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第一章 マジ異世界ですね
No.16
しおりを挟む奏歌が慌て謝るが……周りは目が点どころか、顎が外れそうだよ。大丈夫?口あいてますよ?
あれ?
もしかしなくても……チートとはいえ強すぎるとか言いますか?
でも、神さまが言うには、奏歌にもつけるって言ったよね。で、私……奏歌以上だったよね?だって、私には『チート』にしたって言ったもん。……やばいかな?
でも、どんだけの力かを見ないと今後使うのに躊躇してしまうよね。それではもっている意味がない。魔法は使ってこそ魔法なんだから。
まあ、すごい力があれば……襲われたりしない……よね?逃げればいっかな?
よし、もしもの時は逃げよう。
ハリーやラナンに怖がられたら悲しいけど、仕方がない。
まだ、出会ったばかりなんだもん。その時は、仕方がないから逃げよう!と決めた。
「んー、ママ。今度はママの番でいいよ。私でこれで……なんか怖いことになりそうだけど。」
うん、母もそう思う。だけど躊躇していても仕方がないよね。
力を知らないって、危険だもん。よし。と気合いを入れて、まだ残っている木偶の方に体を向ける。
ようやく、復活したモブ兵たちが茶化す。たぶん、見たことを忘れたいんだろうねえ。
「チビちゃんはむりすんなよ?」
「ちびっこにゃ、早いんじゃね?」
「」「」「」etc.
などなど、次々と野次がとぶ。
まあ、私まで奏歌並みとは思わない……いや、思いたくないよね?たぶん。でもね?ごめんよー!
「はりーしゃん、魔法のレベルって、あんまり高くないにょ?」
「まあ……魔術師や魔法騎士は偉い強いが。ああ、あと勇者か。
奏歌レベルなら、魔術師でもなかなかいないかもしれないな。
はあ、今後……いろんな意味で狙われそうだ。」
マジか……。じゃ、それより強い私が守ってると分かれば手出ししないよね!
というか、奏歌が魔術師レベルなら、私は勇者レベルかもしれない?つまりは、世界最高峰と同じかもしれないんじゃ!
なら、手だしさせないくらい軽いんじゃない?ね?
よっしゃあー!
というわけで、やっちゃいますよ。
「あたちもやるよ!よっち、いくじょー!んとんと、『ちゃいにんぐあろー!』」
光の矢が木偶に刺さり、木偶が光りサラサラと光の粒になり……消えた。
あれ?
なんでだ?
「……光魔法……だと?」
うーん?思ったのと、ちゃう!
じゃ、闇系だとどうなる?
「『だーくあろー!』」
黒い矢が木偶に刺さり、黒く霞んで消えた……。また消滅?
あれ?これじゃ、みんな消えちゃうじゃん。
そしたら、マジックドロップ系集めらんないんじゃないの?
矢じゃだめ?とか?
なら。
くるりと別の木偶にむかう。
「『あーちゅくえいく!」
これなら、地震だから倒れて……あーーー!やばい塀が……。
なんと木偶ごと塀が崩れ落ち、瓦礫と化した。……あの塀を崩してしまった。さすがに、怒られるよね。……直せるか?な?
「……ごめんなちゃい!えっとえっと、『おーるりぺあ!』」
あ、なおった。ふぃー。たしかに、うん。イメージでできるけど。考えなく、呪文言っちゃうとだめ?ならば、普通に。イメージだけでやってみたらどうだろ。
「ひ!」
ぽっと手のひらに炎が浮かんだ。
お、いい感じ。
よし、なら?
「みじゅ!」
水が現れた。ぽよぽよと水のボールが浮いている。
それをイメージで縄状にしていく。
「ウォーターロープ、とらえよ!」
水のロープが木偶に巻きつく。
クッと引っ張ると簡単に木偶が倒れた。オッケー!成功だ。
ん、これなら悪い奴を戒められるね!
おし。気をつけないと、人を簡単に消滅させてしまいそうで怖い。でも、木偶だから消滅したのかもしれないけどね。
「………規格外だぜ。」
「……ハリー、ハロルド。ここを離れた方がいいかもしれないわ。知られたくない人が知っちゃったかも……。」
ミリオンが不安なセリフを言い終わらないうちに、いきなりドカッという、音と共に一人の男が現れたのだった。
「……あー、だめ、遅かったわ……。めんどーなのがきちゃったわ。」
ミリのため息混じりの声がして、あたりはその男を見て騒然とした。
「こ、これは……ようこそ。勇者様。」
「元がつくけどな!」
とニヤリと笑った男は、40代前くらいの苦みばしった良い男だった。たぶん、一般的にはヒゲ顔ではあるがカッコいいと言われる部類のはずだ。
注)私の好みではないけれど。
ミリオンが焦ったのはこの男の気配を読んだのかもしれないね。
そう、私のまほうで面倒ごとがやってきたらしい。
話からすると、なんと元勇者様がご降臨のようです。
……面倒な。
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