銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

文字の大きさ
489 / 526
第18話:閉じられし罠

#22

しおりを挟む
 
 BSI部隊同士の大規模戦闘のフィールドの発生は、戦況を混沌とさせる。アーザイル/アザン・グラン連合軍の、足止めを目的としているウォーダ軍としては、利用したい状況である。

 これを鑑みたサンザーは、参謀長に第6艦隊の全BSI部隊と、自らの出撃を告げる。これによって、相手の残りのBSI部隊も引きずり出す事が出来れば、さらに足止めの時間を稼げるだろう。
 そしてそこに自らのBSHO『レイメイFS』と、直属中隊を投入する事で戦果を拡大。敵BSI部隊を排除して、次に宙雷戦隊を叩くのだ。

「全機、発艦急げ! 拙速でいい!」

 “兵は巧遅より拙速を尊ぶ”。『レイメイFS』のコクピットで、計器類の最終チェックを行いながら、サンザーはBSI部隊の緊急発進を促す。大規模戦闘の混沌状態が続いている間にこそ、自分達の戦力を投入しなければならないからだ。

「全システム正常稼働。『レイメイFS』、“ハンター01”出るぞ!」

 強い口調で申告するサンザー。第6艦隊旗艦の空母『バンガーヴェルダ』の管制官が、これに応じる。

「ラジャー、“ハンター01”。クリアード・フォー・テイク・オフ」

 大型十文字ポジトロンランスをバックパックに装着した、『レイメイFS』が発進口から宇宙空間へ飛び出す。同時に最新情報に更新される戦術状況ホログラム。BSI戦バージョンのため、艦船よりBSI部隊の動きが中心となる。

「こちらコマンドコントロール“スクエア01”。これより“ハンター中隊”の戦術誘導を行う」

 『バンガーヴェルダ』からの通信に、サンザーは「了解“スクエア01”。よろしく頼む」と応じ、直属の“ハンター中隊”全機との通信チャンネルを開いた。

「初手から、敵BSI部隊の中心に突入する。全機、俺に続け!」

 機体を加速させた『レイメイFS』のコクピットで、全周囲モニターに映る星々が一斉に流れる。目指す方向で輝く無数の光は、パイロットの命が燃え尽きる爆発光だ。
 アーチ艦隊の『ミツルギ』を仕留めた、アーザイル軍のBSI『イカヅチ』パイロットが、背後から急速に迫る新たな敵反応に気付いたのはその時である。

「速いぞ。この反応は…BSH―――」

 驚きの声と共に機体を振り返らせようとした中途、その『イカヅチ』は超電磁ライフルの直撃を受けて砕け散った。単純な動きは頂けない。“鬼のサンザー”の前では、一瞬の迂闊さが命取りとなるからだ。飛び散る破片の脇を通過した『レイメイFS』が、次の銃撃を行う。
 
 『レイメイFS』の銃撃に続いて、従う『シデン・カイXS』達も編隊を維持したまま、一斉に超電磁ライフルを放つ。アーザイル軍の複数の『イカヅチ』が撃破されると、そこを突入口にして一気に戦場に飛び込んだ。全周波数帯通信で名乗りを上げるサンザー。

「我こそはウォーダ家BSI部隊総監、カーナル・サンザー=フォレスタ! 我が鑓の錆となりたくなければ、尻尾を巻いて逃げ帰るがいい!!」

 手に取った十文字ポジトロンランスを、二回三回と回転させ、ピタリと下段に構える『レイメイFS』。名のある武将の出現は、戦場の空気を一変させる。ましてやそれが“鬼のサンザー”ともなれば敵は怯み、味方の士気は跳ね上がった。

「く!…サンザーだと!?」

「討ち取れ! 討ち取って―――」

 たじろぎながらも、ライフルの銃口を向けようとする何機かの『イカヅチ』に、横合いからアーチ艦隊の『シデン』と『ミツルギ』が仕掛ける。さらにサンザー直属“ハンター中隊”の『シデン・カイXS』も、敵BSI部隊へ突撃した。たちまち始まるBSI同士の乱戦の中、標的にした親衛隊仕様『イカヅチRR』へ、一気に間合いを詰めた『レイメイFS』が、ポジトロンランスを大きくひと振りする。

「!!!!」

 咄嗟に穂先を回避する『イカヅチRR』。敵の指揮官機の一機らしく、それなりに技量はあるようだ。しかし第二撃の刺突は躱せなかった。十文字に突き出た鑓の穂先が、回避を続けようとしていた機体の脇腹を深く切り裂く。多少の技量の持ち主では逃れられない、神速の刺突であった。

 爆発を起こした『イカヅチRR』の光を背景にして、振り返ったサンザーの『レイメイFS』の黒いシルエットに、頭部のセンサーアイがギラリと赤く輝く。その姿に恐怖を覚えた敵のパイロット達は、一斉に逃げ腰となった。

「対艦装備の機動兵器部隊は、先陣の敵艦隊を狙え。宙雷戦隊を排除しろ!」

 そう命じておいて、サンザー自身も新たな敵を求め、機体を加速させる。自分達の“ハンター中隊”と第6艦隊BSI部隊の一部を、アーチ艦隊BSI部隊の増援に充て、残りで敵先陣部隊の宙雷戦隊を攻撃する作戦だ。先手を打って、敵の宙雷戦隊にダメージを与える事が出来れば、数的優位にある敵に対し、効果的な戦果を得られる可能性が高まるはずである。これはカーナル・サンザー=フォレスタという武将が、単なる武闘派ではない事を示していた。



▶#23につづく
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...