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復帰した俺に不穏な影
忘却の元幼馴染2(公爵視点)
一旦、領に帰ってからの行動は早かった。最もアルディウスが現れる可能性が高い大森林ギルド付近にあるホテルの1室を買い取った。そこにエリンティウスが転移の魔法陣を敷き、ホテル側にも許可を取り自由に出入りが出来るようにした。
その話を聞いたエリンティウスの兄であるアーダングラウド公爵であるフィリスティウスが図々しくも転移の魔法陣をホテルに設置したと聞いた。彼もまた諦めきれないで探し続けているのだろう。
時間がある限りギルドマスターのアントムに状況を直接聞きにいく。その時間をが無ければ夜に手紙を書いた。
何度も何度も手紙を出した。直接話も聞きにいった。一向に進展がなく苛立つ毎日だった。たまに夢を見る…アルディウスが消えてしまう夢を。
そんな日々が続き、いつの間にか6年も時間が過ぎた。私はもう28歳になった。記憶の中のアルディウスがどんどん消えていく感覚に頭がおかしくなりそうだった。
それでもギルドには定期的に行く日々。もしかしたら出会えると信じて。
しかし、最近は忙しい。近くで魔物の発生率が高くなっているという情報がは入ったからだ。調査団を結成し、多く魔物を目撃している森へと向かわせた。
ヨルダンのほうでも事前に調査をしていたらしく大森林ギルドの手も借りて大掛かりな調査をしようという話になった。
「……大森林ギルド、か…。」
長く通いつめた大森林ギルドからは今だアルディウスが戻った話は聞かない。時間があれば直接話を聞きに行けるのに、そんな余裕がないほど今は忙しい。
そんな忙しい最中、ついに待ちに待ったことが起きた。エリンティウスが息を切らしてその報告を持ってきた時に私は両手を震わせ、それを受け取った。
「アルディウスから、……手紙が返ってきた!」
たったひとつの封筒にはアルディウスの直筆であろう字が書かれている。私の思いが届いた!やっとアルディウスに逢いにいける!
震える手で封筒を急いで開ける。美しい便箋を開くと、がさり、と紙が擦れる音がした。その途端、雪崩のように封筒の中から何かが飛び出してくる。全身でそれを受け止めた私は状況が理解出来ずにいた。
紙に埋もれる私は、その見覚えのある紙に身動きが出来なくなる。間違いない、この紙は……私がアントムに預けていたアルディウスに出した手紙だ。
上空からひらり、舞い落ちる1枚の紙が不意に視界に入る。1枚の便箋が落ちてくると、その文字を読み取った。
迷惑です。二度と送らないでください。
その文字は私を拒絶する意味が書かれていた。その一言だけ、アルディウスが私に向けた言葉…またしても拒絶だった。こんなにも……こんなにも?
「あ、れ……?」
私は、……あれ?なにを?していたのだっけ?紙に埋もれて、……何か大事なことを、忘れているような……。
思い出そうとすれば、頭に激痛が走った。痛みで顔を顰める。そんな私にエリンティウスは顔を青くする。そんな顔をする前に助けてくれ。
「ロンバウト様!だ、大丈夫ですか!?」
「なんだこの手紙の山は…こんなことをしている場合ではないのに。」
「アルディウスからの手紙にはなんと書かれていたのです!?アルディウスは無事に過ごしていると!?」
「………誰だ?それは。」
「はぁ!?私の弟のアルディウスです!冗談なんて言わないでくださいませ!!」
アルディウス?……アルディウスって、誰だったろうか……何も、思い出せ……な、い……。
頭の痛みが強くなる。私は呆気なく気を失ってしまった。大事な大事なアルディウスのことが、記憶の中、思い出の中からすっぽり抜けさってしまったことに私自身が気づくことなく……。
これが、アルディウスがお繰り返してきた呪い返しの影響だと知ることもなく、私は過ごすことになった。
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