銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第20話:薪の上に臥して苦き胆を嘗める

#01

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 セークモートン星系で戦う、カーナル・サンザー=フォレスタの部隊に突如、襲い掛かって来た正体不明のBSIユニット。それは白と黒のモノトーンに塗り分けられた、奇妙な機体であった。白いドーム状の頭部が印象的だが、所属を示すマークや家紋、エンブレムの類は一切描かれておらず、右腕前腕部に機体番号が記されているだけである。

 そのBSIユニットは視界を埋め尽くすほどの数が、密集して超電磁ライフルを連射しつつ、一直線にウォーダ軍BSI部隊へと突っ込んで来た。簡易型のASGULタイプの姿は無い。『シデン・カイ』とASGULの『ルーン・ゴート』が、慌てて機体を向ける。

「来るぞ、速い。なんて速度だ!!」

「撃て、撃て。迎撃だ!」

 側面を突かれたウォーダ軍BSI部隊が態勢を整える前に、謎のBSI部隊からの銃撃を喰らう。しかも敵の銃弾は散弾だった。無数の弾丸が何機もの『シデン・カイ』や『ルーン・ゴート』を穴だらけにする。

「うぁあああッ!!」

「馬鹿なぁっ!!!!」

 幾つもの閃光が走り、幾つもの機体が砕け散った。散弾は厄介な代物で、回避には、より大きく機体を旋回させる必要がある。大量の散弾を一斉に撃たれては、多少技量に優れていても、回避は困難だった。
 それでも、散弾を躱しきった親衛隊仕様『シデン・カイXS』や、量産型『シデン・カイ』が、超電磁ライフルを構え直して反撃する。
 ところが謎のBSIユニットは回避もせず、一直線に突っ込んで来た。二機、三機と僚機が火ダルマになっても、お構いなしだ。

「なっ、なんだ、こいつらは!?」

ける気は無いのか!?」

 ウォーダ軍のパイロットがそう言っている間にも、敵機の群れは迫って来る。散弾ライフルを、バックパックのハードポイントへ固定し、代わりに接近戦用の武器を手に取った。ポジトロンパイクのようだが、先端に取り付けられている刃は、パイク(矛)より幅が細長く、別の世界で言うところの“薙刀なきなた”に似た形状をしている。

 見慣れぬ武器を構えた見慣れぬBSI部隊は、一斉にウォーダ軍BSI部隊へと斬りかかって行った。その戦い方はウォーダ軍の一機に対し、三機もしくは四機で一斉に突撃を仕掛けるという、ここでも直線的なものである。一機目、二機目が撃破されても、三機目、四機目が狙った相手を仕留めてればいいという、命知らずの戦い方だ。しかも一斉に突撃するため、同士討ちさえ起こしていた。
 
 謎のBSI部隊の異様な戦い方は、ウォーダ軍と戦っていたアザン・グラン軍のパイロットも困惑させた。味方の増援が到着したという通信は得ていたが、彼等もやはり、どこの部隊が来援したのかまでは聞かされておらず、初めて見る機体に加え、この命知らずな突撃戦法だったからだ。

 するとそこへ、アザン・グラン軍各母艦から、攻勢を強めるように指示が出る。

「全BSI部隊は戦闘を継続。この機を逃さず、攻めかかれ!」

「り、了解!」

 戸惑いを残しながらも、アザン・グラン軍BSI部隊も、一斉に攻勢に出た。ただモノトーンの所属不明のBSI部隊は、やはり不気味であるらしく、あまり関わらない方が良さそうだ、と共闘を組もうとはしない。指揮官機の幾つかは、謎のBSI部隊に交信を呼び掛けたが、無視されたようだ。

「全機、左側に回り込んで、増援部隊の反対側から仕掛ける、続け!」

 命令に従い、アザン・グラン軍のBSI『ハヤテ』と、ASGULの『ヴェーガル』は次々と戦場を迂回し、すでに交戦中の味方と合流した。

「敵の数が!…わぁあああっ!!!!」

「立て直せ! 近接戦闘、近接戦闘!!」

「隊長! 敵の数が増え過ぎです! これではとても―――」

 銃撃を受けて爆発するASGULの『ルーン・ゴート』。腰のクァンタムブレードに手を遣る、親衛隊仕様『シデン・カイXS』。ポジトロンパイクを構える量産型『シデン・カイ』。この謎の艦隊とBSI部隊の参戦で、数的劣勢を将兵の気力と覚悟で支えていたウォーダ軍が、一気に押され始めたのは疑いないようのない、冷徹な現実だった。

 見る見るうちに数を減らしだしたウォーダ軍BSI部隊。これと並行して、謎の宇宙艦隊とアーザイル軍艦隊の攻撃をまともに受けた、ヴェルージ=ウォーダの第35艦隊が、まず崩壊を始める。巧妙な艦隊運動で、アーザイル軍の攻勢を防いでいた第35艦隊だったが、限界を超えた数の暴力にはなすすべはない。

「戦艦『ファラージオ』爆発!」

 第35艦隊旗艦『レパーディア』の前方に位置する、露払い役の戦艦『ファラージオ』が、対消滅反応炉の爆発で猛烈な白熱光を発して砕ける。そのあまりに強い輝きに、艦橋の遮光フィルターだけでは防ぎきれず、司令官席のヴェルージは顔を背けた。
 突然現れた謎の敵は、最終的に規模にして五個基幹艦隊。これだけで自分達の戦力を上回る数である。本来なら即時撤退が当然の状況だった。だがヴェルージは、肘掛けの上に置いた拳を握り締め、継戦を命じる。

「まだだ。まだ退いてはならない! ここで退けば全てが無になる!」



▶#02につづく
 
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