実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 ルチスは2年前にヨルダンの討伐任務に参加した時に出会った少年だ。俺の2つ下だがそれよりも幼く見える容姿…とても狙われやすいΩの男の子だった。

 まぁ頭の良い子なだけあって、痴漢の撃退や強姦対策なんかはバッチリ。ギルドでセクハラされようものなら雷の魔法でビリビリにして意識不明にまで追い込むくらいには強気であった。

 それでも対策を潜り抜ける不届き者はいるので、たまたま絡まれているルチスを助けたのをきっかけに仲良くなったのだ。始めはαである俺を警戒していたが、俺には全くΩが出す独特の蠱惑的な香りが効かないのを驚いていた。

 まぁ、これに関しては前世のバースの存在が無かった影響か色香程度は感じるが理性を失う程のものでは無かったのだ。

 俺αとして不能ってわけではない。α特有の発情期のラットも起こる。常に股間張りまくってギチギチ痛い状態になることもしばしばあるから俺は不能じゃない。

 この世界で起こりうる事故の一つにヒート事故ってのがある。それはΩの発情期、ヒートに感化されて近場にいたαは理性を失い強姦してしまうという恐ろしい事故だ。これによって項を噛まれたΩが多くいるらしい。逆パターンもある。

 そんな事故を起こさない為の抑制剤をαとΩは常に持ち歩くのが義務。それでも事故はおきてしまうのが現状だ。

 ルチスもそんな事故の被害者。αの強制的なラットに感化され無理矢理発情状態にされてしまったルチスを、たまたま居合わせた俺が助けただけなんだけど。

 俺の場合は特殊だ。ヒートで噎せ返るような甘い誘惑する匂いが充満しようが理性が振りほどけた試しがないのだ。めっちゃ股間は立つけどね。後々俺もしんどくなって少し寝込むけど。

 そんなわけで、ルチスに跨がっていた不審者を気絶させて緊急用の抑制剤をルチスにぶち込み落ち着かせたのが初対面である。

 ルチスもそうだが俺も少し寝込んでから再会すると、彼の懐きようが凄くなっていた。どうやら俺には甘えても変なことをされないと理解したらしい。俺は普通に女な人好きだからいくら可愛かろうとルチスには手を出すことはないのだ。

 そんなことが続く中、ルチスはどんどん甘え方が大胆になってきたので何度か咎めた。恋人でもないのに駄目だよ?と。

 そしたらルチスはギャン泣きして大変だったんだ…。毎度そんなことをしていたら、俺が辛くなって咎めるのを諦めた。ルチスの味方が多くて辛い…。




 「じゃあアルさん!頑張ってたくさん魔獣を狩ってきてくださいね!応援してます!」
 「はいはい、ありがうねルチス。そろそろ時間になるからお前は早く後方に下がってな。」
 「もっとアルさんと一緒にいたいのに残念…またギルドに顔を出してくれますよね?」
 「まぁ、この討伐任務が終わって報酬受け取る時はいくかな。」
 「その、機会があれば一緒にご飯いきませんか?僕も報酬は出るし、美味しい店知ってるんです。」
 「俺なんかと?」
 「アルさんと一緒に行きたいです!ダメ、ですか…?」
 「駄目じゃないけど…俺そんな面白い話とかできないよ?ただの冒険者だし。」
 「じゃあ行きましょうね!楽しみにしてますから!」




 ニコニコのルチスに押し切られるように言われてしまった。果たしてそんな機会があるかどうか…。俺はルチスが何を考えているかわからず、悶々と頭を悩ませる。

 彼が小さく、ニヤリと口元を歪ませ舌なめずりをしたことに、気づかぬほどに。



 
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