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エルフで菜食主義だったら駄目なのかよ
野菜狂信者の現状・豆乳添え
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「じゃあ、教えて貰おうか……過激派の目的と規模を」
「いいだろう、一度しか言わないからよく聞け……だがその前に水をくれ」
いや、早く言えや……水ぐらい構わんけど。
とりあえず飲ませたが最近は禁酒してるし、ジョニーさんはフィオレさんの側に居るから酒と間違えるなんてベタなオチはなかったぞ。
「まず過激派の規模は総勢60名……だったが一人は投獄され私が抜けたから58名だ」
投獄……ああ、ダチョウの時のルンルンとかいう奴だな。
てっきり斬首されたかと思いきや投獄で済んでいたのか……運のいい奴だ。
「因みに穏健派は50名、中立派は40名ぐらいよ」
意外と少ないな野菜狂信者……
まあ障害持ちの子供や一定以下の能力しかない者を集落に追いやってるそうだからな、そうもなるか。
「目的は【ハイエルフの寿命を元に戻す事】、その為に代表を新たな女神とする必要がある……と言われていた」
寿命ねぇ……そういやエルフや野菜狂信者の寿命ってどれぐらいあるのか全く知らんな。
「……マリア、ハイエルフの寿命ってどれぐらいなんだ?」
「一般的にエルフやダークエルフが600歳前後、ハイエルフはその倍ぐらいと言われている……でも私が知る限りだと、500年以上生きたハイエルフなんて聞いた事がない」
「まあそうだろうな、何故か900年前からハイエルフが早死にする事例が増えて来たからな」
成程なぁ、まあその原因に心当たりがないでもない。
500年前後を生きたなら充分じゃないかと思わなくもないが、これは言うまい。
……ってかその話の通りだとしたらマリアとの結婚を賭けたコンテストに居たあの爺さんは寿命を大幅に越えてるけど、どんだけ脱DTしたいんだよ。
気持ちは解らなくもないが、っと話を戻そう。
「因みにフィオレさんが率いる穏健派はどんなだ?」
「寿命に関しては穏健派と中立派も似た様な物よ」
つまり800年以上生きてるフィオレさんが例外みたいな感じか……
だが心当たりが真実味をおびてきたな。
「そんな時に数多くの文献から偶然にも女神を打つ伝承が見つかって、それを集める為に奔走して貴様に邪魔をされまくった、という訳だ」
ああ、例のトゥール様が酔っ払って生やした設定とやらか。
現状だと敵でも味方でもないが……残酷な気もしなくはないけど真実を教えておこう。
どうせ次はまた空を飛ぶイノブタが現れる100年後まで待たなきゃ集まらんしな。
「……という訳で、集めた所でトゥール様を打つのは不可能だぞ」
「つまり私は無駄な労力を使わされた挙句に肉や魚にハラペを食わされたというのか!?」
まあ唐辛子に関しては完全に俺の意思による物だが、謝らないぞ。
お前だって俺の命を狙ってたんだからお互い様だろ。
「哀れね……でも気付けて良かったじゃない?」
「ふと思ったんだが、フィオレさんならその伝承の事実を知ってたんじゃないか?」
「確かに知っているわ、私もダニエル達と一緒に集めていたんだから……でも過激派に居た頃のアメーラが、穏健派を率いる私の話を素直に聞くと思うのかしら?」
微塵も思えんな。
仮に聞いた所で信じるとも思えん。
「確かにあの頃の私じゃ聞いても信じはしなかっただろう……」
自覚はあるんだな。
過激派と呼ばれる連中は大半が自分を客観視できない物だが、こいつは本当に改心した様だ。
「どういう訳か貴様に肉を食わされて以来、視野が広がったというか心に余裕が出来たというか……そのせいか他人の意見も冷静に聞ける様になった気がするのだ」
やはり心を豊かにするなら肉を食うのが一番だな。
そして最も美味く食うならバーベキューに限る。
「坊や、さっきの寿命の話の反応からして何か心当たりがあるみたいだったけど?」
「目ざとい上に鋭いな……まあ専門的な知識がある訳でもないし大まかな予想程度だが、聞く気はあるか?」
「ええ、ぜひ聞かせて頂戴」
そんなこんなで、とりあえず俺が知っている限りの栄養について……
そして元居た世界に居た野菜狂信者が掛かりやすい病気、菜食に拘り続けた者の子供の悲惨な末路、および奇行なんかも語ってみた。
