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そして出会う俺とお前
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しおりを挟む……で、結局どうなったのかと言えば。俺のにえきらない意見なんて通らず、保護者達が勝手にフィリスティウスと話し合って引っ越しが決まってしまった。俺は嫌だと言ったけど、俺でもよくわからない気持ちを読み取ったように保護者達は優しく笑うだけだった。
なんだその顔!と、文句を言いたいが引っ越しが決まった途端にアーダングラウドの兄弟が破顔したので何も言えなくなってしまった。そう嬉しそうな顔されると文句も言いにくいよ…。
そして、ロンバウトもまた俺を諦めるつもりが全くないのでアーダングラウドの家に入り浸りそうで怖い。寝込みとか襲われないだろうな…。気を利かせてフィリスティウスは引っ越したら保護者達と一緒に暮らした家のまま過ごしていいと言ってくれたのは救いである。
話し合い?が、終わり会議室から出ると外はもう真っ暗。そういや腹減ったなぁ、と思ったらグォ~と情けない音が腹から鳴った。昼飯食ってないから仕方ないか…。
「アルディウスの腹の音…可愛い…。」
「今の可愛い要素あった!?」
「アルディウスは全部可愛いよ?」
「可愛くない!引っ付くなロンバウト!腰に手を回すんじゃない!」
「アルディウスが嫌がってますよ?離れなさいロンバウト様。」
「こいつ、ほんと見境なくアルディウスに手を出すな…いっその事、仕事部屋に縛りつけろエリン。」
「これでも私より優秀なαなんです。無理なことを言わないでください兄上。」
ぞろぞろと会議室から出ると、周りからの興味津々な視線を浴びて嫌な気分になる。まぁギルドに何度も乗り込んてくる貴族達と俺の関係がバレないわけないし、仕方ない気もする……だが!ロンバウトは本当に空気が読めないな!やめろって言ってるのに離れようとしない。
頼みの保護者達はロンバウトと関わるとろくな事にならないのを分かってるのか見ているだけだ。守ってくれよ保護者達!
「ロンバウト、また嫌われるぞ。」
「それは困る。では手を繋ごうアルディウス。」
「なんでそうなる!」
「ア、アルディウスと手を繋ぐなんて初めてだ…!」
「うっとりするんじゃない!」
問答無用で両手でギュッとされた。なんだこいつの力は!振りほどけない!ってか振り上げようとしても抑え込まれるんだが!
俺の左腕はロンバウトに占領されてしっかりがっちり絡まった。もうやだ、肩に頭乗せないで…。言い争う気力も削がれた俺はげんなりしたまま歩く。言葉通じないじゃないか…。
そのまま絶望した顔で話し合いが終わった旨の報告をアントムさんにしに行くと、なんとも言えない顔をしていた。多分、俺も似たような顔してんだろうな。無表情の俺と満面な笑みのロンバウトの差よ。
「まぁ、なんだ。ちゃんと話し合いが済んで良かったよ。」
「結果的にはアーダングラウド家がアルディウスを引き取るが、本人の希望で大森林ギルドには席を残す。」
「それは助かるが…いいのかアルディウス?」
「俺に決定権はないのだ……。」
「そ、そうか…。」
「アルディウスは転移魔法を使えるそうだが、苦労はかけさせたくない。ギルドの一室に転移陣を引いてもいいか?」
「良いですよ。今は使っていない個室があります。そこを後でマルに案内させましょう。」
「わかった。」
ギルドマスターとフィリスティウスで話が進められ、俺の引っ越しは完全に決定したのだった。あーあ…。
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