実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

文字の大きさ
51 / 103
復帰した俺に不穏な影

13

しおりを挟む




 5日ぶりに大森林ギルドに帰ってきたらヨルダンの使いの人が来ていた。どうやら西の森の状態を聞きに来たらしい。疲れきった俺とタサファンを見てオロオロしていた。

 早く報告しなきゃいけないのは良くわかってる。報告はするけど、少し休ませて頼むから。ギルドの応接室にてギルドマスターとヨルダンの使者のステファンさん(β)に現状報告をありのまま伝える。

 人工物までは見つけられなかったが、多分だけど人為的な物で活性化されているであろうと話す。あれはただの魔素溜まりとは思えない、と。

 話を聞いた面々はかなり深刻な顔。まぁそうなるよ…俺だってあんな巨大なコロニー見たことないもん。



 「で、どうすんだ?あの状態のコロニーがスタンピートを起こしたら一瞬で国は吹き飛ぶぞ?早急に対応しないといけない。」
 「それはわかってるが…。」
 「ワイバーンは魔法使いや魔術師だけで対処は難しい。しかもワームまで来るとなると接近戦をするにも常に足元を警戒しないといけなくなる…。圧倒的に騎士団や冒険者の数が足りないではないか。」
 「さて、どうしたものかな…。」
 「俺が単独である程度突っ込んでもいいけど、流石に長期戦は無理だなぁ…タサファンだってそうだろうし。」
 「ワーム苦手なんだよなー、混戦状態のワームには幾度となく苦戦してんだ俺。」
 「わかるわかる、俺もワーム苦手ー。」
 「そう和気あいあいしている場合ではないのだよお二人さん。」



 ギルドマスターの大きなため息。もう疲れきってて頭が回らない。アイデアを出してあげたい気持ちあるけど、これちょっと休まないと…。タサファンも少し目が据わってる。眠たいんだろうな…。

 ヨルダンの使者さんは顔面蒼白で何も言葉が出ないらしい。何となく、俺やタサファンが想像したヨルダンの後継者争いの名残が頭の中に浮かんだんだろうな。

 それくらい簡単に想像出来るくらいヨルダンの戦いは激しかったってことよね。巻き込まれた大森林ギルドやエンデルクロス国はいい迷惑よ、ほんとに。




 「仕方ないから、うちの保護者達に話をしてみようか?他力本願は性分に合わないんだけど。」
 「あの方たちはアルにしか興味ないから話を聞いて協力してくれるか…。」
 「機嫌が悪いと話聞いてくれないかもな~。今回は無理矢理留守番させて来たし、見送り時点では大丈夫そうだったけど帰った時の状況による。」
 「国がかかってるんだから、もう少しやる気だしてくれないかアル?」
 「俺、今は疲れすぎて気力がない…まぁ頑張ってみる。」



 ヨルダンの使者さんだけが理解出来ずにいたが、ステファンさんには残念ながら紹介出来ない。変に関わって機嫌を損ねると別の意味で国が滅びかねん。



 「とにかく大森林ギルドの冒険者はこの戦いに備え、会議を開く。アルとタサファンは戦闘準備しておいてくれ。」
 「はいよ、じゃあ解散!スタンピートは早くても1ヶ月は猶予がありそうだが気を抜かないようにね。」
 「何故わかる?」
 「まだ魔物たちに意思を感じないから。スタンピートはダンジョンから司令塔が生まれない限りただの魔物の群れだから。」
 「その司令がすぐに生まれないとよく分かるな。」
 「そりゃダンジョンが複数あると、そのダンジョンの中からリーダー決める。そのリーダーから司令塔が生まれるんだよ。まだその気配すら無かったから。」
 「初めて聞いたぞ、そんな話。」
 「うちの保護者に教えてもらった。」
 「そ、そうか…。」



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—

水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。 幼い日、高校、そして大学。 高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。 運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。

カミサンオメガは番運がなさすぎる

ミミナガ
BL
 医療の進歩により番関係を解消できるようになってから番解消回数により「噛み1(カミイチ)」「噛み2(カミニ)」と言われるようになった。  「噛み3(カミサン)」の経歴を持つオメガの満(みつる)は人生に疲れていた。  ある日、ふらりと迷い込んだ古びた神社で不思議な体験をすることとなった。 ※オメガバースの基本設定の説明は特に入れていません。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

処理中です...