銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

文字の大きさ
509 / 526
第19話:ノヴァルナ包囲網

#17

しおりを挟む
 
 連携を密にするとは、単なる相互援護ではなく当然、二人で組んで技を放つ事も含まれている。ぶっつけ本番であるのが、二人の緊張感の理由だ。

「左後方の林を背にします。ついて来て下さい」

 指示を出してノアはフットペダルを踏み込む。後ろ向きに加速を始める『ミツルギCC』。同時にノアはライフルを手前の地面に向け、一連射した。ザリュードの追撃を遅らせるためだ。
 ザリュードは『ミツルギCC』の赤外線反応を確認し、砂煙のカーテン越しにライフルを放つが、一瞬の遅れが命中弾を与えない。

「くそっ。逃がすか!」

 とは言うものの、ザリュードはすぐには追撃を行わない。砂煙のカーテンを抜けた途端、狙撃される可能性もあるからだ。そこへランを追っている、弟のバジラードから通信が入る。

「兄貴。奴等は向こうの林のところで、合流するつもりらしい」

「ふん。そういう事か」

 頷いたザリュードは機体を加速させ、収まりかけた砂煙のカーテンを、一気に突き抜けた。単発でライフルを撃ちながらノアを追う。

「二対二なら勝てる可能性だと?…馬鹿め」

 ニタリと笑うザリュード。相手の二機が林を背後にしたのは、自分かバジラードに回り込まれないためだろう。しかしBSHOとBSIユニットの性能差を考えるならば、連携でそのような小細工は必要ない。ザリュードはバジラードに呼び掛けた。

「バジラード。格闘戦で仕留めるぞ!」

「わかったぜ、兄貴!」

 高速ホバリングで迫る二機の『マガツ』。先に合流を果たしたノアは、横に並ぶランに指示を出す。

「左の機体に射撃を集中して、遅らせます…撃て!」

 ノアとランの銃弾が、バジラードを狙って放たれる。ザリュードと共に不規則蛇行しながら接近していたバジラードは、これに対して大きく右へ迂回した。一方のザリュードは構わず間合いを詰めて来る。

「肉迫しての接近戦、仕掛けます!」

 僅かな時間だが作り出された二対一の格闘戦状況に、ノアはポジトロンパイクではなく、より間合いを詰める必要があるクァンタムブレードを選択し、これを右手に飛び出した。あとに続くラン。Qブレードを選んだのは、相手のもう一機に距離を取られて、狙撃されないためである。

 先に斬撃を放つザリュード。真横に薙ぎ払ったポジトロンパイクの刃に、地面へのスライディング。機体の上スレスレで回避すると、一気に間合いへ入り込んだ。ホバリング出力を上げて立ち上がりざまに、ブレードの斬撃を放つ。
 
 このノアの斬撃を、ザリュードは咄嗟に機体を翻して回避行動を取る。だが切っ先がザリュード機の左腋を抉る形となった。ここでランの斬撃が加われば、仕留められるタイミングだ。
 ところがランの斬撃が一瞬遅れる。僅かにザリュード機の腹部正面を掠めたところで、距離を取られてしまった。ノアがスライディングを使った、強引な間合いの詰め方をして来るのは、想定外だったのだ。

 ただランはそこからさらに踏み込んで、ザリュードに小手切りを放つ。それは左手首に確実にヒットした。しかしそれは無駄な一撃に終わる。先にノアが放った、下段からの一撃がザリュード機の左腋を抉った事で、すでに左腕機能喪失の判定が出されていたからだ。
 ランとしては相手の左手を切断したところで、ノアの吶喊でとどめを刺して欲しいところであった。互いの思惑が裏目に出た、といったところだ。


合わなかった!―――


 すぐに気持ちを切り替えるノア。振り返る事無く機体を半回転させると、もう一機のバジラードの『マガツ』が、センサーアイを赤く光らせて眼前に迫っていた。バジラードはそのまま速度を落とさず、機体を突っ込まさせて来る。そのまま右へやり過ごそうと、ノアは機体を操作した。だが次の瞬間、同じ方向へ回避したランと、機体同士が接触してしまう。バジラード機の体当たりは避けられたものの、バランスを崩して転倒するノアとランの『ミツルギCC』。衝撃がコクピットを激しく揺さぶり、一瞬、視線が途切れるノア。そして次に視界に入ったのは、右腕一本に握ったポジトロンパイクで、今まさにこちらを突き刺そうとしている、ザリュード機の姿であった。

 だが事休すかと思った直後、思わぬ事が起きる。横合いからバジラードの『マガツ』が、背中から飛んで来てザリュードの『マガツ』とぶつかったのだ。ザリュード機が体勢を崩した隙に、ノアは機体を立ち上がらせた。距離を取りつつバジラード機が飛んで来た方向を見ると、ランの『ミツルギCC』が、上体を屈めた姿から身を起こした。おそらく振り返りざまに組み合って来たバジラード機を、“背負い投げ”で投げ飛ばしたのだろう。そしてこの機会を逃す手はない。

 今度こそ!…という思いで、ノアはランに通信する。

「ラン! 連携なんて不細工でもいいので、全力で行きましょう!!」

「はい!」

 言葉を交わした二人は、立ち上がりかけたバジラードの機体に、並んで同時に殴りかかった。

「たぁあああああああ!!!!」



▶#18につづく
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...