銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第19話:ノヴァルナ包囲網

#16

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 ノアの銃撃を、稲妻のように右へ左へ回避したザリュードは、一点集中の銃弾を撃ち放つ。これを間一髪で躱すノア。この一瞬を逃さず、ザリュードの『マガツ』はポジトロンパイクを下段に構えて、猛然と斬りかかった。これを自分のポジトロンパイク打ち防ごうとするノア。
 しかしやはり、モルンゴール製のBSHOの出力は、桁違いだった。ガキン!と凄い音が演習場に響いて、ノアの『ミツルギCC』は後ろへ跳ね飛ばされる。だが体勢を崩しながらも、ノアは間髪置かずにライフルの銃口を向けた。

「チィッ!!」

 ポジトロンパイクの打ち合いで跳ね飛ばされたのは、相手の計算の内だと知ったザリュードは、舌打ちしながら操縦桿を思い切り引く。機体を翻しながら後退する『マガツ』の左脇腹に、赤いペイントがベタリと塗りたくられた。
 だが双方の機体とリンクした模擬戦判定コンピューターは、『マガツ』の被弾を軽微と判定する。機体の耐久性の差が出た形だ。

“浅かった!”

 誘い込みが不発に終わり、ノアは距離を取るため、林立する遮蔽物の間を高速ですり抜けていく。ザリュードの『マガツ』は、右手に握るライフルを真横に薙ぎ払うように連射。青いペイントが板状の遮蔽物の表面を、ミシン掛けするように着色していった。ノアは機体を急停止させ、遮蔽物を盾にライフルを撃ち返す。

 するとザリュードは、驚くべき行動を取った。ライフルをバックパックのハードポイントへ戻すと、自分が身を隠していた板状遮蔽物の頭頂部を、片手で掴んで全力で蹴りつけ、へし折ったのだ。そしてそれを盾にして、一直線にノアの機体へ向かって来た。二回、三回とトリガーを引くノアだが、遮蔽物の表面を青く染めるだけだ。

「くっ…!」

 射撃は利かないと即断し、ノアは機体を後退させようとする。そこにザリュードは円盤投げの要領で、盾代わりにしていた遮蔽物を投げつけて来た。咄嗟に回避するノア。投げられた遮蔽物は、ノアの背後にあった別の遮蔽物に命中して、両方とも砕ける。
 そちらに気を取られた一瞬、瞬時に間合いを詰めたザリュードの『マガツ』が、ノアの眼前でポジトロンパイクを、上段に振りかぶっていた。だがザリュードは斬撃を放つことなく、機体を斜め横へ滑らせる。次の刹那、ザリュードが元いた位置をペイント弾が通過した。ランからの援護射撃である。ロックオン警報を聞いたザリュードが、ノアへの斬撃を中断したのだ。

 効果的なランの援護だったが、彼女が相手をしていたバジラードに、攻撃の機会を与えたのも確かだ。ランの『ミツルギCC』の周囲への着弾が増える。
 
 青いペイント混じりの着弾の砂煙に覆われる、ランの『ミツルギCC』。炸裂して飛び散った青い飛沫が、機体表面を着色するが命中弾はない。ランはノアへの援護射撃を行うと同時に、回避行動に入っていたからだ。

「ちょこまかと、“宇宙ギツネ”がぁあああ!!」

 吶喊して来たバジラードのポジトロンパイクが唸る。姿勢を低くし、自分のパイクで弾き飛ばすラン。離れた位置では、ジュゼが“宇宙ギツネ”の数を書き足す。
 その間に次の斬撃を放つバジラード。ランは急速ターンでこれを躱すと、振り向きざまにパイクの刺突を繰り出した。その一撃はバジラードの『マガツ』の、左大腿部を擦過する。左膝関節部へのダメージが判定され、左脚を軸にした機体回転に制限がかかった。

「おのれっ!」

 ダメージを喰らっていきり立ったバジラードは、猛然とポジトロンパイクを振り回し始める。ランはこれに取り合わず、機体のホバリング出力を最大にして、後方へ跳躍。空中からライフルの連射を浴びせた。

「!!」

 反射的に出力全開で機体を後退させたバジラードは、ランの銃撃を躱しながら反撃しようと、ライフルを構える。相手が空中にいるのは狙い目だ。しかしトリガーを引こうとした次の瞬間、『マガツ』の体は勝手に右へ半回転する。あらぬ方向へ飛び出す銃弾。今しがたの左膝へダメージ受け、可動出力に制限がかかった事を無視して、出力全開で強引な後退と、ライフル射撃を行おうとしたからだ。着地したランの『ミツルギCC』は、素早く遮蔽物の一つの裏側へ滑り込む。空になった弾倉を交換しながら、ランはバジラードについて思った。

“バジラード…もしかして、実戦経験が無い?”

 ここまでの戦い方を判断すると、機体性能をアテにして詰めの段階になると、動きが直接的で強引になっている。実戦を重ねている者なら、戦果を確実に得るために、詰めの段階でこそ慎重になるものだ。

“そうであるなら、モルンゴールのBSHOでも、戦いようはあるわ”

 このように考えたランは、ノアに連絡を入れる。するとノアの方も自分が相手をしているザリュードが、実戦を経験していないように思えている、と応じた。さらにノアはランに告げる。

「ラン、合流してください。連携を密にして戦いましょう」

 どこか緊張感を漂わせたノアの指示に、ランも硬い口調で「畏まりました」と返答し、機体をノアがいる方へ向けた。




▶#17につづく
 
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