95 / 103
そして出会う俺とお前
27
しおりを挟むそれからという毎日は、定期的なロンバウトの来襲があること以外はとても平和だった。大森林ギルドに貴族が乗り込むこともなければ、スタンピートの後処理も無事に終わり。
俺の拠点がアーダングラウド家に移ったところで口うるさいのが2人分増えただけで、保護者達ものんびりと暮らしている。任務の日は交代制で俺と組んで魔物退治に明け暮れている。
スタンピートが収まり、魔物も活発化しなくなったのでゆとりができた毎日だ。あれから、ダンジョンがあった場所を詳しく調べると人工的に造られた魔石の痕跡と、口には出したくないほどの悍ましい生贄を捧げた跡があったそうだ。
そこら辺はヨルダンで調べてくれるそうで、俺達はいつものように任務を熟すだけである。タサファンだけが毎日のように深刻な顔をしていて心配だが、彼にはエルダがいるから大丈夫だろう。
アーダングラウド家に移って半年は親に会うことも無かったし、無理にパーティなんかにも参加しなくてよくて本当に助かった。俺、参加する側じゃなくて警備する側だったからな。
「……で?お前は暇なの?」
「暇ではないよ?アルディウスに会うために仕事はちゃんと終わらせて来てるから安心して?」
「またエリンティウスに無茶させてないな?この前ミイラみたいになって帰ってきてビビったんだぞ?」
「ちゃんとお休みは上げてるんだけどな。どうしてだろう?」
「(だからロンバウトが無茶言うからだって…。)」
とある平和な休日。俺の家と離れの間に簡易的なテーブルとイスが作られ、ハンモックまであるオシャレなスペースが出来た。そこでゆっくりするのが最近の俺のお気に入りなのだが、如何せん余計な奴まで勝手に参加している。
毎日のように顔を合わせにくるので、慣れてしまって俺も過剰な反応をしなくなった。たまに頭のネジが緩んでハァハァしてくることもある参加者の奇行にもすっかり慣れて軽くあしらうのが当たり前になった。
今日も今日とて拒否しようが関係なく目の前に現れるロンバウトはニコニコと嬉しげに俺を眺めに来る。手土産に王都でもかなり人気のケーキを買ってくるあたりここに暫く居座る気満々である。
フィリスティウスが警備を強化してロンバウトの侵入を拒もうとした時期もあったが、いとも簡単にすり抜けて俺の目の前に現れるのですっかり諦め気味だ。
「アルディウス、今日はケーキもあるけど最近手に入れた南のほうで作られた茶葉も持ってきたよ。凄く深みのある風味で甘いケーキと良く合うと思うんだ。」
「へー、南のほうにはあんま行かないから興味あるな。」
「私が淹れてあげるからアルディウスはゆっくりしててね。」
大事に抱えた茶葉の入った缶を持って慣れた様子でティーポットとカップを用意してロンバウトは当たり前のように準備していく。
……俺に薬系の状態異常が効かないとわかったあたりから急に唐突な尽くし系にジョブチェンジしたロンバウトである。まぁ、寝込みを襲われなくなっただけいいんだけど。
綺麗に盛り付けされたケーキとクッキーが目の前に置かれ、それから暫くして紅茶が淹れられたカップが置かれた。
こちらを伺うロンバウトの視線が気になるが、紅茶も気になる。口に含めば思ったよりも後味がスッキリしていてとても飲みやすい。俺は紅茶の良し悪しなんてわからないけど、これは高い紅茶なんだろうなぁ、なんてひっそりと思った。
「……どう?」
「うん、美味しいよ。」
102
あなたにおすすめの小説
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜
明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。
その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。
ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。
しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。
そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。
婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと?
シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。
※小説家になろうにも掲載しております。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる