銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第18話:閉じられし罠

#23

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 アーザイル軍先陣である、ノリス艦隊のBSI部隊が圧倒され始めた状況は、総旗艦『コウリュウ』のナギも、当然ながら把握している。

「流石にサンザー殿、仕掛けが速い」

 戦術状況ホログラムを眺めて、眉間に皺を浮かべるナギ。そこへ機動戦参謀が、速足で近寄って来て報告する。

「第1艦隊及び、第2艦隊BSI部隊、全機発艦準備整いました!」

「よし。すぐ出してくれ」

 ナギも手をこまねいていた訳ではなく、BSI部隊の増援は考えていたのだ。ただサンザーが直卒の第6艦隊のBSI部隊のみを発艦させたのに対し、ナギは直卒の第1艦隊だけでなく、弟モートン・ゲバル=アーザイルの第2艦隊のBSI部隊にまで、出撃を命じたために多少の遅れが生じたのである。これはサンザーの第6艦隊が、通常の基幹艦隊より空母の数が倍もあって、数を揃えるのに二個艦隊の戦力出撃が、必要だったからだ。

 命令を受け、アーザイル軍の増援BSI部隊が次々と出撃。サンザーのいる戦場へと向かった。この動きは即座にウォーダ側も察知し、サンザーへ警告が伝わる。

「“スクエア01”より“ハンター01”。敵BSI部隊の増援が接近中。データリンク完了、警戒されたし」

「了解。望むところだ!」

 そう応じたサンザーは、更新された戦術状況ホログラムを確認した。右前方からかなりの数のBSI部隊が接近中である。

「“ハンター中隊”。敵増援の出鼻を叩く、全機続け!」

 サンザーは直属の中隊に命令を発すると、『レイメイFS』の機体を率先して敵の増援部隊へ向けた。すると“ハンター中隊”の行動に合わせ、第6艦隊の司令部はBSI部隊五個中隊を選び出し、これに後続するよう指示を出した。先手、先手を打っていくのが、サンザーの戦い方の特徴であり、その辺りは第6艦隊の参謀達も熟知しているからだ。阿吽の呼吸と言っていい。

 しかしながら、一時期はウォーダ家と同盟を結んで、何度も共闘していたナギである。サンザーがどのような武将かも理解していた。

「やはりそう出るか、サンザー殿」

 艦橋の戦術状況ホログラムが映し出す、サンザーの中隊の反応に、納得顔をするナギ。無論、こちらにも次の手がある。

「手筈通り、我が艦隊とモートン艦隊の、宙雷戦隊を前進させよ」

 ナギの狙いはサンザーが出撃したあとの、第6艦隊だった。空母部隊の第6艦隊は、艦隊戦は強くない。BSI部隊の母艦群にダメージを与えて、機体の補給や修理を行えなくしようというのだ。
 
 ナギの作戦はこちらもやはり、戦場に出現した大規模BSI戦のゾーンを、利用するものだったが、BSI部隊の全力出撃でサンザーを引き付け、その間に母艦群を叩こうという巧妙なものであった。

 ナギとその弟モートンの艦隊から分離した宙雷戦隊は、合わせて八個戦隊総数百十二隻。それぞれが縦隊を組んで、サンザーの第6艦隊へ接近する。対する第6艦隊は、空母を護衛する五隻の巡航戦艦と六隻の重巡航艦が、主砲射撃を開始した。アーザイル軍の宙雷戦隊は、ランダムな振り幅のジグザグ航行を行い、砲撃を回避しつつ、雷撃の間合いに入ろうとする。

 ただサンザーの第6艦隊は、砲撃戦でも練度が高い。巡航戦艦と重巡の砲撃を受けて、アーザイル軍の軽巡航艦二隻と駆逐艦六隻が、艦体を引き裂かれて爆発を起こした。もっとも百隻以上ある敵の数の前では、焼け石に水でもあるが…。

「空母に敵を近付けさせるな! いざとなったら盾となって、敵の雷撃から空母を守るんだ!」

「敵を取り逃がすぐらいなら、体当たりで仕留めろ!!」

 巡航戦艦や重巡航艦の艦長が口々に檄を飛ばし、主砲射撃と対艦誘導弾を駆使して空母の守護天使を演じる。その空母の間には、第6艦隊側の宙雷戦隊が少数ずつ分かれて、直掩として配置についていた。

 対するアーザイル軍の宙雷戦隊司令官は、状況を打開するため、まず空母の護衛に付いている巡戦と重巡に、宇宙魚雷を使用する事を決定する。

「敵の一部が、こちらを狙って来ます!」

 巡航戦艦でオペレーターが警告する。艦長は即座に艦を加速させ、これを迎え撃つよう命じた。

「最大戦速! 左右砲撃戦。砲術は咄嗟射撃に備え!」

 急速に速度を上げていく巡航戦艦。巡航戦艦という艦種は、巡航艦並みの速度に加え、戦艦に準ずる砲戦能力を有している。しかしながら防御力は戦艦に劣るために、敵戦艦と撃ち合うスタミナ勝負ではなく、高速を活かして敵の軽巡や駆逐艦を狩るのが、本来の役目であった。

 サンザーの第6艦隊所属の五隻の巡航戦艦は散開すると、まるで軽巡や駆逐艦、さらにはそれ以下の小型艦艇並みの、軽快な動きを見せ始める。二隻、三隻と迫る敵駆逐艦に、大きく舵を切った巡航戦艦はリンクした動きで、主砲塔を間近にいる駆逐艦へ向けて旋回、発砲した。閃光が走り、緊急回避をかけた敵駆逐艦の、艦尾が大きく持っていかれる。
 だがその向こうでは第6艦隊の一隻の重巡が、敵駆逐艦の魚雷を複数本喰らって爆発した。混戦状態は終わらないままである………



▶#24につづく
 
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