まあハンバーガーショップでデモ活動とか、肉屋に放火したといった事件は言っても通じないと思って黙っておいたが。
ついでに近親婚のデメリットを大袈裟に話してみたけど、これは今回の質問の内容とは余り関係はないな。
「確かに過激派に居た頃にそういう症状に掛かった者を見た覚えはあるし、子供達の大半が掛かる病もその話と酷似しているが……」
「奇行についても心当たりがあるわね」
「懐かしいな、俺達と出会った頃のフィオレもそんな奇行の真っ只中だった」
「ジョニー、それは今すぐ忘れなさいな」
「ハハハ、前向きに努力はするさ」
それは一生忘れないと言ってるも同然だぜジョニーさん。
そりゃ他人の黒歴史なんてそう簡単には忘れられんけど。
まあ簡単に言うなら、野菜狂信者が直面しているのはいわゆる栄養失調……パッと思い付くだけでも動物性タンパク質、カルシウム、必須アミノ酸が不足している。
タンパク質は豆で採れば充分だとかいう戯言を熱弁する奴は居るが、豆で採れる植物性タンパク質と肉で採れる動物性タンパク質は大きな違いがある。
「何が違うんだ?」とか聞かれても俺は説明が出来んけど。
何より必須アミノ酸とカルシウム、これは肉や魚からしか摂取できない栄養素で人体を構成するのに欠かせない。
……それ等を避けて500年近く生きれるんだから凄い生命力だよな。
「多分だがこの推測は合ってる筈だ、肉や魚も平気で食えるフィオレさんが800歳を越えても生きているのが何よりの証拠だろ」
「成程、ダニエル達が無理矢理にでも肉を食べさせようとしていたのはそういう理由だったのね」
「ダニエルさん達も野菜狂信者に肉や魚をおみまいしてたのか?」
「ああ……元プロレスラーのクラッシュが羽交い締めて、牧場長が口を抉じ開けて、ダニエルが肉を焼いては俺とティーチャーで詰め込んでいた」
力技にも程があるだろ……俺も人の事は言えんけど。
だがクラッシュさんに捕まった連中はほんの僅かに同情してやろう……アレはメチャクチャ息苦しい上に熱苦しいんだ。
話の通りならもう生きてはいないだろうがな。
「だが解らんな……その話の通りなら寿命に関しては納得するが、私の心境の変化はどういう事だ?」
「そいつはカルシウムという、ミルクや魚に含まれる栄養の効果だ」
イライラし易い奴はカルシウムが足りていない、っていうのは小学生でも知っている常識なんだが……この世界じゃ栄養学とかなさそうだからなぁ。
かくいう俺も詳しい訳じゃないが。
「……まさか坊やと会う事で長年の疑問が晴れるとは思わなかったわ」
「スマンな、もう少し詳しく説明できれば良かったんだが」
「これで充分よ、とりあえず穏健派にはミルクを飲ませる所から始めてみるわ」
あくまでも菜食を強要しないだけで肉や魚を好む訳じゃないらしいしな……取っ掛かりにするならそれがベストだろう。
アメーラは……最初は過激派だった上にトゥール様の指示だから仕方ないよな。
「……あ、最初はミルクを豆乳で割ればより飲みやすくなるんじゃないか?」
「ボーイ、お前はソイミルクなんて作れるのか?」
「流石に俺は作れんけど、苺心なら作れる筈だ」
前に桃花から豆腐の作り方を習っていたからな。
それに豆乳は製菓材料でもある筈だし。
「そういうと思って豆乳は用意してあるよ」
何をどう思えば必要になると解るのかが疑問だが……まあいいか。
「水に浸した豆を磨り潰して、ゆっくりと煮てから布で濾して冷やしたのがこの豆乳だよ……本当は大豆で作るんだけど、この世界にはないからひよこ豆で代用してる」
「パッと見ただけじゃミルクと代わらないけど、豆の甘味や旨味がよく出ていて美味しいわね」
「そしてこれがミルクで割った物か?確かに飲みやすい」
因みにこの豆乳のミルク割りは社畜時代の俺が毎朝飲んでいた朝飯だったりする。
これなら忙しくてもすぐ口に出来るからな……作業もコップに注ぐだけだし。
「アメーラ、1日だけ時間をあげるからこの豆乳の作り方を覚えなさい」
「解りました、という訳で教えてくれ」
「アメーラ、お前は料理とか出来るのか?」
「正直やった事がないから解らん……だがフィオレ様がやれと言った以上やるしかない」
何だその体育会系の様な上下関係は……
だがフィオレさんに逆らえんというその気持ちは理解できる。
「まあ、下手に経験があるよりは何も知らない状態の方が覚え易いだろうし……私は構わないよ」
可愛い妹がいいと言うなら反対はすまい。
