実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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そして出会う俺とお前

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 そこからの行動は早かった。本人は置いてけぼり。引っ越しはコハクが早々に家を亜空間魔法で丸ごと収納するし、翌日にはエリンティウスがギルドの一室に転移陣を敷いてしまうし、ロンバウトは毎日花持って俺の前に現れるし…なんで居場所わかるんだ気持ち悪い…。

 保護者達はなんだかんだゆったり過ごしている。俺だけが忙しくロンバウトから逃げる毎日だ。

 帰るつもりの無かったアーダングラウド家を久しぶりに眺めたら、ゴテゴテの派手な内装は無くなって、清潔感のある白を貴重とした屋敷になっていた。どうやらゴテゴテは親の趣味だったようだ。売ったらいい金になったろうに。

 暫くはお休みして良いとアントムさんが言ってくれたからアーダングラウドの家でゆっくりすることにした。俺はもうロンバウトから逃げるのでクタクタなのだ。

 アーダングラウド家のサロンで動きやすい服でソファに体を預けてぼんやりしていると、休憩しにきたフィリスティウスとばったり出会う。この数日で随分馴染んだものだなぁ、なんて独りごちるのだった。




 「どうだ、家には馴染めたか?」
 「まぁ、みんな良くしてくれるから…保護者達、離れ気に入って勝手に改造してるけどいいのか?」
 「良い、元よりアルディウスにやるつもりだったからな。あいつらが好きにしても文句は言わない。」
 「あっそ……しかし、随分と家の雰囲気変わったよな。別の家に来たみたいだ。」
 「あんな悪趣味な内装、早々にぶっ壊した。目障りだったからな。」
 「まぁ気持ちはわかるけど。そういやあの親って今はどうしてんだ?代替わり、随分早かったみたいじゃん。」
 「俺が18ん時に追い出した。役立たないんだからいらねぇだろってキルシュタインに言って田舎に送ったわ。」




 うわぁ……18歳でする行動じゃないのよ。確かに名ばかり公爵でフィリスティウスが当主になってから領地はだいぶ良くなったみたいだけどさ…こうも過激派だと敵も多いんじゃなかろうか?

 そんなことを考えているとフィリスティウスは俺が何を考えているのかわかったらしく、クククッと笑う。

 目を細めて笑う姿は俺から見ても凄く格好良い。こうやって見ると、フィリスティウスのα力は中々だな。早く結婚したらいいのに。なんで嫁いないんだろ。




 「余計なことを考えているな?」
 「うっ……いや、……彼女とかいないの?」
 「なんだ急に。」
 「フィリスティウス、もういい歳だろ。当主ならとっくに結婚してるだろ。」
 「そう心配しなくたって俺には番がいる。お前が心配することじゃない。」
 「はえ!?そうなの!?」
 「俺の心配事が片付いたら結婚する約束をしていた。お前が帰ってきたし、今度紹介してやるよ。」
 「まさか、俺のせいで結婚遅らせたなんて言わないよな…。番さん可哀想だろ…。」
 「そこはしっかり説明して納得してくれてんだ。俺の番はいい女だ、惚れるなよ?」




 ニヒルに笑うフィリスティウス。彼女さん、よく納得してくれたな、その我儘に。なんか申し訳ないから今度謝っておこう。しっかし、番ちゃんといてなんか安心した。

 番かぁ…出来れば俺も、可愛い彼女がいいけどロンバウトがいる限り無理そうだな…なんか着々と外堀埋められてる気がするし。

 兄たちは俺の意見を尊重してくれるようになって、昔みたいな嫌悪感はもうない。共に過ごしてみると、原因はやっぱ親だったんだなぁとしみじみ思うのである。

 兄弟の問題は解決したようなものだし、後はロンバウトのストーカーをどうにかするだけだ……。なんか、諦めたほうが早い気がしてきた…弱気になる俺であった…。


 
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