実はαだった俺、逃げることにした。

俺が逃げだした理由

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　心の内をはっきりとロンバウト王子に伝え、何故か放心状態になったロンバウト王子を無理矢理馬車に乗せてお帰り頂いた。去っていく馬車に向かっていい笑顔で中指を立てたのは見なかったことにしてほしい。

　それからは王子に呼び出されることもなければ、家に押しかけてくることもない。相変わらずまだ両親が俺と接点を持ちたがるがそれも無視を続けている。

　たまに兄達が長期休みで帰ってくることはあるものの深く接点を持つこともない、相変わらず浅い関係だ。

　そんな生活を数年…俺は10歳になった。この世界では10歳の誕生日に教会に向かないと行けない決まりがある。第二性というものがあり、それを調べる為に教会に行くんだそうな。

　図書館で調べて知っていたが、この世界の第二性というものは割と重要なものだ。男女以外にもバースという特殊な性別がある。実は今過ごしているこの世界は女性が少ない。理由は知らないけど、そういうものらしい。

　女性が少ないのに少子化にならないのは、第二性により男でも妊娠出来るからだ…初めて聞いた時は絶句したよ…。

　α（アルファ）β（ベータ）Ω（オメガ）という3種類の第二性…Ωに分類された男は妊娠出来るんだってさ。それぞれに特徴があるから分かりやすいって神官さんが教えてくれたなぁ。

　そんなわけで！俺もそれを調べに教会に向かうのである。因みに兄達はαだ。大嫌いな王子もα。αとΩが数が少ないって聞いてたけど、兄達がどちらもαとかそりゃ優秀だなと思った。貴族社会でαの立ち位置はかなりしっかりしたものになる。理由は、αの特徴によるものだ。

　αの特徴…それは物凄くタフで丈夫な体に特出して優秀な才能を持ち合わせているらしい。支配力？ってのがあるらしい。顔も美形が多いってよ。

　それとは対に丸みを帯びて女性的な体つきなのがΩ。たまに体の大きなΩもいるらしいけど、それでも美しい顔であったり、独特な甘い匂いがするからαはすぐ分かるそうな。強制的にαに項を噛まれたΩは番になるってさ。強制夫婦…怖すぎなんだが…。

　そして、その真ん中に存在する平凡な存在こそβである。悪口じゃないよ。βは子供産めないし、αみたいに支配力があるわけでもない。良くも悪くも平凡で安全なのだ。

　俺はきっとβだな～、なんて呑気に考えながら揺れる馬車の中から外を眺める。ちなみに両親は一緒に来てないからね。俺が絶対に来るなって言ったから。

　今日の俺は、絶対に失敗出来ない予定があるのである。この数年、家出をする為に必死こいて魔法の勉強と金を貯めてきた！

　その準備が、ついに！完了した！まさかバース検査の日に家から逃げ出せるチャンスが来るとは俺も運が良い。機嫌が良くなるのも仕方ないよね～。

　このバース検査がどうであれ、俺は絶対にこの家出作戦を成功させるのだ！見ていてくれよ、みんな！！