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俺は冒険者として生きている
幼馴染だった王子の嘆き4(王子視点)
しおりを挟む「……そこまで。ここにアルディウスがいる可能性は極めて高いと判断し、話を続けさせてもらいます。」
「チッ…!」
「名乗りもせずに申し訳ありませんでした。私、ロンバウト様の補佐をしておりますエリンティウス・アーダングラウドと申します。」
「アーダングラウド…。」
喧騒を遮り、エリンが有無を言わさず話を続ける。冷たい氷のような眼光と轟々と燃える炎のような紅の瞳を据えて言い争っていた声を黙らせた。
確かに話が進まないと進展が望めない。アルディウスのことになると我慢が効かなくなる自覚がある。ここはエリンティウスに任せておこう。
向こうの大男もバツが悪そうにソファに座り直し、主導権をギルドマスターに移したようで黙り込んだ。
「我々は長年かけてアルディウスの捜索を行って参りました。結果がどうなろうと1度しっかりとアルディウスと話し合わなければなりません。」
「彼は今、このギルドに必要不可欠な男です。しかし、我らは彼を無理に留めておくつもりもありません。」
「……隠すつもりはないようで安心しました。」
「貴族の圧がかかれば問題になるからとアルが無理をしなくて良いと言いましたのでね。……罰が下りギルドに迷惑はかけられないと言っておりましたから。」
ギルドマスターが鋭く言うと、数秒無言が続きエリンティウスの目が細められる。ギルドマスターは飄々と嫌味ったらしく笑う。
腹が立つ。こいつらはアルディウスに会わせるつもりはないのか?イライラで頭がおかしくなりそうだ。
「あ、の…お話中に、申し訳ないのですが…。」
唐突に小柄のΩがおずおずと話し出す。顔色が悪く、口が震え声が弱々しく語尾が小さくなる。心配そうに大柄の金髪は肩をだいて落ち着かせていた。彼らは番なのだろうか?羨ましい…。
震える手で懐から紙を取り出して、それを大柄が受け取る。どうやらそれは手紙らしく封筒には狼の絵が書いてあるようだった。
この場で出す理由が分からずにいたが、手紙を読んだ大柄の男は目を見開いて固まってしまった。ギルドマスターも不思議そうに大柄を見遣る。
「タサファン、何事だ?」
「……あの野郎っ!」
苦虫を噛んだような顔をして応接室を飛び出していくタサファンと呼ばれた大柄を止めることなく見送ると、放り投げられた手紙をギルドマスターが拾う。中を読んでギルドマスターすら身を固め驚いていた。
「……アルは、アルディウスは今朝方旅立たれました。怪我のリハビリをする為、暫くは帰らないと…。」
「う、そ……だろう?嘘を吐くな!!このタイミングで何故そんな…!」
「アルは先月の討伐任務で重症を負いました。彼には保護者達がいます。彼らがどうやら連れ出したようで…朝にポストを確認したら、この手紙が…。」
大きなため息を出して額を覆うギルドマスターを見て、彼が嘘を言っていないと言うことを理解してしまった。エリンティウスですら、口元を押さえ絶句していた。
せっかく、ここまでこれたのに…!やっとアルディウスと会えると思っていたのに!!頭を掻きむしる。唸り声が喉から漏れた。
「私のアルディウス……なんで…、なぜだあぁぁぁーっ!!」
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