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第一章 あれ?腐った呪いなの?

にじゅういち

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「全く、ディンに困ったものだわ。……ディーナ様の影響とはいえ。はあ。
王族としての振る舞いがね……。」
「まったくです。もう、ほんとうに兄としても情けない。ハノエル、ごめんね?リオーラも。」
「いえ、私こそ……。」
「僕は大丈夫です。」

姉は俺のために怒っただけだしね。
俺は感謝を込めて姉の手をキュッと握る。

「ハル、嫌な思いさせちゃったわ。」
「ううん、姉様。ありがとうございます。」
「ああ、ハル!」

ギュギュっと姉に抱きつかれた。
ふふ、姉様大好きです。
優しい、リオーラ。やっぱり、悪役令嬢は有り得ないよね!

「いいなあ。」

ですよね?
いーでしょう(ドヤ~)。
こんな美少女に抱きつかれて、羨ましいですよね?
でも、俺は姉様を悪役にする気はないので……貴方がヒロインなんかに目移りしなければ、この美少女は貴方の奥さんになるんですよ?王子様。
でも、なんとなく貴方にあげたくないんだよね。

「私もそんな可愛らしい弟が欲しかった。なあ、カレイド。ものは相談「断る!」……まだ何も言っていないのに。」

って、羨ましい所が違うっ!
ちがうでしょ!貴方は姉を大事にでしょ!
まあ、俺だってハノエルみたいな弟がいたら、ブラコンだったと思うんだよ?
でも、王子の弟なんてごめんだ。
今はブラコンでシスコンですけど、ソレがなにか?

「聞かなくてもわかる!」

兄様も姉様もブラコン入ってるよね!もう、相思相愛のブラコン、シスコンで、いいと思う!
だって、誰にも迷惑かからないし?

「ほらほら、二人とも。まだ、挨拶も終わってないのよ?」

母の声に二人はピタリと静かになる。うん、母は怒らせてはいけない方です!

そうそう、伯母様の名前さえ聞いていないんだよね。
でもさ、血は争えないってよくいうじゃない?
父様の俺を見た時の反応と……うっすら記憶にある王様の反応に似ていた気がするんだよね。
あれ?父方の血はブラコンやらの属性?

そういや、アズリアと母の兄の名前も聞いてないよね。

「ああ、そうね。私はリステリア。元伯爵夫人になるわ。夫が亡くなってからは領地で魔導士をしていたの。結婚するまでは宮廷魔導士だったのよ?
貴方と同じで両極魔法を使えるの。」
「え?ハルは、ハノエルは両極魔法を使えるのですか?」
「そうだ。しかし、殿下。この話はここだけにしてもらいたい。
この子のステイタスを公にはしたくないのでね。」
「……両極魔法…が使えるということは、将来的には宮廷魔導士になっていただかないと。」
「それは無理だな。」

クリスが宮廷魔導士にと言ったが、アズリアが無理だという。
ちなみに、俺はなりたくありません。
魔法は使いたいが、王城なんかで暮らしたくないしね。
というか、そもそも戦うための基礎体力がつくかどうか……。
よくさ、ラノベなんかで魔法使いはもやしっ子みたいな発言あるじゃない?
でもね、この世界じゃ無理です!
だって、まず、電車も馬車もないんだよ?ちなみに転移魔法も聞かない。
つまり、移動に馬車か馬しかないわけ。体力持つと思う?
それに魔法を使うための体を支えるのは体力だよ?
まさかねえ、誰かにヒールかけてもらいながら、戦う魔法使いはいないじゃない?
特にハノエルの体で戦うってなったら、一個でっかい魔法使うたびに、休息させないと倒れちゃうくらいひ弱だと思う……なさけないけどね。
人が多いのにも疲れてしまうハノエルくんの体力は……はっきり言ってベビー並みなのですよ。
だから、甘んじて抱っこでの移動も受けてるんだーーー………遠い目

そもそもね?

俺は家族を守れたらいいんだよ。
自分勝手と言われようとね。
不特定多数がどうなろうと、はっきり言って家族が幸せなら良いのです。
だって、他人を助けて家族に何かあったら後悔しても遅いしね。
noblesse oblige?
知ったこっちゃない。だって、俺はただの日本に生まれた庶民ですからっ!

「アズリア兄様、それはどういう?宮廷魔導士になるのは反対ですが、無理というのは?」
「簡単に言ったら体力的に無理だ。」
「それはこれからじゃないの?」
「いや、先天的にハノエルの体力はそう上がらないと思う。」

マジか!
上がらないのか!
たしかに、Dって最低。
一歳時でもCに上がるらしい。
本にあった。
つまり、俺は一歳以下なんだよね。
ありえないだろう?

