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第17話:銀河に脈打つ謎
#21
しおりを挟むそれから一週間後、ノヴァルナ直卒のウォーダ軍第1艦隊が、ミノネリラ宙域を発進した中央集団六個艦隊と合流し、セッツー宙域へ向かったその頃、ノア達を乗せた恒星間クルーザー『ジュエルダガー』号は、リベイスという名の恒星系へ到達していた。
この星系の第三惑星メルバムには、モルンゴール自衛軍の補給基地が置かれており、ノア達がイルクルス星系で救助した、ランヴェラ艦長らをそこへ送り届けるためである。また同時に、この惑星で『ジュエルダガー』号に、食料を積み込む目的もあった。目指す書庫惑星ヒュドラムまでは、さらに約一週間を要し、これほど長期にわたって旅をする予定は、無かったのであるから当然と言える。
メルバムの宇宙港と、モルンゴール自衛軍の補給基地は隣接しているため、ノア達は宇宙港のロビーで、ランヴェラ艦長らと別れる事になった。
補給基地からの迎えの人員に、死亡したモルンゴール兵を、入れていた医療ポッドごと引き渡し、ノア達はロビーの一画でランヴェラ艦長らと、言葉を交わしている。
「カートライト船長、ウェーバー嬢。我等を救援してくれた事に、あらためて礼を言わせて頂く。本当に助かった」
ランヴェラ艦長の言葉に、カートライトは「困った時はお互い様さ」と、軽い口調で応じ、さらに続ける。
「しかし大丈夫なのか、艦長。戦いに負けたモルンゴール人は、社会的に色々とあるんだろ?」
戦闘種族のモルンゴール星人の文化特性は、戦いの結果が社会的評価に大きく影響すると言われている。司法制度は整備されているが、日常でも決闘が頻繁に行われ、その勝敗が司法判断に大きく影響するのが普通だった。
その中でも軍事に関わる者の地位は、戦場での勝敗が人生を左右し、敗北した者はたとえ生き延びても、“敗北者〇〇”という不名誉な称号と共に、社会生活において数々の制約を受ける事になると聞く。
カートライトの言葉に、ランヴェラ艦長は苦笑いを浮かべて応じた。
「うむ。しかし昔に比べたら、かなり軽くなって来たからな。今では私闘の数もかなり減った。特に二等民の我等の間ではな」
モルンゴール星人の社会は旧帝国時代、三つに分かれた明確な階級制であった。戦士階級の一等民、準戦士階級の二等民、従戦士階級の三等民だ。銀河皇国に敗北し、従属するようになった三百年前に、この制度は正式には廃止されたが、今でも階級制後の名残りは、大きく存在しているのだ。
モルンゴールの宇宙艦の“一等艦・二等艦・三等艦”という艦種分けも、搭乗するモルンゴール星人の階級に応じており、使用する人型機動兵器が、BSHOクラスばかりであるのも、一等民用の兵器であるためだった。
そこから少し語り合っていると、一人のモルンゴール星人が向こうからやって来る。それに気付いたランヴェラ艦長は右手を挙げ、「ガルバッグ・オスム!」とモルンゴール語で声を掛けた。
そのまま歩み寄って来たモルンゴール星人も、「ガルバッグ・ラス・オム」とモルンゴール語で返答する。そこでランヴェラ艦長はノア達に向き直って、新たなモルンゴール星人を紹介した。
「紹介しよう。私の長男のガルバッグだ」
ランヴェラ艦長の言葉に応じ、ガルバッグという名のモルンゴール星人は、ノア達に軽く頭を下げながら、少し訛りのある銀河皇国公用語で挨拶をする。
「私はガルバッグ・アスム=ランヴェラ。父とその部下の命を救ってくれた事に、深く感謝する」
これに言葉を返したのはカートライトだ。
「なぁに。宇宙船乗りとして、当然の義務を果たしただけさ」
ランヴェラ艦長が自分の息子をここへ呼び寄せたのは、軍務に戻らなければならない自分に代わり、ノア達を書庫惑星ヒュドラムへ案内させるためだった。
「ヒュドラムは銀河皇国の領内にはあるが、ほぼモルンゴール人しか住んでいないからな。誰かモルンゴール人が付いていた方がいい」
「それは有難い話だが、いいのかい?」とカートライト。
「勿論だとも。モルンゴール人は受けた恩義には、それ以上の返礼をするのが掟なんだ。きみ達のためならば、命を投げ出す事も厭わないだろう」
そう告げたランヴェラ艦長が肩に右手を置くと、ガルバッグは「よろしく」と言い再び頭を下げる。そして長男のノア達への紹介を終えたランヴェラ艦長は、生き残りの二人の部下を連れ、モルンゴール自衛軍の補給基地へ向けて去って行った。
「さて、俺達は食料品の仕入れだ。早速だがガルバッグ…こっからは仲間だから、呼び捨てにさせてもらうぜ。この星じゃ、皇国の通貨は使えるのかい?」
「ああ、問題ない。ここやヒュドラムでも一応は使える。もっともモルンゴールの通貨の、“ギョール”の方が強いがな」
これを聞いてカートライトは「オーケーだ」と返答し、ノア達に振り向いて陽気に言い放った。
「よぉーし。じゃあ早速、買い出しと行くか。ヒュドラムまでそこそこの長旅だ。どうせなら、陽気にやろうじゃないか!」
【第18話につづく】
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