銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第17話:銀河に脈打つ謎

#15

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 ノア達が目指した旧モルンゴール帝国領は、セッツー宙域と一部隣接している、アーワーガ宙域内にあった。

 アーワーガ宙域と言えば、ウォーダ家と散々争って来た、ミョルジ家が支配する宙域である。しかしながらその勢力圏は、全域に及んでいるわけではなく、三分の一ほどは、モルンゴール帝国の息が掛かった半自治星系となっていた。
 シグルス・レフ=ファンクードの種族、イルーク星人の母星イルクルス星系も、そういった半自治星系の一つであり、銀河皇国のNNLシステムによる統治下にはあるものの、納税と主要政策への従属以外は、イルーク星人の自治行政府が独自の政治を敷いている。

 セッツー中央大学のあった惑星サーエスを出発すること八日、ノア達を乗せた恒星間クルーザー『ジュエルダガー』は、イルクルス星系最外縁部へ到着した。
 DFドライヴ用に展開したワームホールの中から、まず先行偵察用の有線プローブが出現。転移先の状況に異常が無いかを調査する。そしてその三分後、異常のない事を確認した『ジュエルダガー』が、超空間転移して来る。その名の通りにメタリックグリーンの外殻が、鋭角的な印象を与える船体だった。

「転移完了。船に異常なしだよ」

 副操縦士席のセランが、コントロールパネルに指を滑らせながら告げ、電探士席のマニスが、モニターディスプレイに視線を落として続く。

「長距離センサー作動再開、情報を収集中」

 二人に「了解」と応じたカートライトは、インターコムのスイッチを入れ、キャビンに居るノア達に連絡を入れた。

「カートライトだ。イルクルス星系に到着、船に異常なしだ」

 すぐにノアが、「ありがとうございます。船長」と返答して来る。回線を切ったカートライトは半ば独り言のように言う。

「品のいいお客さんは、楽ってもんだぜ」

 それにセランとマニスが反応する。

「まったくだね。この間の客なんて、僕達まで盗掘騒ぎに巻き込まれたもの」

「…にしたって、あんたは信じてるのかい? イーマイアさんの話」

「大事な取引先の娘ってヤツかぁ? ま、一般市民じゃ無さそうではあるがな…、取り巻きの連中が奇妙過ぎる」

 彼等の疑念はもっともであった。ライザと名乗る“お嬢さま”はそれっぽいが、いつも傍らに居る双子姉妹は、召使いというよりSPのようであるし、同行している女性四人組も、立ち居振る舞いは単なる“お嬢さま”の、研究の助手では無さそうに見える。
 そして特注品ではあるのだろうが、行動や反応が人間臭すぎるアンドロイドに、おかしなヘルメットとホログラムスクリーンで顔を隠した、黒づくめの男はその最たるものであった。ただ―――

「折角のカネのなる木を逃がしかねないからな、深堀りは禁物ってもんだろ」

 カートライトは苦笑いを浮かべて、そう言い放った。
 
 対するノアもカートライトからの、星系外縁部到着の報告を聞き終えると、キャビンに集まっている同行者達を見渡して、悪戯っぽい笑みと共に言う。

「やはりあの三人…どう見ても、鑑定士とは思えませんね」

 イーマイア造船の代表ソークンから、ジョナサン=カートライト、アフェーシ=セラン、マニス=エイパーの三人は、自分のお抱えの美術品鑑定士だと、聞かされていた。しかしその話は最初の、ザーカ・イー星系からセッツー中央大学へ向かう間で、すぐに認識が変わった。彼等の本当の職業は分からないが、美術品鑑定も出来る…何か、としか言いようがない。

「ご命令頂ければ」とメイア。

「締め上げて、素性を喋らせますが」とマイア。

 冗談なのか本心なのか分からない、カレンガミノ姉妹の言いように、ノアは困惑気味に「その必要はありません」と告げた。ただここまでの彼等を見る限り、こちらに敵意を向けるようなものは感じられない。

 とその直後、突然キャビンが大きく傾いた。乗っている『ジュエルダガー』が、舵を大きく切ったのだ。座席に座るノア達も体勢を大きく崩すが、重力子ダンパーが作動して、床に投げ出される事は無い。

「大丈夫ですか!?」

 投げ出されはしなかったが、急な衝撃の緩和は逆に、関節などを痛める可能性があるため、メイアとマイアが揃って、ノアに手を差し伸べた。ノアは「ええ。ありがとう」と応じるが、今度は逆向きに船が大きく傾く。

「これは!?」

 ランの声に反応したのはP1-0号だった。

「これは…回避運動だと思われます」

 事実、『ジュエルダガー』は超空間転移を終えた直後、どこからともなく現れた三隻の不審船から、襲撃を受けていた。マニスが長距離センサーの稼働を再開させて、ほどなく反応が現れたのである。何も告げずに現れた三隻の、急速な接近の仕方から、カートライトはこれが拿捕目的の敵対行動だと見抜き、すぐに回避と逃走に移ったのだった。

「くそっ! いきなりなんなんだ、コイツらは!!」

 三隻目の不審船との接触コースを避けるため、操縦桿を大きく倒して『ジュエルダガー』を七十度降下させながら、カートライトは叩きつけるように言う。それに応じたのは、電探士席のマニスだ。

「正体は分からないけど、三隻とも銀河皇国のストランクル型武装貨物船だよ。だけどカタログデータより、かなり速度が出てる!」

 これを聞いてカートライトは、チッ!…と舌打ちして言い放つ。

「違法改造船かよ」



▶#16につづく
 
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