆黒の鎧を身に纏った兵士たちが颯爽と横切っていく。何人かの兵士は軍旗を掲げていた。
軍旗には黒地に赤い竜、それに剣と盾が交差した紋章は『アトラス帝国』を意味する。
少女の街は突如、帝国軍によって襲われたのである。
リュデンヌ地方の北部に位置するこの場所はかつて魔王が支配していた領地の国境線付近にあった。
魔王がいなくなってから150年の間に人々はこの不毛の土地に移り住み、田畑を耕して木々を育てた。
平和だったソリアの街。領主アンジュが帝国の方針に対して、反抗的な態度を取ったのが原因で今、攻め滅ぼされようとしていた。
噂話では、帝国軍の将軍シルビアの悪口を言ったとかなんとか。
漆黒の鎧に身をまとった兵士たちが次々に現れて、逃げていく人々を背中から斬り伏せていった。
かぶとに赤い鳥の羽をつけた帝国軍の将校がその光景を見て、満足げに歩いていた。駆け寄ってきた帝国兵から報告を受ける。報告にきた帝国兵は将校の前で、かかとを揃え、胸に手を当てる。
「報告。アンジュ卿は既に街から逃走していた模様です」
「なに? おのれぇ……我が軍の動きを読んでいたか」
「内通者がいたのかもしれません。いかがいたしますか?」
「バードラ隊を出せ。やつの首を取るまでは帰るなと告げろ」
「はっ」
帝国軍の将校の一人が噴水のところに飛び乗って、皇帝の押印がされた羊皮紙を掲げて、高々に宣言する。
「聞け! ソリアの街の者よ! 我がアトラス帝国に反逆したアンジュ卿、およびその領地であるソリアの街をすべて滅せよと、シルビア将軍からのお達しである!」
「まっ、待ってくれ。俺たちは何にもしらない! 悪いのはアンジュ子爵だ」
「そうだ、おらたちはなんも悪いことはしてない」
「黙れッ!!」
「え?」
そういうと帝国軍の将校は農民の男の腹部を剣で貫く。他の生き残りも帝国兵によって、次々に殺されていった。まだ息のある農民を足で無慈悲に蹴り飛ばす。その勢いで、少女の前に転がり込んだ。
帝国軍の兵士たちが少女を認識する。
「ん?」
「おい、まだ生き残りがいるぞ」
「ほんとだ! おい、こっちだ!」
帝国兵らの視線が少女に集中する。まるで、死肉に集まるハイエナのように彼らは薄気味悪い笑みを浮かべていた。
帝国兵の足元の地面は斬殺された街の人々の血で、赤く染まっていた。
「あ、あぁ……」
少女は恐慌に声を震わせる。
自分も殺されると察した。
少女は慌てて立ち上がろうとするも腰が抜けてしまって、なかなか立てなかった。
それに笑い声が上がる。
その笑い声を聞きながらも少女は必死にその場から逃げようと這った。
「なんだ、ありゃあ」
「ほら、早く逃げろよ。追いつかれるぞ~」
「ダハハハハハッ」
「死にたくない……死にたくない……」
心の底から死にたくないと思った少女は帝国兵から逃げようとした。
「おい、あいつを捕らえろ」
かぶとに赤い羽根をつけた部隊長が部下の兵士に指示を出した。
二人の帝国兵が少女へと歩み寄る。
「こいつ」
顔を見合わせる。
「あぁ、間違いない。魔女だ」
少女の顔を見た瞬間、帝国兵の表情が険しくなった。
「隊長殿! こいつ魔女です!」
「なに?!」
部隊長はそれに駆け寄る。帝国兵の1人が乱暴に髪の毛を掴み、顔を上げさせる。どこにでもいそうな少女だったが、右目は真っ赤な紅色で左目は黄色だった。
「まさか、こんなことろにいるとはな」
「ち、違う。私は魔女なんかじゃない……」
「はっ。何をいうか。魔女め」
「隊長殿。オルデアンの魔女の特徴と瓜二つです」
「なに? おぉ、本当だ。貴様、オルデアンの魔女か」
オルデアンの魔女。今から100年前、オルデアンという街に一人の少女がいた。少女は生まれた時から森に住み、動物たちと会話ができ、強力な魔法の力を有していた。それがある日、突然、暴発し街一つを消し飛ばしたという。それが本当かどうかはわからないが、その少女の瞳の色は左右が違っていて、闇を連想させるような漆黒の髪だったといわれている。
「魔女はな。火炙りの刑と決まっているんだ」
恐怖に少女は掴まれた手を振り払おうと必死になり、足もバタつかせた。
重たい瞼を開けた。夜なのに不思議なことに夜空はオレンジ色に染まっていた。パチパチと何か弾ける音がした。
そこへ視線を向ける。
どうしてだろうか。炎は激しく燃え上がり、隣の家屋へ燃え広がっていく。
重たい身体を手をついて起こし目を凝らす。
熱風が顔に当たり思わず手で覆ってしまった。
「うっ」
目の前には見慣れた茅葺き屋根の家。その隣に鶏小屋があって、庭には木が一本生えていた。父と母、一緒に苗から植えた思い出の木は今、炎の中に包まれている。
パチパチと弾け、火の粉が舞い上がっていた。