「……鍛錬してもか?」
「鍛錬ができないんだよ……。」
「は?」
「虚弱……だけじゃないのです?」

つい、聞いてしまう。
だってさ、鍛錬もできないなんて、俺聞いてないよ?
あれ?もしかして俺一生D体力?
えー……マジか……。

「んー、ハノエルがもう少し大きくなったら話す予定だったんだがな……。」
「申し訳ありません。」

父の言葉にアズリアがハッとして謝る。
まあ普通は本人が幼い子なら話さないよね…。難し話や未来に期待できないような話はさ。

「まあ、どちらにしろ知らなければ、ハノエルが無理をするのではありませんか?」

母が静かに話す。
まあ、鍛錬はするだろうね。
で、なかなか体力つかないから無理して体壊す……目に浮かぶようだわ。
あははは……。

「ハノエルは聡い子ですわ。」
「そうだね。ハノエル、お前は………。」



つまり、父の話はこうだ。
ハノエルは生まれつき虚弱体質……うん、わかっていたけどね。
改めて言われるとくるものがあるね!
もともと筋肉もつきにくい体質もあるし、食事も少ない。
そうなんだよね。俺は食べたいのに、体が無理だっていうんだよ。
一回、限界超えて食べたら吐いた。
そして三日以上食事を受け付けなかった……うん、無理はだめだね。
おかげで余計に軽くなった過去があります。
それに、プラスしてね。
この前の薬のせいで……さらに弱くなってしまったらしいんだ。……なんか、内臓的に?
だから、『暴走』も長くは続かない。
けど、短くても凄まじいから……伯母様にはコントロールを教えてもらう予定でいたみたい。
それも両極魔法をうまくコントロールできれば、身を守る魔法くらいはできるだろうと。たとえ体力が皆無でもって。……悲しいなあ。
特に暴走を何度も起こすと体自体が持たない可能性もあるんだとか。
いや、もう、ハノエル……どこまで不憫キャラにされてるのよ!

「つまり、僕は将来……何もできないのです?」
「いや、そんな……。」
「僕は……。」

お荷物にしかならない……って、何、このネガティブな感情!
あ、ハノエル自身の『負』の感情が湧き上がる。
だめ、だ!
大丈夫だって!俺はポジティブなんだから。
深呼吸だ、ハノエル。
大丈夫!だって俺がハノエルなんだから!
だから!

「なら、たくさん勉強して兄様をサポートします。それならお部屋でもできますよね?」

そう!俺は引きこもりに近い生活をすればいいじゃないか!
この家で!自宅警備員上等じゃん!

「もちろんだ!」
「無理はだめだけどね。」
「魔力のコントロールが上手くなれば、体に負担をあまりかけないで魔法をこなせるようになるわ。」
「はい。」

にっこりと微笑むと、皆んなの顔もふにゃあと綻んだ。
ふふ、ハノエル最大の武器は笑顔だな。
そう、俺は笑顔の天使なのだ。
……恥ずい。

「兄様の側にずっといてもいいです?」
「もちろんだ。」


「話はまとまったか?そろそろ私の紹介もして欲しいんだが……。」
「はいはい。ハノエルは生まれてすぐにあっただけなので、ほぼ初めてね?母様の兄でレイズというの。伯父になるわ。」
「伯父のレイズだ。しかし、義兄上に似なくて可愛いなあ。
……騎士団やめようかな。」
「騎士団?」
「そうだ、レイズは近衛騎士団団長なんだよ。……ついてくるときかなくてね。」
「いいじゃないか、ずっと休みをもらっていないし。
可愛いい妹の家に遊びに来たって。」
「そうですが、陛下の守りが。」
「副団長で十分だ。精鋭部隊がいるのだから。
殿下たちの守りがこの二人だけじゃな。」

と二人……いつのまにか一人だった。

「ん?ああ、ドルクはディンの護衛に行ったよ?気がつかなかったかな?」

コクリと頷いた。
全くきづかなかったよ。
すげーな!近衛って隠密活動もできちゃうの⁈

「まあ、簡単に気づかれたら護衛失格なんだけどね。」

そうなんだ?……忍者育ててないよね?
でも、団長なんてすごいな。
というか、家族まですごいよね……。
まあ、そもそも直系の公爵ですしねえ。

「はあ、こんなに甥っ子が可愛いなら……騎士団やめて義兄上の警護にしよう……いや、もうさ。俺をハノエルの護衛にしない?息子じゃなくてさ。俺のが強いし?」

って、伯父様……素でてません?
王子雇い主いますけど?

そんな砕けて大丈夫なの?
ちなみに俺は脳内こんなだけど、言葉はハノエル補正入ります。便利だよ?
……サムイことだけ除けばね。




ーーーーーーーーーー

Sideドルク

ちくしょう。
ジャンケンに負けた。
ディンゲル殿下の護衛より、あそこにいたかったぜ。
しっかし、マジで可愛いんだな?『公爵家の珠玉』は。
ありゃ、公爵云々抜きにしても、欲しがるやついるだろうよ。
ま、ガッチリ兄姉が抑えてそうだがな。
カレイド様は……あの年で騎士団長の息子の現役騎士を倒すほどの腕と聞いたし。
マジで?
って思うけど……ねえ。
深層のお姫様守るためだったりしてな。
で、なんか魔力は高いっていうし。
確かに護りたくなるな。
……汚したくなる気持ちもわかるけどな。

にしても……ついてないぜ。



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