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第三十四話 女神の御遣い
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――――女神には不干渉の誓いがある。これは人の世界に直接的な干渉してはならないというものだ。
今から数千年の昔、神と悪魔との間で戦いが起きた。その争いに女神たちは人間の持つ勇気と団結力を借りて戦いに臨んだ。
その結果、多くの人間を巻き込み、死なせてしまったのだ。
人間は女神のようには強くない。儚く、そして脆い。女神たちは悔い、同じ過ちをしないために不干渉の誓いを立てた。
だから創造の女神ソラーナも同じく、この世界の人間がどうなろうとも一切関与できなかった。
新しい文明が生まれ、滅び、そして、また生まれる。
ゼロから一にかわり、また一からゼロへと変わる。繰り返す世界をソラーナは見つめることしかできなった。
だが――イレギュラーが起きた。
これまで人間は魔物や魔族を悪と見なし、一致団結して、戦い続けてきた。
しかし、魔王ロランの誕生により人間は考え方が変わる。
ある王国の王が一つの答えを出したのだ。
魔王ロランを倒せないのなら倒さなければいい。放っておけばよいと。
戦う目的を失った王や権力者たちはやがて、欲を出し始めた。
力と名声、土地を求めて、王国同士で争いを始めたのである。
弱い王国は強い王国に飲まれ、まさに群雄割拠の時代となってしまった。
大陸中で人間は殺し合い、土地を奪い合う。
街は燃え、田畑は死体で埋め尽くされ、海へと流れる川は赤い血で染まった。
死の炎が全てを飲み込む。創造の女神ソラーナは深く悲しんだ。
「あぁ、なんと愚かなこと……」
♦♦♦♦♦
ここは天界のとある神殿。戦の女神、海の女神、大地の女神……多くの女神がここで悠久の時を過ごす憩いの場。
何人も踏み入ることのできない閉鎖された空間ともいっていい。
白を基調とした部屋に白いテーブルに椅子。
そこにソラーナは腰をかけていた。
そこではいつも本を読み、小鳥たちと一緒に歌を歌い、琴を奏でる。
ときに紅茶を飲みながら、地上の様子を眺めていた。
だが、今は違う。
下界で繰り広げられる光景を「エンペルア』という特別な水晶石で眺めていた。
街は真っ赤な炎に包まれている。
この街の歴史は古く、神聖な場所でもあった。
そこが今、襲われているのである。
そして、映し出される一人の白銀の長髪の女性。
細い剣を持ち、敵を無慈悲に殺していく姿。
返り血を浴びて真っ赤に染まったその姿はまるで鬼のようであった。
右手のあざは勇者の証。
本来は人々を救い、導く存在。そのつもりで選んだはずだった。
それが今では真逆の行動をとっている。彼女の進む先に殺戮の嵐が吹き荒れていた。
街は冷たい氷に包まれ、閉ざされる。
(―――― あの子には素質があったはず。なのにどうしてこうなったのか……)
すると白銀の女性が剣先を自分に向けて、何かを叫んでいるように見えた。
眉尾を寄せて、口を大きく開けている。
必死に訴えかけるような表情。
何を言っているかはわからないが、彼女の声だけは聞こえた気がした。
『お前を必ず殺す!! 待っていろソラーナ!!』
創造の女神ソラーナは背筋に冷たいものが走った。
そして恐怖した。
睨み上げて来る彼女の目力は凄まじく、プレッシャーを与えてくる。
間接的に見ているはずなのに、なぜ……そう思っているとなんと、『エンペルシア』に亀裂が入り、粉々に砕け散った。
思わず、驚いた。
こんなこと、初めてのことだ。
それほど、シルビアが強い力を持っているという証拠だった。
「……なるほど。この私を殺すつもりなのね。本気で……」
女神は自分の右手を見つめる。小刻みに震えていたのがわかった。その震えを止めるため、左手で抑える。自分が怯えている。女神の自分がだ。世界を創造した女神がだ。
「この私が怯えている……女神の私が……」
女神はこの世界で絶対的な力を持つ。彼女たちに人間は触れることすら許されられない。そんな一人の人間が『女神を殺す』と言うのだ。そんなこと、不可能はなず。