「……え?」
頬に伝う雫が顎へと流れ落ち、乾いた土に滴り落ちる。
真っ赤な雫にそれが自分の血だと分かった。
思い出した。何者かによっていきなり、後頭部を殴られたことを。
黒色の髪の少女は殴られた箇所を手で押さえる。ベットリと血がついたのがわかった。いまだにズキズキと脈を打つたびに痛みが来て、顔を歪めた。
状況がつかめない。とにかく、辺りを見渡すことにした。
横たわる街の人々。折り重なるように倒れた母と子供。農具の鍬や鋤を手に持ったまま生き絶えた農夫たち。それを漆黒の鎧を身に纏った兵士たちが颯爽と横切っていく。何人かの兵士は軍旗を掲げていた。
軍旗には黒地に赤い竜、それに剣と盾が交差した紋章は『アトラス帝国』を意味する。
少女の街は突如、帝国軍によって襲われたのである。
リュデンヌ地方の北部に位置するこの場所はかつて魔王が支配していた領地の国境線付近にあった。
魔王がいなくなってから150年の間に人々はこの不毛の土地に移り住み、田畑を耕して木々を育てた。
平和だったソリアの街。領主アンジュが帝国の方針に対して、反抗的な態度を取ったのが原因で今、攻め滅ぼされようとしていた。
噂話では、帝国軍の将軍シルビアの悪口を言ったとかなんとか。
漆黒の鎧に身をまとった兵士たちが次々に現れて、逃げていく人々を背中から斬り伏せていった。
かぶとに赤い鳥の羽をつけた帝国軍の将校がその光景を見て、満足げに歩いていた。駆け寄ってきた帝国兵から報告を受ける。報告にきた帝国兵は将校の前で、かかとを揃え、胸に手を当てる。
「報告。アンジュ卿は既に街から逃走していた模様です」
「なに? おのれぇ……我が軍の動きを読んでいたか」
「内通者がいたのかもしれません。いかがいたしますか?」
「バードラ隊を出せ。やつの首を取るまでは帰るなと告げろ」
「はっ」
帝国軍の将校の一人が噴水のところに飛び乗って、皇帝の押印がされた羊皮紙を掲げて、高々に宣言する。
「聞け! ソリアの街の者よ! 我がアトラス帝国に反逆したアンジュ卿、およびその領地であるソリアの街をすべて滅せよと、シルビア将軍からのお達しである!」
「まっ、待ってくれ。俺たちは何にもしらない! 悪いのはアンジュ子爵だ」
「そうだ、おらたちはなんも悪いことはしてない」
「黙れッ!!」
「え?」
そういうと帝国軍の将校は農民の男の腹部を剣で貫く。他の生き残りも帝国兵によって、次々に殺されていった。まだ息のある農民を足で無慈悲に蹴り飛ばす。その勢いで、少女の前に転がり込んだ。
帝国軍の兵士たちが少女を認識する。
「ん?」
「おい、まだ生き残りがいるぞ」
「ほんとだ! おい、こっちだ!」
帝国兵らの視線が少女に集中する。まるで、死肉に集まるハイエナのように彼らは薄気味悪い笑みを浮かべていた。
帝国兵の足元の地面は斬殺された街の人々の血で、赤く染まっていた。
「あ、あぁ……」
少女は恐慌に声を震わせる。
自分も殺されると察した。
少女は慌てて立ち上がろうとするも腰が抜けてしまって、なかなか立てなかった。
それに笑い声が上がる。
その笑い声を聞きながらも少女は必死にその場から逃げようと這った。
「なんだ、ありゃあ」
「ほら、早く逃げろよ。追いつかれるぞ~」
「ダハハハハハッ」
「死にたくない……死にたくない……」
心の底から死にたくないと思った少女は帝国兵から逃げようとした。
「おい、あいつを捕らえろ」
かぶとに赤い羽根をつけた部隊長が部下の兵士に指示を出した。
二人の帝国兵が少女へと歩み寄る。
「こいつ」
顔を見合わせる。
「あぁ、間違いない。魔女だ」
少女の顔を見た瞬間、帝国兵の表情が険しくなった。
「隊長殿! こいつ魔女です!」
「なに?!」
部隊長はそれに駆け寄る。帝国兵の1人が乱暴に髪の毛を掴み、顔を上げさせる。どこにでもいそうな少女だったが、右目は真っ赤な紅色で左目は黄色だった。
「まさか、こんなことろにいるとはな」
「ち、違う。私は魔女なんかじゃない……」
「はっ。何をいうか。魔女め」
「隊長殿。オルデアンの魔女の特徴と瓜二つです」
「なに? おぉ、本当だ。貴様、オルデアンの魔女か」
オルデアンの魔女。今から100年前、オルデアンという街に一人の少女がいた。少女は生まれた時から森に住み、動物たちと会話ができ、強力な魔法の力を有していた。それがある日、突然、暴発し街一つを消し飛ばしたという。それが本当かどうかはわからないが、その少女の瞳の色は左右が違っていて、闇を連想させるような漆黒の髪だったといわれている。
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