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第六話 唇以外
「頭、撫でていいか?」
「……えっ?」
どこかトロンとした表情のベンに、胸が違和感を覚える。
(な……なんなのかしら……この表情は…………)
目が泳ぎ、返事ができない。それなのに、
ぽん
「!」
さす――さす――――
大きな手がゆったりとした動きで頭を撫でていく。
「まっ、まだ何も言っていな――」
「顔に書いてある」
「っ……!」
否定できないのが本当に悔しい。出会って間もないのに、いとも簡単に胸中を見透かしてくる。『あんたの言いたいことは全部わかっている』とでも言われているような、秘密を暴かれているような、負かされているような、あまり気分のいいものではない。
それなのに、丁寧に頭を撫でられているから余計に複雑な気持ちになる。恋とか愛とか、全て人から聞いた程度の知識しか持ち合わせていないからこの表現が正しいのかはわからないが、まるで愛されているかのような、愛でられているかのような、とにかく不思議な気持ちになる。
恥ずかしさから俯いていた視線を彼の目元へ戻すと、
「あんた、すげー可愛いな」
甘い声で微笑まれ、一気に顔が熱くなる。
「はははは! 火照った顔も最高じゃねぇか。早く結婚してぇな」
「っ!? ……っ…………」
何か言いたいのに、何を言うべきかが定まらず声に出せない。
(っ……~~っ…………なんなの~~~~!?)
とりあえず心の中で叫んでおく。
ふにっ
ビクッ……
唇に伝わった感触に、わずかに肩が反応する。
「キスはしてねぇからな」
(それはそうだけれど!?)
太い親指が下唇を這うように撫で動く。
「~~~~っ!?」
ぞわぞわぞわぁ……っと、鳥肌が立った気がする。おまけにお腹の辺りから下にかけて、変な感覚も沸き起こっているような……。
指は休まることなく、唇を丁寧に触れていく。
「っ…………何をしているの!?」
なんとか声を出せたのに、ベンがそれを止める気配は一切感じられない。
「ちょっと……聞いておられます!?」
「正式ではないが仮の婚約は交わしたんだ。名前を呼んでから言ってくれよ」
「??」
(……この人は何が言いたいのかしら――)
「なっ? ソフィア」
「っ……!」
優しい目つきで名前を呼ばれただけなのに、胸がざわついている。胸も心臓も心も初めての感覚ばかりに包まれていてわけがわからない。
「……ベン様、さっきから何をしていらっしゃるのですか?」
「唇を撫でている」
「それはわかっております! ですから……どうして唇を撫でるのですか?」
「あんたを気持ちよくしたいからだな」
「……??」
(気持ちよく……? なに? 何が言いたいの? ちっともわからない……)
「俺の言っている意味がわかんねーか。でもな、俺からしてみればすでにソフィアは”気持ちいい”感覚を経験しているはずだぜ」
「……それは、どういう意味でしょうか?」
ベンの指がギリギリ触れているような優しさで唇を撫でる。
「っ……っ……」
「それだよ」
「……?」
「今、手に力が入ってんだろ。それは気持ちいいのを我慢している証拠だ」
指摘されて初めて、無意識に手に力が加わり拳を作っていることに気付いた。
「初めて経験するからまだ自分でも理解できてねぇだけだ」
「…………」
説明されてもなお、あまり理解することができない。
(これが気持ちいい……? ものすごく変な感じなのだけれど……)
ちゅ――――
「!?」
おでこに柔らかい感触を受ける。
私が驚いた顔で訴えようとするも、先手を打たれた。
「唇以外ならいいだろ。その都度ことわってたらムードもくそもねぇじゃねーか」
「く……!」
(”くそ”って言った!? やっぱりお下品だわ!!)
ちゅ、ちゅ、ちゅ――――
「ぁっ……ぇっ……!?」
言葉通り、唇は避けて頬やら目の近くやら、顔のあらゆる場所に口づけされていく。
「何をしているのですかっ!? ……ねぇ……っ……ベン様!」
「仮にもあんたは俺の婚約者だ。キスしてぇに決まってんだろ」
「!!??」
(答えになっていないのですが!?)
ちゅう――――――
「ひゃぁっ……!!」
(首筋にっ!!)