しかし、ソラーナには一つ神を殺すことができる者を知っている。それは勇者として、選ばれた者、もしくは勇者の血を引き継ぐ者たち。神の恩恵を与えられし者たちは唯一絶対的な神に対して、触れることができ、そして、勇者のために造られた聖剣エクスによって、殺すことができるのだ。ソラーナは椅子から立ち上がると指を鳴らした。右手に白木の杖が現れるとそのまま大理石の床を二度、叩いた。すると目の前に時空の歪みが発生しソラーナはそこへ入っていく。
♦♦♦♦♦
―――――ソリアの街、領主の屋敷にて、ロランは執務室にいた。めんどくさい事務作業をひたすらに行っていた。本当は誰かに任せてしまいたいのだが、こればかりは魔王として、やらなければならない仕事だ。街の復興に関すること。街の経済状況など、帝国の動きに関する報告書、フェレン聖騎士団の動向についての報告書の確認と、やることが多かった。一つ終わらせたと思うと一つ増える。終わりなき戦いが続いてるように思えた。だんだん、目が回り始めたロランは羽ペンとピタリと止める。書類をにらみつけ、今にでもあぁーと叫んで、破り捨てたい気持ちになったが、それをしたらそれをしたで、後々面倒なことになるのでしなかった。一回やったので、どうなるのか、経験済みだったので。こと切れたかのように机の上に力なく突っ伏した。
「ああ、もう……だめ……殺してくれ……」
そんなことを言いながら、おもむろに顔を横に向けると、そこにはいつの間にか応接のために置かれている椅子に創造の女神ソラーナが座っていた。淹れたての紅茶を優雅に飲んでいる。ロランは目を見開いて驚いた。
「うわっ?!!! なんでお前がここにいるんだよッ!!!???」
突然現れた女神に対して驚くロランだったがすぐに冷静になる。そして、先ほどの自分の言動を思い出し、少し恥ずかしくなった。顔が熱くなるのを感じる。そんなロランの様子を気にも留めず、女神は紅茶を飲み干すとカップを置いてから言った。その声にはどこか呆れてしまう。
「え? だって私、暇だから」
そう言うと、また新しい紅茶をティーポットから注いだ。今度は砂糖を入れずにそのまま飲むらしい。一口すすると満足そうな笑みを浮かべる。そんな女神の様子を見て、ため息をつくロランだった。
今から数千年の昔、神と悪魔との間で戦いが起きた。その争いに女神たちは人間の持つ勇気と団結力を借りて戦いに臨んだ。
その結果、多くの人間を巻き込み、死なせてしまったのだ。
人間は女神のようには強くない。儚く、そして脆い。女神たちは悔い、同じ過ちをしないために不干渉の誓いを立てた。
だから創造の女神ソラーナも同じく、この世界の人間がどうなろうとも一切関与できなかった。
新しい文明が生まれ、滅び、そして、また生まれる。
ゼロから一にかわり、また一からゼロへと変わる。繰り返す世界をソラーナは見つめることしかできなった。
だが――イレギュラーが起きた。
これまで人間は魔物や魔族を悪と見なし、一致団結して、戦い続けてきた。
しかし、魔王ロランの誕生により人間は考え方が変わる。
ある王国の王が一つの答えを出したのだ。
魔王ロランを倒せないのなら倒さなければいい。放っておけばよいと。
戦う目的を失った王や権力者たちはやがて、欲を出し始めた。
力と名声、土地を求めて、王国同士で争いを始めたのである。
弱い王国は強い王国に飲まれ、まさに群雄割拠の時代となってしまった。
大陸中で人間は殺し合い、土地を奪い合う。
街は燃え、田畑は死体で埋め尽くされ、海へと流れる川は赤い血で染まった。
死の炎が全てを飲み込む。創造の女神ソラーナは深く悲しんだ。
「あぁ、なんと愚かなこと……」
♦♦♦♦♦
ここは天界のとある神殿。戦の女神、海の女神、大地の女神……多くの女神がここで悠久の時を過ごす憩いの場。
何人も踏み入ることのできない閉鎖された空間ともいっていい。
白を基調とした部屋に白いテーブルに椅子。
そこにソラーナは腰をかけていた。
そこではいつも本を読み、小鳥たちと一緒に歌を歌い、琴を奏でる。
ときに紅茶を飲みながら、地上の様子を眺めていた。
だが、今は違う。
下界で繰り広げられる光景を「エンペルア』という特別な水晶石で眺めていた。
街は真っ赤な炎に包まれている。
