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俺は冒険者として生きている
幼馴染だった王子の嘆き3(王子視点)
しおりを挟む軽い旅支度を整え、愛馬の背に跨ると見送りのメンルートと目が合う。長く私の従者をしてくれている彼は、まだアルディウスを諦めない私を見て悲しげに目を伏せた。
あの事件以降、誰よりも迷惑をかけたしまった彼は昔はかけていなかったモノクルが似合う凛々しくも美しい男になった。βとは思えぬ優秀さに私が王族としての籍を抜いた後には大量の勧誘が来たものだ。
それでも私についてきてくれた彼には頭が下がる。メンルートまでもが罪の意識に囚われている……あの時の私を止めなかったことを深く後悔している。
日に日に執着が強まり異常なまでの行動を軽く考えていた自分が恥ずかしい。私は皆に迷惑をかけた屑なのだ。
だからこそ、私はアルディウスを見つけなければいけないのだ。これは使命なのだ、成さねばならぬ私の運命なのだ。
「ロンバウト様、お気をつけて。」
「私が留守の間、よろしく頼むぞメンルート。次こそはアルディウスを見つけ連れ帰ってみせるから。」
「……無理を、なさらぬ様に。」
「あぁ……、エリン行くぞ。大森林ギルドには3日後に到着予定だ。ついて来い。」
「はっ、仰せのままに。」
一気に馬が駆け出し数人の護衛と共に駆け出す。本来ならば1週間以上はかかる長旅を、ありったけの魔力を使って馬ごと肉体強化し、大森林ギルドまでの道のりを進む。
私とエリンティウスは優秀なαの代表だった。自衛くらいできる。素早く動くには厳選した数人の護衛とエリンティウスだけで十分だった。
寄り道などするつもりはなくヨルダンの国境を越え大森林ギルドへと乗り込む。もしかしたらここに、アルディウスがいるかもしれないと思うと興奮で息が上がってしまう。
10年だ、もう10年も待ったのだ。早く、早く早く…っ!
大森林ギルドのギルドマスターであるアントムと共に応接室にエリンティウスと入ると、空気は重く金髪の大柄な男と、赤毛で小さな少年がソファに腰掛けていた。
俺に気づくと、深く礼をした。美しく輝く金髪の褐色肌はαだろう。オーラがそこいらの騎士団の人間とは覇気が違う。…しかし、彼はアルディウスではない。
私の求めるアルディウスの姿は、ない。ぎちり、無意識に握る拳が軋む音がした。
「どうぞ、お掛けください。」
「事前に話を手紙で伝えていたはずだ。アルディウスはここにいるのか?」
「そのことですが…。」
「……貴族だが何だがどうでもいいが、アンタがアルディウスを探す理由はなんだ?」
「貴方には関係ない。アルディウスを連れて帰り保護することが私の使命だ。」
「はっ、保護だと!?」
大柄のαが怒りの表情で私を睨む。反応からしてこいつはアルディウスの行方を知っているに違いない。話し込んでいる暇はないんだ、早くアルディウスに会わせてくれ。
「アルは自ら逃げてきた!アンタらからな!惨めな思いを一生したくないと言ってな!今更保護なんかしてアルが喜ぶか?ただの自己満でアルを縛ろうとすんじゃねぇぞ!!」
「貴様に何がわかる!!この10年、アルディウスを忘れる事などなかった!こんな乱暴な人間が集まる場所に置いておけるわけがない!」
「そんな場所を平和だと言ったのはアルだ、アンタが奪っていい場所じゃない!諦めて帰れ!」
声を荒げ敵意に満ちた視線が体を突き刺す。大柄の隣にいた小柄なΩらしき人間は俯いたまま何も喋らない。止める様子のないギルドマスターは目を伏せたまま何も話さなかった。
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