銀河戦国記ノヴァルナ 第2章:運命の星、掴む者

潮崎 晶

文字の大きさ
58 / 508
第3話:落日は野心の果てに

#14

しおりを挟む
 
「ノア、ポジトロンパイクを貸せ!」

 そう言いながらノヴァルナは『センクウNX』が手にする超電磁ライフルを、ノアの『サイウンCN』に向けて放り投げる。意図を察したノアは「了解」と応じ、『サイウンCN』の持つポジトロンパイクを『センクウNX』へ投げた。『センクウNX』のポジトロンパイク二刀流と、『サイウンCN』の二丁拳銃ならぬ二丁ライフルの出来上がりだ。

 そんなノヴァルナとノアに対し、敵の指揮官は僚機に、球形に取り囲んで仕留めるよう指示を出す。だがノヴァルナとノアの対応の方が早い。

「ノア、敵が陣形を組むのを阻止してくれ」

「わかった!」

 ノアの応答を聞く前にノヴァルナは『センクウNX』を急加速させ、単機で敵に突っ込んで行く。その後方でノアは『サイウンCN』の、複数の目標に照準を付けるイルミネーターを起動、両手に握る二丁のライフルで、大きな円を描きながら次々にトリガーを引いた。

 その弾丸は二人を球形陣の中に取り囲もうとしていた、敵BSIユニット全てに向けて放たれた。各機が回避行動をとって連携が乱れたところを、『センクウNX』が仕掛ける。

「でやぁあああ!!」

 一番距離の近いところにいた敵の『ミツルギ』に、瞬時に間合いを詰めたノヴァルナ機は、右手のポジトロンパイクを振り抜いた。咄嗟に超電磁ライフルを突き出す敵機。『センクウNX』の斬撃はライフルの銃身だけを切り砕く。だがそれで終わりではない、ポジトロンパイクは左手にもある。続けさまに斜め下から振り上げた斬撃は、敵機の右脇腹から胸板を深く切り裂いた。

 破断箇所から破片と血のような赤いプラズマを撒き散らして、その『ミツルギ』は動かなくなる。だがその時にはもう『センクウNX』の姿は無い。言うまでも無く、次の敵機を目指しての事だ。

 一方のノアは、敵BSI群からの超電磁ライフルによる反撃を、恐るべき機動で悉く回避していた。四肢と体の姿勢制御はNNLの脳波コントロール、飛行方向と重力子バランサー制御、そしてエンジン出力は操縦桿とスロットルとフットペダル―――その全てを、ノアは自分の神経の延長線上にでもあるかのように、完璧に操って見せる。

「3、2、1、今!」

 照準センサーの中で敵機の機動を予測したノアは、自分の射点に飛び込んで来るようにタイミングを合わせてトリガーを引いた。

「ウヴァッグ!?(なにっ!?)」

 キャーメラー星人パイロットが叫んだ瞬間、ノアが放った銃弾が機体を直撃し、なぜ自分の方から銃弾に突っ込む事になったかを考える間もなく、パイロットは肉体と意識を消滅させた。

「ガフグ・ラヌ・BSHO!」

 仲間を撃破された、別の『ミツルギ』のパイロットがいきり立って、ノアの『サイウンCN』に対してライフルを連射する。しかしその銃弾は全く掠りもしない。とその時、少し離れた位置にいた僚機が警告を発する。

「ラペチャ・ルグロン・ラヌ!」

 僚機からの警告と同時に、ヘルメット内に敵の接近警報が鳴り始めた。ノヴァルナの機体が猛スピードで右上方から迫って来る。慌ててノヴァルナ機にライフルを向けるそのパイロット。するとその直後、ノヴァルナは『センクウNX』の右手のポジトロンパイクを、一直線に投げつけた。トリガーを引くより早く、胸元にポジトロンパイクが突き刺さった『ミツルギ』は、大きくのけ反る。

「ベフッマ!」

 ノヴァルナの接近を警告していた別の『ミツルギ』が、横合いからノヴァルナ機に銃撃を浴びせる。それをノヴァルナは波打つような機動で回避すると、胸元にパイクの刃が突き刺さった『ミツルギ』と一気に距離を詰め、左手のポジトロンパイクで腹部を両断して撃破、さらにその機体の超電磁ライフルを奪い取ると、横合いから撃って来ていた敵機に撃ち返した。

 その『ミツルギ』はノヴァルナの反撃で、超電磁ライフルごと左腕を破壊された。怒声を上げたパイロットは、健在な左手にポジトロンパイクを握り、ノヴァルナに突っかかって来る。しかし量産型BSI一機では、BSHOに敵うはずがない。ノヴァルナは敵の斬撃をパイクで跳ね返すと、袈裟懸けに斬り捨てた。

 これに唖然としたのは、瞬く間にBSIの半数を失ったシーガラック星系軍の、二人の編隊長である。こうなれば仕方ない―――とばかりに、残存の量産型BSIには『サイウンCN』を狙うよう指示を出した。そして二人は協力して、ノヴァルナの『センクウNX』を狙うつもりである。性能向上型の親衛隊仕様に乗る自分達が連携すれば、BSHOでも太刀打ち出来ると踏んだのだった。無論、ノヴァルナも望むところだ。敵の新たな動きを見て不敵な笑みを浮かべる。

「おうよ! 相手になってやるぜ!!」




▶#15につづく
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

ソラノカケラ    ⦅Shattered Skies⦆

みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始 台湾側は地の利を生かし善戦するも 人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される 背に腹を変えられなくなった台湾政府は 傭兵を雇うことを決定 世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった これは、その中の1人 台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと 舞時景都と 台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと 佐世野榛名のコンビによる 台湾開放戦を描いた物語である ※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()

処理中です...