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第3話:落日は野心の果てに
#14
しおりを挟む「ノア、ポジトロンパイクを貸せ!」
そう言いながらノヴァルナは『センクウNX』が手にする超電磁ライフルを、ノアの『サイウンCN』に向けて放り投げる。意図を察したノアは「了解」と応じ、『サイウンCN』の持つポジトロンパイクを『センクウNX』へ投げた。『センクウNX』のポジトロンパイク二刀流と、『サイウンCN』の二丁拳銃ならぬ二丁ライフルの出来上がりだ。
そんなノヴァルナとノアに対し、敵の指揮官は僚機に、球形に取り囲んで仕留めるよう指示を出す。だがノヴァルナとノアの対応の方が早い。
「ノア、敵が陣形を組むのを阻止してくれ」
「わかった!」
ノアの応答を聞く前にノヴァルナは『センクウNX』を急加速させ、単機で敵に突っ込んで行く。その後方でノアは『サイウンCN』の、複数の目標に照準を付けるイルミネーターを起動、両手に握る二丁のライフルで、大きな円を描きながら次々にトリガーを引いた。
その弾丸は二人を球形陣の中に取り囲もうとしていた、敵BSIユニット全てに向けて放たれた。各機が回避行動をとって連携が乱れたところを、『センクウNX』が仕掛ける。
「でやぁあああ!!」
一番距離の近いところにいた敵の『ミツルギ』に、瞬時に間合いを詰めたノヴァルナ機は、右手のポジトロンパイクを振り抜いた。咄嗟に超電磁ライフルを突き出す敵機。『センクウNX』の斬撃はライフルの銃身だけを切り砕く。だがそれで終わりではない、ポジトロンパイクは左手にもある。続けさまに斜め下から振り上げた斬撃は、敵機の右脇腹から胸板を深く切り裂いた。
破断箇所から破片と血のような赤いプラズマを撒き散らして、その『ミツルギ』は動かなくなる。だがその時にはもう『センクウNX』の姿は無い。言うまでも無く、次の敵機を目指しての事だ。
一方のノアは、敵BSI群からの超電磁ライフルによる反撃を、恐るべき機動で悉く回避していた。四肢と体の姿勢制御はNNLの脳波コントロール、飛行方向と重力子バランサー制御、そしてエンジン出力は操縦桿とスロットルとフットペダル―――その全てを、ノアは自分の神経の延長線上にでもあるかのように、完璧に操って見せる。
「3、2、1、今!」
照準センサーの中で敵機の機動を予測したノアは、自分の射点に飛び込んで来るようにタイミングを合わせてトリガーを引いた。
「ウヴァッグ!?(なにっ!?)」
キャーメラー星人パイロットが叫んだ瞬間、ノアが放った銃弾が機体を直撃し、なぜ自分の方から銃弾に突っ込む事になったかを考える間もなく、パイロットは肉体と意識を消滅させた。
「ガフグ・ラヌ・BSHO!」
仲間を撃破された、別の『ミツルギ』のパイロットがいきり立って、ノアの『サイウンCN』に対してライフルを連射する。しかしその銃弾は全く掠りもしない。とその時、少し離れた位置にいた僚機が警告を発する。
「ラペチャ・ルグロン・ラヌ!」
僚機からの警告と同時に、ヘルメット内に敵の接近警報が鳴り始めた。ノヴァルナの機体が猛スピードで右上方から迫って来る。慌ててノヴァルナ機にライフルを向けるそのパイロット。するとその直後、ノヴァルナは『センクウNX』の右手のポジトロンパイクを、一直線に投げつけた。トリガーを引くより早く、胸元にポジトロンパイクが突き刺さった『ミツルギ』は、大きくのけ反る。
「ベフッマ!」
ノヴァルナの接近を警告していた別の『ミツルギ』が、横合いからノヴァルナ機に銃撃を浴びせる。それをノヴァルナは波打つような機動で回避すると、胸元にパイクの刃が突き刺さった『ミツルギ』と一気に距離を詰め、左手のポジトロンパイクで腹部を両断して撃破、さらにその機体の超電磁ライフルを奪い取ると、横合いから撃って来ていた敵機に撃ち返した。
その『ミツルギ』はノヴァルナの反撃で、超電磁ライフルごと左腕を破壊された。怒声を上げたパイロットは、健在な左手にポジトロンパイクを握り、ノヴァルナに突っかかって来る。しかし量産型BSI一機では、BSHOに敵うはずがない。ノヴァルナは敵の斬撃をパイクで跳ね返すと、袈裟懸けに斬り捨てた。
これに唖然としたのは、瞬く間にBSIの半数を失ったシーガラック星系軍の、二人の編隊長である。こうなれば仕方ない―――とばかりに、残存の量産型BSIには『サイウンCN』を狙うよう指示を出した。そして二人は協力して、ノヴァルナの『センクウNX』を狙うつもりである。性能向上型の親衛隊仕様に乗る自分達が連携すれば、BSHOでも太刀打ち出来ると踏んだのだった。無論、ノヴァルナも望むところだ。敵の新たな動きを見て不敵な笑みを浮かべる。
「おうよ! 相手になってやるぜ!!」
▶#15につづく
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