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そして出会う俺とお前
やっと見つけた宝物5(公爵視点)
ハクアと名乗るこの男の他にアルディウスが信頼を寄せる男…コクヨウとコハクは自らを保護者と名乗る割にはアルディウスにベタベタと過保護の域を超えて触れているような気がするのだ。だから私は保護者と名乗る男達を好きになれないでいる。
アルディウスがニコニコと可愛らしく笑みを絶やさず話すのが私ではないことに心底嫉妬しているのだ。それを、ハクアと名乗る大男は見透かしてよく揶揄う。
なんでこんな意地の悪い男を信頼しているのかはわからないが、私が文句を言える人間ではないことは重々承知している。
私の座っていたベンチの横にどっかりと腰を掛け、ニヤニヤとこちらを伺う顔は悪巧みを隠そうともしないようだ。舌打ちをしたい気持ちを我慢し、さっさと立ち去ろうとすれば、まぁまぁとハクア殿に押さえつけられる。
「そう身構えずとも良いではないか!ロン坊、その悩み我に話してみるがよい。」
「いえ、貴方に話すことなど…。」
「どうせアルディウスについてであろう?最近ようやっと気を許しはじめたアルディウスと次の段階に上がりたくてウズウズしておるのだろう?」
「ぐぅっ…!」
「ここではなんだ、飯を食いにいこうではないか!」
有無を言わさず今度はぐいと腕を引かれて酒場へと引きずり込まれる。私があまり行かないような冒険者達が集まる賑やかな酒場は、既に活気に溢れていた。
ハクア殿は慣れたように空いた席に座ると手際よく注文をした。状況についていけずに呆然としていれば、目の前にはいつの間にかエールと簡単に摘めるような料理が並んでいた。
酒を飲むつもりなんてなかったのに、目の前に置かれてしまった。威勢よく乾杯とハクア殿がグラスを掲げれば、私はつられてグラスをカチリと軽く音を鳴らした。
少し死角になるような席は視線が集まることもなく、活気のある声で私達の声は飲み込まれ他人の耳には声は入らないようだった。
「ここはアルディウスのお気に入りの店でな。任務の終わりによく来るのだ。」
「へぇ……でも、確かに今の彼ならそうかもしれないですね。」
彼はすっかり立派な冒険者となり過ごしてきた。既に貴族としての暮らしは過去のことに成り果て、彼は彼なりに役割を果たす大人になった。
元より、あんな生活をしていれば嫌気もさす。その元凶が私自身であることを思い出すたび胸が痛む。
また嫌われてしまったらもう立ち直れない…泣いて縋ってしまう。そうならない為にも決してプレゼント選びの失敗は許されないのだ。
「さて、最近はアルディウスものんびり過ごしておるようだし、でーとにでも誘えばよかろ?」
「で、デート…。」
「あやつは食に関しては並々ならぬ腕前だし、自身で食すのも好む。」
「………。」
「おや?乗り気ではなさそうだの。」
エールを片手にハクア殿は綺麗な眉を歪ませる。そんなことはもう知っている。確かにデートはしたいが、私は一生に残る物を贈りたいのだ。
「……では、良いことを教えてやろう。アルディウスはな…。」
そこからハクア殿が一方的に話し始めたが、その話に私は釘付けとなってしまった。少しばかり自慢話が混じっていたような気もするが、それが本当ならば…。
「まぁ、これは遠い国(アルディウスの前世)で行われた事らしいからな。」
「そ、そんなロマンチックな事を…。」
「我も初めて聞いた時は妙なものだとおもうたがな、よう考えてみると互いの絆を確かめ合うには良いと思う。」
そうではないか?と、ハクア殿が話す声が聞こえたが、私の耳に彼の声は届いていない。こうしてはいられない!私はすぐに準備に取り掛かるのであった。
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