気付けば彼の両手に顔や頭が支えられており、逃げたくても逃げられない。どうすることもできず、全身から沸き立つ不思議な感覚や恥ずかしさ、火照る体温から目を背けるように視線を逸らすことしかできないでいる。
自ずと私の両手は、それぞれで彼の腕をぎゅっと握っていた。
「……えっ?」
どこかトロンとした表情のベンに、胸が違和感を覚える。
(な……なんなのかしら……この表情は…………)
目が泳ぎ、返事ができない。それなのに、
ぽん
「!」
さす――さす――――
大きな手がゆったりとした動きで頭を撫でていく。
「まっ、まだ何も言っていな――」
「顔に書いてある」
「っ……!」
否定できないのが本当に悔しい。出会って間もないのに、いとも簡単に胸中を見透かしてくる。『あんたの言いたいことは全部わかっている』とでも言われているような、秘密を暴かれているような、負かされているような、あまり気分のいいものではない。
それなのに、丁寧に頭を撫でられているから余計に複雑な気持ちになる。恋とか愛とか、全て人から聞いた程度の知識しか持ち合わせていないからこの表現が正しいのかはわからないが、まるで愛されているかのような、愛でられているかのような、とにかく不思議な気持ちになる。
恥ずかしさから俯いていた視線を彼の目元へ戻すと、
「あんた、すげー可愛いな」
甘い声で微笑まれ、一気に顔が熱くなる。
「はははは! 火照った顔も最高じゃねぇか。早く結婚してぇな」
「っ!? ……っ…………」
何か言いたいのに、何を言うべきかが定まらず声に出せない。
(っ……~~っ…………なんなの~~~~!?)
とりあえず心の中で叫んでおく。
ふにっ
ビクッ……
唇に伝わった感触に、わずかに肩が反応する。
「キスはしてねぇからな」
(それはそうだけれど!?)
太い親指が下唇を這うように撫で動く。
「~~~~っ!?」
ぞわぞわぞわぁ……っと、鳥肌が立った気がする。おまけにお腹の辺りから下にかけて、変な感覚も沸き起こっているような……。
指は休まることなく、唇を丁寧に触れていく。
「っ…………何をしているの!?」
なんとか声を出せたのに、ベンがそれを止める気配は一切感じられない。
「ちょっと……聞いておられます!?」
「正式ではないが仮の婚約は交わしたんだ。名前を呼んでから言ってくれよ」
「??」
(……この人は何が言いたいのかしら――)
「なっ? ソフィア」
「っ……!」
優しい目つきで名前を呼ばれただけなのに、胸がざわついている。胸も心臓も心も初めての感覚ばかりに包まれていてわけがわからない。
「……ベン様、さっきから何をしていらっしゃるのですか?」
「唇を撫でている」
「それはわかっております! ですから……どうして唇を撫でるのですか?」
「あんたを気持ちよくしたいからだな」
「……??」
(気持ちよく……? なに? 何が言いたいの? ちっともわからない……)
「俺の言っている意味がわかんねーか。でもな、俺からしてみればすでにソフィアは”気持ちいい”感覚を経験しているはずだぜ」
「……それは、どういう意味でしょうか?」
ベンの指がギリギリ触れているような優しさで唇を撫でる。
「っ……っ……」
「それだよ」
「……?」
「今、手に力が入ってんだろ。それは気持ちいいのを我慢している証拠だ」
指摘されて初めて、無意識に手に力が加わり拳を作っていることに気付いた。
「初めて経験するからまだ自分でも理解できてねぇだけだ」
「…………」
説明されてもなお、あまり理解することができない。
(これが気持ちいい……? ものすごく変な感じなのだけれど……)
ちゅ――――
「!?」
おでこに柔らかい感触を受ける。
私が驚いた顔で訴えようとするも、先手を打たれた。
「唇以外ならいいだろ。その都度ことわってたらムードもくそもねぇじゃねーか」
「く……!」
(”くそ”って言った!? やっぱりお下品だわ!!)
ちゅ、ちゅ、ちゅ――――
「ぁっ……ぇっ……!?」
言葉通り、唇は避けて頬やら目の近くやら、顔のあらゆる場所に口づけされていく。
「何をしているのですかっ!? ……ねぇ……っ……ベン様!」
「仮にもあんたは俺の婚約者だ。キスしてぇに決まってんだろ」
「!!??」
(答えになっていないのですが!?)
ちゅう――――――
「ひゃぁっ……!!」
(首筋にっ!!)
気付けば彼の両手に顔や頭が支えられており、逃げたくても逃げられない。どうすることもできず、全身から沸き立つ不思議な感覚や恥ずかしさ、火照る体温から目を背けるように視線を逸らすことしかできないでいる。
自ずと私の両手は、それぞれで彼の腕をぎゅっと握っていた。
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