銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第6話:皇国再興への道

#07

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 ノヴァルナが見ている映像は、実際の戦闘を映したものではなく、偵察プローブが収集した戦闘データから起こした情報を、スローモーションでグラフィック化したものである。そうでなければ、広範囲かつ超高速で行われる宇宙での戦闘を、肉眼で捉える事など不可能だからだ。

 だがスローモーションにしても、『ライオウXX』の動きは眼にも止まらない。当然だろう、テルーザは以前、ノーマル状態のまま“トランサー”を発動させたノヴァルナと戦い、互角以上に渡り合った事もあるのだ。

 そんなテルーザの最後の戦いは鬼気迫るものであった。超電磁ライフルの通常弾を撃ち尽くすと、威力は高いが速度は遅い対艦徹甲弾を装填して、ポジトロンパイクと併用しながら接近戦を開始。敵の機体に銃口を押し当てるほどの間合いで、トリガーを引くという戦法に出る。ここでテルーザは四十八発全てを命中させ、それも全てが撃破という離れ業を見せた。

 そして対艦徹甲弾も残弾ゼロとなるとライフルを投棄。ポジトロンパイクのみで二十一機。さらに頃合いとみて再びクァンタムブレードを起動させてからが、剣豪テルーザの真骨頂となる。距離を取った敵の射撃は悉く回避し、白兵戦で間合いに踏み込んで来る敵は全てを斬り捨て、遂には『ライオウXX』の周りが、累々と浮かぶ敵機の残骸で覆われてしまうほどだ。


しかし…そこまでであった―――


「機体のエネルギーさえも尽きた陛下のご最期は、六方向から同時に押し寄せた親衛隊仕様機に、ブレードで刺し貫かれる…というものでありました」

 カーズマルスの言葉にノヴァルナは「そうか」と頷くと、データ表示にある『ライオウXX』の敵の撃破数カウンターへ視線を移した。二百八十六の数字…しかしノヴァルナにはその数字が虚しく、哀しい。テルーザの師でもある伝説のパイロット、ヴォクスデン=トゥ・カラーバが伝えた通りだ。銀河を統べる星帥皇が二百や三百の敵機を撃破したところで、何ほどのものであろう…

“それでいて俺に、銀河を頼む…だと?”

 一点を見詰めて動かなくなったノヴァルナに、同席しているモルタナが気遣う口調で問い掛ける。

「あんた…大丈夫かい?」

 その声で我に返った様子のノヴァルナは、侘しげな微笑みとともに、モルタナに告げた。

「こちとら、ようやくミノネリラを手に入れたばっかだってのに、ったく…こんなひでぇ丸投げなんざ、俺は聞いたこともねーぞ…」
 
 星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガが、戦死したのは事実である。そしてモルタナやヨッズダルガの話によると、目的を達成したミョルジ軍と『アクレイド傭兵団』の宇宙艦隊は、一部が皇都惑星キヨウの衛星軌道上で駐留を開始したのみで、あとはどこかへ姿を消したらしい。
 現在、キヨウには元イースキー家特殊陸戦隊で、カーズマルスの協力者となっている、キネイ=クーケン少佐の一団が残っているのだが、彼等から伝え聞くところによれば、キヨウでは『アクレイド傭兵団』のごく一部が、都市部で略奪行為を働いたようではあるが、その他は平穏な様子だという。

「これはおそらく、新星帥皇を名乗るエルヴィスの統治能力を誇示する、デモンストレーションだと思われます」

 カーズマルスがそう言うと、隣に座るモルタナが吐き捨てるように言葉を繋ぐ。

「テルーザ陛下の時は荒れ放題にして、言う事聞かなかったクセにさ。グルになってるのが見え見えさね!」

 テルーザが星帥皇であった時は、これを傀儡としてキヨウを支配していたミョルジ家は、テルーザの皇都復興の指示を蔑ろにし、治安の回復及び維持を請け負った『アクレイド傭兵団』は、治安を回復するどころか、略奪行為を重ねさえした。
 それがエルヴィスが星帥皇を名乗るようになって、急に大人しくなるなど、明らかにエルヴィスは傀儡などではなく、ミョルジ家と密接な関係にあると見ていい。

「…てことは」

 ノヴァルナは天井を見上げて呟いた。さらに考える眼で続ける。

「ミョルジ軍の中にいた、あの蜘蛛型のバケモノも、エルヴィスが操縦していた可能性があるな。だがそれでも…」

 あの蜘蛛型BSHOの性能からして、テルーザと同じレベルのNNLに対するサイバーリンク深度を、エルヴィスが持つのであれば、確かに星帥皇と同等であると言える。だがどうしても腑に落ちない部分があった。いくら星帥皇と同等の能力を持っていたとしても、NNLシステムの統括権を得るためには、システムの方からの認証が必要なのである。そしてそれには、上級貴族院のメンバーが同時にリンクして、認証ロックを外す“儀式”が行わなければならないのだ。ただ今のところそのような事が行われたという情報はない。渋面になったノヴァルナは腕組みをして、胸の内で呟く。

“とにかくまだ、情報が少なすぎる…”

「どうするよ? ウォーダの」

 口下手なヨッズダルガがぼそりと尋ねると、友を失った痛みを隠し、ノヴァルナはすっとぼけた口調で応じた。

「さぁな。しばらくは狸寝入りを決め込むとするぜ」




▶#08につづく
 
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