銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第15話:カノン・ガルザック撤退戦

#15

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「うわぁあああ!!」

 豪刀『タイロン』が、フェルデーサの救援に駆け付けた、同じ中隊の『シデン・カイ』をパイロットごと、一撃で真っ二つにする。
 フェルデーサの活躍で“リベリオン中隊”と、“インヴィンシブル中隊”の戦いは、互角に持ち込むが出来た。しかしそれは短時間の出来事に過ぎなかった。敵将マガランの戦闘力は、その程度で止められるものではなかったからだ。

「下がれ、フェルデーサ!」

 ポジトロンパイクを構えた、ティヌート=ダイナンの『シデン・カイXS』が、フェルデーサの『シデン・カイXS-TF』の前で、庇う体勢をとっている。フェルデーサの機体は、すでに左腕を肩口から喪失していた。豪刀の最初の一撃はどうにか受けられたのだが、二撃を打ち払い、三撃目を躱しきれずに喰らったのだ。
 この窮地を知り、他の小隊を救援していたダイナン達三機は急遽、引き返して来た。しかしマガランのBSHO『キョウマ』は、三機の救援程度で手に負えるものではない。早々に一機が撃破され、今もさらにもう一機が真っ二つにされた。圧倒的不利な状況だ。

「ふん。我が配下を一騎打ちで倒した者が、どの程度の腕かと思うたが、失望させてくれたものよ」

 ダイナンの機体の背後で、左肩の断裂部から火花を散らし続ける、『シデン・カイXS-TF』を見据え、マガランは吐き捨てるように言う。戦場で強者を求める強者…古いタイプの武人とも言えるが、それが戦闘種族モルンゴール星人の民族性であった。

「早く撤退しろ! “リベリオン03”」

 再びフェルデーサに退却を促すダイナン。

「しかし、それでは!…」

 ダイナン隊長も助からない…声にこそ出さないが、フェルデーサには理解できてしまっていた。マガランの『キョウマ』と得物を合したのは僅か三回だが、それだけでも機体性能だけでなく、パイロットの技量も桁違いだと分かったからだ。おそらく以前に模擬戦を行った名パイロット、トゥ・シェイ=マーディンでも勝てるかは怪しいだろう。

「おまえの才能をここで失うのは惜しい。撤退しろ!」

 さらに退却を促すダイナン。この男もフェルデーサの秘めた将来性を、感じ取っていたのだ。するとここで思わぬ通信が入って来た。フェルデーサでもなくダイナンでもなく、マガランに対してである。

「“インヴィンシブル01”。ウォーダ軍の新手のBSI部隊が、我が本隊へ取り付きつつあり。エヴァーキン司令が、応援を要請されております!」
 
 アザン・グラン軍の総旗艦、『サイオウ』のいる主力部隊へ襲撃を掛けたのは、第二陣として控えていた、ミディルツの艦隊から発進したBSI部隊だ。
 初手の突撃で、ミディルツ艦隊が対艦誘導弾しか使用しなかったのは、この第二次攻撃に備えて温存したのである。

 ミディルツとキノッサ…いやこの場合、ハーヴェンの連携は巧妙だった。

 キノッサ艦隊の攻勢に対し、アザン・グラン軍がBSI部隊を出撃させ、マガラン隊などの奮戦で、戦況を押し返し始めたタイミングで、ミディルツ艦隊はBSI部隊を発進させる。
 その目的はキノッサ艦隊のBSI部隊の救援ではない。艦隊の立て直しを行っていた、総旗艦『サイオウ』の部隊への襲撃だ。アザン・グラン軍のBSI部隊の押し返しで、総旗艦艦隊の直掩が手薄になったところを狙ったのだ。

 この転換点にキノッサは迅速に指示を出した。

「全BSI部隊を撤収させ、戦場から離脱。急ぐッス!」

 司令官キノッサの命令で、第36艦隊は艦もBSI部隊も、一斉に反転離脱を始めた。そもそも十二個のアザン・グラン軍主力部隊を、三分の一の戦力の四個艦隊で足止めするのであるから、ここで戦力を磨り潰してしまう訳にはいかない。

 キノッサ艦隊に代わってミディルツ艦隊が前衛に入ると、さらに後方にいたイ・クーダ家の二個艦隊が前進、艦砲射撃で援護を開始した。ミディルツ艦隊が発進させたBSI部隊は、これも総旗艦『サイオウ』を集中的に狙う。



 そして豪刀『タイロン』を手にしたBSHO、『キョウマ』に乗るアザン・グラン軍のマガランは、この状況にチッ!…と舌打ちしていた。
 眼の前にいるダイナンとフェルデーサを倒すこと自体は問題ないが、そのために手こずるような事態になれば、味方に余計な損害を出してしまうだろう。

「貴殿ら、運が良かったと思うがいい」

 対峙していたダイナンとフェルデーサに言い残し、マガランは自分の配下に艦隊へ引き返すよう命じた。

「“インヴィンシブル中隊”は、味方主力部隊を襲撃中の、敵BSI部隊を排除する。全機、引き返せ!」

 アザン・グラン軍にとっても、目的はノヴァルナの打倒なのであるから、ここで戦力を出し尽くしてしまうわけには行かない。そうであるなら、マガランの判断は間違ってはいなかった。

 反転して一瞬のうちに戻っていく『キョウマ』の後ろ姿を見詰め、フェルデーサはキリリ…と歯を噛み鳴らす。そこにヘルメットのスピーカーから聞こえる、緊張感を残したダイナンの声。

「我々も引き上げるぞ、“03”」





▶#16につづく
 
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