実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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そして出会う俺とお前

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 「アルディウスがこうも自己評価が低い原因がわかってだあろう?自覚したかえ?アルディウスが自身を大切に出来ないのはお主らが植え付けた強迫観念よ。」



 ハクアが静かにそう言うと、フィリスティウスはグッと顔を顰めた。それは後悔しているようにも見えたが、俺は何も思えなかった。強迫観念……打ち払っても心の奥底で感じていた不快感は確かに、あの家で過ごした期間で植え付けられた気がした。

 家を抜け出すようになってから、ろくでもない親が俺に興味を持ち始めた時、気持ち悪いと思った。家臣を使ってまで探りを入れてくるのは、明らかにただの興味だけではなかった。

 あの家族に自分の価値を見入られてはいけない。常にそうやって生きた。マーニアムと出会うあの時までは。マーニアムが自由に生きて良いと言ってくれるまで、何かに囚われている、だから逃げなければいけないとばかり思っていたんだ。



 「あれ、強迫観念だったんだな…。」



 家からも、幼馴染からも逃げたかった。囚われたまま生きるなんて絶対に嫌だった。その答えがはっきりして、俺は頭の中がすっきりした。

 自分自身すら自分を追い込んでいたんだな。とにかく逃げたい一心で。逃げた後はただ生きるだけで、憧れた冒険者になっても、自分の無茶を理解出来ずにいた。ずっと自分を追い込み苦しんでいたことに気づかなかったんだな…。




 「それすら理解できずに生きたアルディウスが哀れよ。我らが保護せねば、簡単に命を諦める子になっていたかもしれぬ。」
 「さすがにそれはない。」
 「いいや、我を助けたあの時もそうだ。我にありったけの魔力を与えても、大したことのないように……。」
 「あの時コハクとコクヨウが~、懸命にアル様のこと面倒見てたの知らないでしょ~?」
 「何度か気を失っているの気づいてないようだったしな。」
 「え?気絶してた?」
 「意識が朦朧としていたからな。実際倒れる寸前だったろう?」
 「確かにそれは身に覚えあるけど…。」




 そこまで言うと、ハクアは困ったように笑うだけだった。最近になって自分の見の振り方が荒れていたことに気づいて、自分自身に気をかけるようになったものの、やはりまだハクア達からすれば不安らしい。信用ないのは仕方ないね…今までが、酷かったからね…。

 これからはちゃんと気をつけるよ。家族に心配かけたくないし。俺がそんなことをおもっていれば、フィリスティウスとエリンティウスはなんとも言えない顔をしていた。




 「アルディウス。」
 「………なに?」
 「アルディウスはこのまま冒険者として暮らすのを望んでいるのか?」
 「まぁ…ランクも高くなったし不自由も特にしてない。危なくなったらハクア達が助けてくれるし、昔に比べたら自由もある。そんな環境で過ごしているんだ、こっちのほうが良いよ。イジメもないしね。」
 「そうか、わかった。」
 「えっ?わかった…って?」
 「アルディウスは間違いなく俺達アーダングラウドの血族、大事な弟だ。だが、無理に縛ろうとするのは、お前が自由に生きる妨げになる……ならば、今のまま暮らすが良いと思った。……だが!一つ約束はしてくれないか。」




 悲痛な表情でフィリスティウスが言う。エリンティウスも同意なのか、歯を噛み締めて悔しそうだが何も言わなかった。

 このまま過ごせるならそれが一番なんだけど、約束ってなんだろう…無茶振りは言わないでほしいなぁ…。


 
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