仮に俺の暗殺をするつもりだとしても対処は可能だろうし。
それに、こいつにはまだ聞きたい事もあるからな。
「いいだろう、一度しか言わないからよく聞け……だがその前に水をくれ」
いや、早く言えや……水ぐらい構わんけど。
とりあえず飲ませたが最近は禁酒してるし、ジョニーさんはフィオレさんの側に居るから酒と間違えるなんてベタなオチはなかったぞ。
「まず過激派の規模は総勢60名……だったが一人は投獄され私が抜けたから58名だ」
投獄……ああ、ダチョウの時のルンルンとかいう奴だな。
てっきり斬首されたかと思いきや投獄で済んでいたのか……運のいい奴だ。
「因みに穏健派は50名、中立派は40名ぐらいよ」
意外と少ないな野菜狂信者……
まあ障害持ちの子供や一定以下の能力しかない者を集落に追いやってるそうだからな、そうもなるか。
「目的は【ハイエルフの寿命を元に戻す事】、その為に代表を新たな女神とする必要がある……と言われていた」
寿命ねぇ……そういやエルフや野菜狂信者の寿命ってどれぐらいあるのか全く知らんな。
「……マリア、ハイエルフの寿命ってどれぐらいなんだ?」
「一般的にエルフやダークエルフが600歳前後、ハイエルフはその倍ぐらいと言われている……でも私が知る限りだと、500年以上生きたハイエルフなんて聞いた事がない」
「まあそうだろうな、何故か900年前からハイエルフが早死にする事例が増えて来たからな」
成程なぁ、まあその原因に心当たりがないでもない。
500年前後を生きたなら充分じゃないかと思わなくもないが、これは言うまい。
……ってかその話の通りだとしたらマリアとの結婚を賭けたコンテストに居たあの爺さんは寿命を大幅に越えてるけど、どんだけ脱DTしたいんだよ。
気持ちは解らなくもないが、っと話を戻そう。
「因みにフィオレさんが率いる穏健派はどんなだ?」
「寿命に関しては穏健派と中立派も似た様な物よ」
つまり800年以上生きてるフィオレさんが例外みたいな感じか……
だが心当たりが真実味をおびてきたな。
「そんな時に数多くの文献から偶然にも女神を打つ伝承が見つかって、それを集める為に奔走して貴様に邪魔をされまくった、という訳だ」
ああ、例のトゥール様が酔っ払って生やした設定とやらか。
現状だと敵でも味方でもないが……残酷な気もしなくはないけど真実を教えておこう。
どうせ次はまた空を飛ぶイノブタが現れる100年後まで待たなきゃ集まらんしな。
「……という訳で、集めた所でトゥール様を打つのは不可能だぞ」
「つまり私は無駄な労力を使わされた挙句に肉や魚にハラペを食わされたというのか!?」
まあ唐辛子に関しては完全に俺の意思による物だが、謝らないぞ。
お前だって俺の命を狙ってたんだからお互い様だろ。
「哀れね……でも気付けて良かったじゃない?」
「ふと思ったんだが、フィオレさんならその伝承の事実を知ってたんじゃないか?」
「確かに知っているわ、私もダニエル達と一緒に集めていたんだから……でも過激派に居た頃のアメーラが、穏健派を率いる私の話を素直に聞くと思うのかしら?」
微塵も思えんな。
仮に聞いた所で信じるとも思えん。
「確かにあの頃の私じゃ聞いても信じはしなかっただろう……」
自覚はあるんだな。
過激派と呼ばれる連中は大半が自分を客観視できない物だが、こいつは本当に改心した様だ。
「どういう訳か貴様に肉を食わされて以来、視野が広がったというか心に余裕が出来たというか……そのせいか他人の意見も冷静に聞ける様になった気がするのだ」
やはり心を豊かにするなら肉を食うのが一番だな。
そして最も美味く食うならバーベキューに限る。
「坊や、さっきの寿命の話の反応からして何か心当たりがあるみたいだったけど?」
「目ざとい上に鋭いな……まあ専門的な知識がある訳でもないし大まかな予想程度だが、聞く気はあるか?」
「ええ、ぜひ聞かせて頂戴」
そんなこんなで、とりあえず俺が知っている限りの栄養について……
そして元居た世界に居た野菜狂信者が掛かりやすい病気、菜食に拘り続けた者の子供の悲惨な末路、および奇行なんかも語ってみた。
まあハンバーガーショップでデモ活動とか、肉屋に放火したといった事件は言っても通じないと思って黙っておいたが。
ついでに近親婚のデメリットを大袈裟に話してみたけど、これは今回の質問の内容とは余り関係はないな。
