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第16話:アネス・カンヴァーの戦い
#08
しおりを挟む瞬時に間合いを詰めて来た『キョウマ』が、豪刀『タイロン』を振り抜く。その速度もこれまでとは桁違いだ。狙われた親衛隊仕様機が咄嗟に回避を行うが、左腰部のアーマーが真っ二つになる。だがこれでも上手く躱せた方だ。
「むぅッ!速い!!」
捻り込みをかけた親衛隊仕様機は、反撃のポジトロンランスを突き出した。しかし『キョウマ』は刀身で、その穂先を難なく弾く。そこからさらに刀身を一回転させると、別の親衛隊仕様機が至近距離で放った、ライフルの銃弾を跳ね飛ばした。
すると素早く回り込んだ駆逐艦『シグマード』が、別方向から主砲を連射して来る。これをマガランは『キョウマ』を九十度ダイブさせて回避。眼前にいた一機の親衛隊仕様機に、牽制の斬撃を仕掛けると同時に、『シグマード』に対してライフルで反撃した。主砲塔が二基破壊され、たまらず『シグマード』は距離を取る。
「よし。ここから仕掛ける、ツーバイツーだ!!」
そこへ二機の親衛隊仕様機がライフルで牽制射撃の追い込みを行い、残りの二機がポジトロンランスで、直接攻撃を仕掛けようとした。激しく急速機動するマガランの『キョウマ』の両脇を、超電磁ライフルの銃弾が掠め飛ぶ。だが紙一重のところで当たらない。マガランほどの技量を持つ者が、“トランサー”を発動させている状態では、銃撃で仕留めるのは難しい。そのためのポジトロンランスを使った、二機同時攻撃だった。今の状況では銃撃によって行動範囲を狭め、格闘戦で倒すのが唯一の手段だと言っていい。
艦を立て直した『シグマード』も加わった、味方の牽制射撃に当たりそうなほど踏み込んで来て、ランスを突き出して来る二機の『リュウビ』親衛隊仕様機。ところが『キョウマ』は巨体を横回転に縦回転、さらに幅広の豪刀『タイロン』を盾にして、回避と防御を繰り返す。
「く、くそっ!!」
いくら攻撃を仕掛けても躱し続けるマガランの『キョウマ』に、次第に焦りが見え始める“ハンターカルテット”。そこに生じた連携の僅かなズレを、マガランは見逃さない。一点突破で稲妻の如く突き出された豪刀『タイロン』が、カウンターとなって一機の『リュウビ』親衛隊仕様機を刺し貫いた。腹部からバックパックにまで達した『タイロン』によって、その親衛隊仕様機は爆発を起こして砕ける。
「!!!!」
一瞬の隙を突いた一撃だけで、僚機を失った“ハンターカルテット”のパイロット達と、『シグマード』の艦長が驚愕の表情になる。
「おのれっ!!」
動揺を隠せぬままポジトロンランスを振り、柄で『キョウマ』の機体に打撃を加えようとする、格闘戦を行っていたもう一機の親衛隊仕様機。だがマガランはその打撃を回避する事無く、分厚いショルダーアーマーで受け止めながら、豪刀『タイロン』を横一文字に薙ぎ払った。これを喰らった親衛隊仕様機は、パイロットごと腹部を両断されてしまう。
残るは『リュウビ』親衛隊仕様機が二機と、駆逐艦『シグマード』。
「“ハンター03”“04”、離れろ! 巻き込まれるな!」
その通信と共に『シグマード』は、ありったけの迎撃誘導弾を発射した。その数は百十四発。大量発射は味方の機体を巻き込む恐れもあったため、切り札として温存していたのだ。しかし危急のこの事態に、そうも言ってはいられない。
近距離からの誘導弾の大量発射に、さすがに『キョウマ』も加速を掛けて離脱を図る。ただその速度は思った以上に速くない。後方から追尾して来る誘導弾の大群に、追いつかれそうである。
「これは…ヤツのジェネレーター出力が、落ちている?」
愁眉を開く『シグマード』の艦長。二機の『リュウビ』親衛隊仕様機は、その誘導弾の大群を後ろから追いかける。『キョウマ』がこの誘導弾飽和攻撃を、万が一回避した時に備えてのものだ。
ところが、少しずつ距離を詰められている『キョウマ』を操るマガランに、焦りの表情は無い。むしろ余裕を感じさせる顔で「つくづく無粋なものよ…」と呟き、迫って来る誘導弾との距離を測りながら、超電磁ライフルの弾倉を“榴散弾”のものに変換した。そして機体を捻るとタイミングを見計らい、四度トリガーを引く。
“榴散弾”とはつまり散弾銃の弾のように、内部に超小型の弾丸が、無数に詰め込まれているものだ。
『キョウマ』が放った四発の榴散弾は、誘導弾の大群の直前で炸裂。目標に近づくにつれて密集して来ていた誘導弾は、無数の超小型弾で爆発。誘爆が誘爆を引き起こして超爆発となり、一瞬で全滅してしまう。
「うわっ!!」
「やったのか!?」
壮絶な爆発光に眼が眩んで、状況不明となった二機の親衛隊仕様機のパイロットは、『キョウマ』に誘導弾が命中して誘爆が起きたと錯覚した。そこへ爆発光の中から飛び出して来る無傷の『キョウマ』。
「!!!!」
完全に意表を突かれた二機の親衛隊仕様機は、すれ違いざまに大きく薙ぎ払われた豪刀『タイロン』によって、武器を構える間も与えられずに真っ二つにされたのであった。
▶#09につづく
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