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第19話:ノヴァルナ包囲網
#17
しおりを挟む連携を密にするとは、単なる相互援護ではなく当然、二人で組んで技を放つ事も含まれている。ぶっつけ本番であるのが、二人の緊張感の理由だ。
「左後方の林を背にします。ついて来て下さい」
指示を出してノアはフットペダルを踏み込む。後ろ向きに加速を始める『ミツルギCC』。同時にノアはライフルを手前の地面に向け、一連射した。ザリュードの追撃を遅らせるためだ。
ザリュードは『ミツルギCC』の赤外線反応を確認し、砂煙のカーテン越しにライフルを放つが、一瞬の遅れが命中弾を与えない。
「くそっ。逃がすか!」
とは言うものの、ザリュードはすぐには追撃を行わない。砂煙のカーテンを抜けた途端、狙撃される可能性もあるからだ。そこへランを追っている、弟のバジラードから通信が入る。
「兄貴。奴等は向こうの林のところで、合流するつもりらしい」
「ふん。そういう事か」
頷いたザリュードは機体を加速させ、収まりかけた砂煙のカーテンを、一気に突き抜けた。単発でライフルを撃ちながらノアを追う。
「二対二なら勝てる可能性だと?…馬鹿め」
ニタリと笑うザリュード。相手の二機が林を背後にしたのは、自分かバジラードに回り込まれないためだろう。しかしBSHOとBSIユニットの性能差を考えるならば、連携でそのような小細工は必要ない。ザリュードはバジラードに呼び掛けた。
「バジラード。格闘戦で仕留めるぞ!」
「わかったぜ、兄貴!」
高速ホバリングで迫る二機の『マガツ』。先に合流を果たしたノアは、横に並ぶランに指示を出す。
「左の機体に射撃を集中して、遅らせます…撃て!」
ノアとランの銃弾が、バジラードを狙って放たれる。ザリュードと共に不規則蛇行しながら接近していたバジラードは、これに対して大きく右へ迂回した。一方のザリュードは構わず間合いを詰めて来る。
「肉迫しての接近戦、仕掛けます!」
僅かな時間だが作り出された二対一の格闘戦状況に、ノアはポジトロンパイクではなく、より間合いを詰める必要があるクァンタムブレードを選択し、これを右手に飛び出した。あとに続くラン。Qブレードを選んだのは、相手のもう一機に距離を取られて、狙撃されないためである。
先に斬撃を放つザリュード。真横に薙ぎ払ったポジトロンパイクの刃に、地面へのスライディング。機体の上スレスレで回避すると、一気に間合いへ入り込んだ。ホバリング出力を上げて立ち上がりざまに、ブレードの斬撃を放つ。
このノアの斬撃を、ザリュードは咄嗟に機体を翻して回避行動を取る。だが切っ先がザリュード機の左腋を抉る形となった。ここでランの斬撃が加われば、仕留められるタイミングだ。
ところがランの斬撃が一瞬遅れる。僅かにザリュード機の腹部正面を掠めたところで、距離を取られてしまった。ノアがスライディングを使った、強引な間合いの詰め方をして来るのは、想定外だったのだ。
ただランはそこからさらに踏み込んで、ザリュードに小手切りを放つ。それは左手首に確実にヒットした。しかしそれは無駄な一撃に終わる。先にノアが放った、下段からの一撃がザリュード機の左腋を抉った事で、すでに左腕機能喪失の判定が出されていたからだ。
ランとしては相手の左手を切断したところで、ノアの吶喊でとどめを刺して欲しいところであった。互いの思惑が裏目に出た、といったところだ。
合わなかった!―――
すぐに気持ちを切り替えるノア。振り返る事無く機体を半回転させると、もう一機のバジラードの『マガツ』が、センサーアイを赤く光らせて眼前に迫っていた。バジラードはそのまま速度を落とさず、機体を突っ込まさせて来る。そのまま右へやり過ごそうと、ノアは機体を操作した。だが次の瞬間、同じ方向へ回避したランと、機体同士が接触してしまう。バジラード機の体当たりは避けられたものの、バランスを崩して転倒するノアとランの『ミツルギCC』。衝撃がコクピットを激しく揺さぶり、一瞬、視線が途切れるノア。そして次に視界に入ったのは、右腕一本に握ったポジトロンパイクで、今まさにこちらを突き刺そうとしている、ザリュード機の姿であった。
だが事休すかと思った直後、思わぬ事が起きる。横合いからバジラードの『マガツ』が、背中から飛んで来てザリュードの『マガツ』とぶつかったのだ。ザリュード機が体勢を崩した隙に、ノアは機体を立ち上がらせた。距離を取りつつバジラード機が飛んで来た方向を見ると、ランの『ミツルギCC』が、上体を屈めた姿から身を起こした。おそらく振り返りざまに組み合って来たバジラード機を、“背負い投げ”で投げ飛ばしたのだろう。そしてこの機会を逃す手はない。
今度こそ!…という思いで、ノアはランに通信する。
「ラン! 連携なんて不細工でもいいので、全力で行きましょう!!」
「はい!」
言葉を交わした二人は、立ち上がりかけたバジラードの機体に、並んで同時に殴りかかった。
「たぁあああああああ!!!!」
▶#18につづく
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