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第16話:アネス・カンヴァーの戦い
#01
しおりを挟む“カノン・ガルザック撤退戦”からおよそ一カ月後、皇国暦1565年2月16日。ノヴァルナは、ミノネリラ宙域首都惑星バサラナルム衛星軌道上に、アーザイル家討伐の軍を集結させていた。
エテューゼ宙域での挟撃の危機を潜り抜け、皇都惑星キヨウに落ち延びたノヴァルナは、すぐにアーザイル家へ説得の使者を立てた。
ウォーダ家との同盟を望みの条件で修復させる事を第一とし、それを拒否するのであれば、ノヴァルナの妹で当主ナギ・マーサス=アーザイルの妻となっている、フェアンとの離婚とウォーダ家への返還。同盟関係の解消のみで、ウォーダ家側からは戦闘行為は仕掛けない、というかなり譲歩した交渉内容である。
しかしアーザイル家は、このどちらにも応じる事が無かったばかりか、ノヴァルナがキヨウからバサラナルムまで帰還する間に、アザン・グラン家と連合軍を組んで、ミノネリラ宙域へ複数の艦隊を侵攻させた。
この侵攻部隊は、二つの星系のウォーダ家防衛拠点に、艦砲射撃を加えた上、境界付近にあったウォーダ家の植民星系ナービを占領。攻略した宇宙要塞に駐留部隊を入れるという暴挙に出る。
そうなるとノヴァルナとしては、軍を動かさざるを得ない。このミノネリラ宙域の統治者となってまだ年月も浅く、敵勢力からの侵攻への対処が遅れれば、領民達に動揺と不信感が広がり易いからだ。
幸い“カノン・ガルザック撤退戦”は、各艦隊司令の見事な指揮によって、想定以上に戦力を保ったまま、生還する事が出来た。そのおかげもあって、撤退戦から一カ月足らずで、反撃の軍の編制が可能となったのである。
しかもその戦力は、前回のエテューゼ宙域遠征軍を上回り、中央集団、ミノネリラ宙域方面軍、オウ・ルミル宙域方面軍から主力を抽出して、総勢は基幹艦隊十二個。これにさらに今回もトクルガル家から、前回以上の六個艦隊が加わる。
これほどの戦力が編制されたのは、占領されたナービ星系を奪回するためではなく、アーザイル家本拠地のナッグ・ハンマ星系方面まで進撃。おそらく援護に出て来るであろうアザン・グラン軍も含めて、決戦を求めるというものだった。
ウォーダ家にとっては、正面対決となれば最大の戦いになると思われ、戦国の行く末を占う、文字通りの“決戦”の一つとなるのは間違いない。
艦橋内を覆う艦外ビュアー映像の全てを、ウォーダ軍の宇宙艦隊が埋め尽くす中で、司令官席に座るノヴァルナは、全艦隊出航準備完了の報告を聞くと、両手で自分の膝を一つ、ぽん!と叩いて命令を発した。
「おっしゃ。行くとすっか!!」
ウォーダ軍ナッグ・ハンマ星系方面遠征軍
第1艦隊/司令官ノヴァルナ・ダン=ウォーダ直卒
第4艦隊/司令官ナルガヒルデ=ニーワス
第6艦隊/司令官カーナル・サンザー=フォレスタ
第7艦隊/司令官カッツ・ゴーンロッグ=シルバータ
第9艦隊/司令官ツェルオーキ=イクェルダ
第10艦隊/司令官リーンテーツ=イナルヴァ
第11艦隊/司令官モリナール=アンドア
第12艦隊/司令官ナモド・ボクゼ=ウージェル
第21艦隊/司令官レヴァル=サイドゥ
第31艦隊/司令官ヨリューダッカ=ハッチ
第32艦隊/司令官マーズビット=サーガイ
第36艦隊/司令官トゥ・キーツ=キノッサ
ノヴァルナ直卒の第1艦隊はもちろんのこと、信頼度抜群の懐刀ナルガヒルデ=ニーワスや、BSI部隊総監“鬼のサンザー”カーナル・サンザー=フォレスタ、さらには“ミノネリラ三連星”の三個艦隊など、主力中の主力が集められ、その編制にノヴァルナの本気度が伝わって来る。
ノヴァルナが出した出航命令に対し、最初に動き始めたのがノアの実弟、レヴァル=サイドゥ率いる第21艦隊であった。実戦経験こそ多くは無いが、出陣すれば必ず何らかの武功を挙げて、“マムシのドゥ・ザン”の嫡子である事を、証明している。
そのレヴァルの気合の入りようは尋常ではなかった。大好きな姉のノアから直接会って、「私の代わりに、あの人を頼みましたよ」と、尊敬する主君の役に立つよう告げられたからだ。
そして当のノヴァルナは命令を発しておいて、すぐに司令官席を立った。大部隊の出航時にノヴァルナがよくやる事だが、自分が座乗する総旗艦『ヒテン』が動き出すまで、昼寝を決め込むのである。十数個の基幹艦隊が出航するとなると、序列的に『ヒテン』に順番が回って来るのは、一時間以上も後の事だ。
「参謀長、あとは任せる。ちょっくら、ひと眠りしてくるわ」
そう言ったノヴァルナは、護衛のヤスークを引き連れて艦橋を出て行く。一見すると怠惰な感じだが、前日の深夜まで上申書チェックなど、宙域統治者として宇宙へ持ち出せない事務仕事を、片付けていたのであって、やるべき事をやっていたのである。
そして半日後、ミノネリラ星系最外縁部に到達したウォーダ家遠征軍は、超巨大なワームホールを出現させ、オウ・ルミル宙域へ向けて統制DFドライヴを行っていった………
▶#02につづく
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