この街の歴史は古く、神聖な場所でもあった。
そこが今、襲われているのである。
そして、映し出される一人の白銀の長髪の女性。
細い剣を持ち、敵を無慈悲に殺していく姿。
返り血を浴びて真っ赤に染まったその姿はまるで鬼のようであった。
右手のあざは勇者の証。
本来は人々を救い、導く存在。そのつもりで選んだはずだった。
それが今では真逆の行動をとっている。彼女の進む先に殺戮の嵐が吹き荒れていた。
街は冷たい氷に包まれ、閉ざされる。
(―――― あの子には素質があったはず。なのにどうしてこうなったのか……)
すると白銀の女性が剣先を自分に向けて、何かを叫んでいるように見えた。
眉尾を寄せて、口を大きく開けている。
必死に訴えかけるような表情。
何を言っているかはわからないが、彼女の声だけは聞こえた気がした。
『お前を必ず殺す!! 待っていろソラーナ!!』
創造の女神ソラーナは背筋に冷たいものが走った。
そして恐怖した。
睨み上げて来る彼女の目力は凄まじく、プレッシャーを与えてくる。
間接的に見ているはずなのに、なぜ……そう思っているとなんと、『エンペルシア』に亀裂が入り、粉々に砕け散った。
思わず、驚いた。
こんなこと、初めてのことだ。
それほど、シルビアが強い力を持っているという証拠だった。
「……なるほど。この私を殺すつもりなのね。本気で……」
女神は自分の右手を見つめる。小刻みに震えていたのがわかった。その震えを止めるため、左手で抑える。自分が怯えている。女神の自分がだ。世界を創造した女神がだ。
「この私が怯えている……女神の私が……」
女神はこの世界で絶対的な力を持つ。彼女たちに人間は触れることすら許されられない。そんな一人の人間が『女神を殺す』と言うのだ。そんなこと、不可能はなず。
しかし、ソラーナには一つ神を殺すことができる者を知っている。それは勇者として、選ばれた者、もしくは勇者の血を引き継ぐ者たち。神の恩恵を与えられし者たちは唯一絶対的な神に対して、触れることができ、そして、勇者のために造られた聖剣エクスによって、殺すことができるのだ。ソラーナは椅子から立ち上がると指を鳴らした。右手に白木の杖が現れるとそのまま大理石の床を二度、叩いた。すると目の前に時空の歪みが発生しソラーナはそこへ入っていく。
♦♦♦♦♦
―――――ソリアの街、領主の屋敷にて、ロランは執務室にいた。めんどくさい事務作業をひたすらに行っていた。本当は誰かに任せてしまいたいのだが、こればかりは魔王として、やらなければならない仕事だ。街の復興に関すること。街の経済状況など、帝国の動きに関する報告書、フェレン聖騎士団の動向についての報告書の確認と、やることが多かった。一つ終わらせたと思うと一つ増える。終わりなき戦いが続いてるように思えた。だんだん、目が回り始めたロランは羽ペンとピタリと止める。書類をにらみつけ、今にでもあぁーと叫んで、破り捨てたい気持ちになったが、それをしたらそれをしたで、後々面倒なことになるのでしなかった。一回やったので、どうなるのか、経験済みだったので。こと切れたかのように机の上に力なく突っ伏した。
「ああ、もう……だめ……殺してくれ……」
そんなことを言いながら、おもむろに顔を横に向けると、そこにはいつの間にか応接のために置かれている椅子に創造の女神ソラーナが座っていた。淹れたての紅茶を優雅に飲んでいる。ロランは目を見開いて驚いた。
「うわっ?!!! なんでお前がここにいるんだよッ!!!???」
突然現れた女神に対して驚くロランだったがすぐに冷静になる。そして、先ほどの自分の言動を思い出し、少し恥ずかしくなった。顔が熱くなるのを感じる。そんなロランの様子を気にも留めず、女神は紅茶を飲み干すとカップを置いてから言った。その声にはどこか呆れてしまう。
「え? だって私、暇だから」
そう言うと、また新しい紅茶をティーポットから注いだ。今度は砂糖を入れずにそのまま飲むらしい。一口すすると満足そうな笑みを浮かべる。そんな女神の様子を見て、ため息をつくロランだった。
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