「確かに過激派に居た頃にそういう症状に掛かった者を見た覚えはあるし、子供達の大半が掛かる病もその話と酷似しているが……」
「奇行についても心当たりがあるわね」
「懐かしいな、俺達と出会った頃のフィオレもそんな奇行の真っ只中だった」
「ジョニー、それは今すぐ忘れなさいな」
「ハハハ、前向きに努力はするさ」
それは一生忘れないと言ってるも同然だぜジョニーさん。
そりゃ他人の黒歴史なんてそう簡単には忘れられんけど。
まあ簡単に言うなら、野菜狂信者が直面しているのはいわゆる栄養失調……パッと思い付くだけでも動物性タンパク質、カルシウム、必須アミノ酸が不足している。
タンパク質は豆で採れば充分だとかいう戯言を熱弁する奴は居るが、豆で採れる植物性タンパク質と肉で採れる動物性タンパク質は大きな違いがある。
「何が違うんだ?」とか聞かれても俺は説明が出来んけど。
何より必須アミノ酸とカルシウム、これは肉や魚からしか摂取できない栄養素で人体を構成するのに欠かせない。
……それ等を避けて500年近く生きれるんだから凄い生命力だよな。
「多分だがこの推測は合ってる筈だ、肉や魚も平気で食えるフィオレさんが800歳を越えても生きているのが何よりの証拠だろ」
「成程、ダニエル達が無理矢理にでも肉を食べさせようとしていたのはそういう理由だったのね」
「ダニエルさん達も野菜狂信者に肉や魚をおみまいしてたのか?」
「ああ……元プロレスラーのクラッシュが羽交い締めて、牧場長が口を抉じ開けて、ダニエルが肉を焼いては俺とティーチャーで詰め込んでいた」
力技にも程があるだろ……俺も人の事は言えんけど。
だがクラッシュさんに捕まった連中はほんの僅かに同情してやろう……アレはメチャクチャ息苦しい上に熱苦しいんだ。
話の通りならもう生きてはいないだろうがな。
「だが解らんな……その話の通りなら寿命に関しては納得するが、私の心境の変化はどういう事だ?」
「そいつはカルシウムという、ミルクや魚に含まれる栄養の効果だ」
イライラし易い奴はカルシウムが足りていない、っていうのは小学生でも知っている常識なんだが……この世界じゃ栄養学とかなさそうだからなぁ。
かくいう俺も詳しい訳じゃないが。
「……まさか坊やと会う事で長年の疑問が晴れるとは思わなかったわ」
「スマンな、もう少し詳しく説明できれば良かったんだが」
「これで充分よ、とりあえず穏健派にはミルクを飲ませる所から始めてみるわ」
あくまでも菜食を強要しないだけで肉や魚を好む訳じゃないらしいしな……取っ掛かりにするならそれがベストだろう。
アメーラは……最初は過激派だった上にトゥール様の指示だから仕方ないよな。
「……あ、最初はミルクを豆乳で割ればより飲みやすくなるんじゃないか?」
「ボーイ、お前はソイミルクなんて作れるのか?」
「流石に俺は作れんけど、苺心なら作れる筈だ」
前に桃花から豆腐の作り方を習っていたからな。
それに豆乳は製菓材料でもある筈だし。
「そういうと思って豆乳は用意してあるよ」
何をどう思えば必要になると解るのかが疑問だが……まあいいか。
「水に浸した豆を磨り潰して、ゆっくりと煮てから布で濾して冷やしたのがこの豆乳だよ……本当は大豆で作るんだけど、この世界にはないからひよこ豆で代用してる」
「パッと見ただけじゃミルクと代わらないけど、豆の甘味や旨味がよく出ていて美味しいわね」
「そしてこれがミルクで割った物か?確かに飲みやすい」
因みにこの豆乳のミルク割りは社畜時代の俺が毎朝飲んでいた朝飯だったりする。
これなら忙しくてもすぐ口に出来るからな……作業もコップに注ぐだけだし。
「アメーラ、1日だけ時間をあげるからこの豆乳の作り方を覚えなさい」
「解りました、という訳で教えてくれ」
「アメーラ、お前は料理とか出来るのか?」
「正直やった事がないから解らん……だがフィオレ様がやれと言った以上やるしかない」
何だその体育会系の様な上下関係は……
だがフィオレさんに逆らえんというその気持ちは理解できる。
「まあ、下手に経験があるよりは何も知らない状態の方が覚え易いだろうし……私は構わないよ」
可愛い妹がいいと言うなら反対はすまい。
仮に俺の暗殺をするつもりだとしても対処は可能だろうし。
それに、こいつにはまだ聞きたい事もあるからな。
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