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第16話:アネス・カンヴァーの戦い
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しおりを挟む皇国暦1564年12月22日。個々にオウ・ルミル宙域まで撤退していた艦隊を集め、通常航行が可能な残存艦で隊列を整え直したウォーダ家遠征軍は、本拠地のミノネリラ宙域首都惑星、バサラナルムに到着した。
南半球にのみ海洋が存在するバサラナルム。その海洋に浮かぶ諸島の一つに、宇宙艦隊の大規模海上泊地がある。複数の基幹艦隊を全艦、海上停泊させる事が出来る広大さだ。
南半球は12月は盛夏。夕暮れの中でも、熱風が皮膚から汗を絞り出す。
着水した各艦から長く伸びた浮桟橋の上を、暑さに閉口した様子で、右手を団扇代わりにひらひらさせて歩くノヴァルナ。
するとその脇を後ろから走って来たキノッサが、「ネイーーーー!!!!」と叫びながら追い抜いていった。
そんなノヴァルナの視界の先には、連絡用シャトルを背後に、こちらに向かってゆっくりと歩いて来るノアと、やはりその脇を「キーーーツゥーーー!!!!」と叫びながら追い抜いてゆく、ネイミアの姿がある。
慌てる様子もなく距離を詰めたノヴァルナとノアは、傍らで抱き合って無事を確かめ合い、号泣するキノッサとネイミア夫妻とは対照的な態度で向き合った。
「なーーーんだ。負け大将が、思ってたより元気そうじゃん」
ツンとした表情で、先に言い放ったのはノアの方である。これを聞いたノヴァルナも、いつもの不敵な笑みと共に言葉を返す。
「おめーこそ、また『サイウン』積んで出撃させろとか、息巻いてたそうじゃん」
生意気な口をきき合った二人だが、それでも見つめ合うと声にならない思いが、視線の中で去来する。
生還を諦めようとしたこと―――
もう妻の顔を見る事も出来ないと覚悟したこと―――
きっと帰って来てくれると自分自身に言い聞かせたこと―――
弔い合戦となるなら自分のこの命を燃やし尽くすと誓ったこと―――
そして今、二人は生きてここに居る。
ノアは夫と向き合ったまま、自分の背後を指さして告げた。
「あれ、持ってきたから。諸島巡りの海上ハイウェイが、お勧めなんだって」
ノアが立ち位置を横へずらすと、シャトルの前に二台並んで置かれてあるバイクが姿を現した。ニコリと笑顔を見せるノア。
「行くでしょ? ツーリング」
これがノア流の甘え方なのだと理解しているノヴァルナは、苦笑いしながらやれやれ…と肩をすくめる。その傍らでは相変わらず、キノッサとネイミアが抱き合って、号泣し続けていた………
▶#01につづく
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