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第二章 異世界というものは
No.8
しおりを挟む「でもしゃ、もちりょん。あ……こちょばがもじょってゆーってゆーか、ちゃらにわりゅく……。
……こちょば、にゃおれ!」
「シャルさんの魔法が解けるようなことがあったのかな?」
「……どうだろう。あ、言葉、ふちゅうに……やっぱ、ちゅこちは、のこるみたいだけど、まちだよね?にゃんでら?」
「うん。大丈夫。」
「口に魔力をあちゅめるよりは、まちみたい。でも完全じゃにゃいち、ちゅごく……だめら。」
魔法はなんでも完璧じゃないみたいだなあ。特に自分にかけるのは。副作用なのか、かなり滅茶滅茶だ。
「ん、でも十分だよ。」
「ちょう?にゃんか、よけいににゃったきがちゅるよ。」
もう、これでいこうと思う。意味が伝わればいいのだし。でもなんか、すごく喋りにくい。魔法で少し直したせいかな?
でも、さらにひどくなったのには、まいる。
……しっかし、まったく。
私の恋愛関係はいらんのだよ。
そりゃさ、すこーしだけ期待はあったよ?
せーっかく、生まれ変わったし?
……前世ではないラブロマンスとかもね?
でも、実際問題としては幼すぎるとおもうんだよ。
……今すぐってのは、肉体的にも精神的にも無理だ……嫌なトラウマも顔を出していまいそうだしね。
何より、忘れたいことを思い出しそうですごく怖くなんだ。
……忘れたいのに忘れることはないとおもうしね。
でも、心の奥深くに眠らせることはできる……できてるはず。
消化することはたぶん無理で……。
いや。
うん。今はかんがえない!
で。
だから、まずは『お年頃』になり始めている……あくまでもなり始めているだ!
……奏歌からでしょう?
でも、もちろん……この子をそんじょそこらの男になんか絶対にあげたりしないけど。
当たり前でしょう?
一人で頑張って育ててきた……いわば、手中の玉よ、磨き途中の宝石だよ?
本当なら誰にも渡したくなんかないもの。
ましてや、先に死ぬからと思っていた私だったのが、今は奏歌よりも幼くて、魔力があればあるほど不老で長生きなら親が幸せにできるんじゃないかな?
……奏歌に添い遂げたい人ができなかった時は、二人で生きていけばいいのじゃないかな?
でも……奏歌がもしも先に死んでしまったら?
……また?
一人に?
……いやだいやだいやだいやだいやだ……それが何千年も後にこようが嫌だ。絶対に嫌だ。
だ、大丈夫。
まだ、先まだ、先……その時がきたら、今度こそレミちゃんのとこに行けばいい。
そう……今度こそ。
「ママ?どうしたの?」
「あ、にゃんでもないね、チョカ。チョカは、誰がいい?」
「ん?ママの相手?なら、ロドさんかなあ。」
「は?ちゃう!お前の相手ら!」
「えーー?ん~、わかんないよ。」
「でもちゃ、ラナンしゃんもミリしゃんもはろりゅどしゃんもじゃんねんおーじ?もじゃん?」
「えー、王子はないわー!絶対にないわー。
ただのバカはいらんよー。
たとえ、国王でも。たしかにお金はありそうだけどさ?お金とは結婚したくないなあ。
第一、王妃とかってさ自由がなさそうじゃない?
まあ?
わたし的にはピアノがあって、自由に歌が歌えて衣食住が普通に賄えたらいいなって思う。
ねえ?ママ。
冒険者でお金をたくさん稼いでさあ。
最終的にはカフェバーでもする?
なんて、どうかな?
ジャズバーならぬ、ソングバー的な感じで!
いー!いいかも。私は歌を思う存分歌うことができるし、ママの料理は最高じゃない?この世界ならさ、ママの料理飛ぶように売れそうじゃない?
ママが大人の姿になるまで稼いでさあ、その後とかよくない?」
「いい!しゅごい!いい!」
「でしょでしょ?ね。ママ。夢ってさ、いくらでもまたできるじゃない?一つだめでもさ、また夢は見れるよ。何せ、私たち若いんだもの。」
「うん。」
そうだね。私たちは(特に私は)若いし、寿命も伸びたしの。
しかし、私の子にしてはできすぎる子に育ったなあ。
優しい、良い子。
その目が曇るのは見たくない。
だから、曇らないように私は奏歌を守るよ。
「それに、ママとこうしてずっと一緒なんてさ、私、すっごく嬉しい。」
「!」
「ママが頑張って稼いでくれたのはわかってるし、責任ある『仕事』だったのもわかるよ?
でもさ、やっぱ少しだけ寂しかった。父親をほしいって思ったことはないけどさ?
やっぱ、父親がいたら……ママともっとずっと一緒いられたのに。って思ったことはある。」
「奏歌……。」
「ふふ、だから『今』が嬉しい。そりゃ、本音を言えばオペラ学んで歌いたかったよ?
でもさ、それって根本は、ママなんだよね。
ママは、昔さ、子守唄たくさん歌ってくれたじゃない?
まず、それ。
それが『歌が好き』の元なんだよ。
で、一緒に歌うのが楽しくて。
ママが褒めてくれるのが嬉しくて。
発表会とかでソロに選ばられるとものすごい喜んでくれて、仕事抜けてまで見に来てくれたじゃない?
それが嬉しくて……でっかい舞台でいつか聞いてほしくなったんだだよね……だから、だからね、今がほんとに嬉しいんだ。
死んじゃって、なんか少しだけ怖い世界で、友達もいない世界だけど、ママがいるからいいかな?って思ってしまう。
それに、さ。
魔法とかって、なんかちょっと楽しいよね。ワクワクしちゃうじゃない?」
「奏歌!」
奏歌にギュって抱きついた。
もう、抱きしめることはこの短い手ではできないけれど。
だけど!
いつのまにこんなに『大人』になってしまったんだろう?私の娘は。
私の可愛い娘。大切な娘。
そう、寂しいっておもっていた……のは、気づいていた。
でも、何よりも食べて生きていかなきゃいけなかった。
だから、頑張って稼ぐしかなかった。私には奏歌しかいなかったから!
もし、自分に親がいたら……。
もし、自分に兄弟がいたら……。
そう、思わずにはいられなかったけど……。
しょせん、無い物ねだりをしたところで虚しくなるだけ。
だから、この子には親のいない世界を味わってほしくなかったけど。結局は、私だけだ。
だから、頑張るしかなかったんだ。好きなことをさせて、美味しいものを食べさせたかったから。
でも『寂しさ』だけはどうにもできなかった。
「ふふ、ママも奏歌といられんにょがちゅごく、うれちい!」
二人で泣き笑いみたいになった。
なんか、行くのに半日近くかかった王宮も。
テレポートで帰ってきてしまったので、まだ昼過ぎで……でも、なんだか毎日がものすごーく濃すぎて。一日が長すぎるんだよね。
まだ、この世界に来てさ。
何日?4日目?
もう、何年もいるみたいな疲れが体にはある。
でも、知識は4日分しかない。
そう、私たちは二人だけの家族だ。最小の家族。守ってくれる者はいない。それは、前の世界と同じだけど。
私たちは二人しかいないのだ。
だから!
私は、もう迷わない。
たしかに体力はまったくないといっても過言ではないけども!
だがしかし。
私には……いや、私たちにはあまりある魔力があるではないか。
それは、国の最高魔力をもつ勇者に匹敵するくらいの魔力らしいし。
なら、そう簡単には死ぬことはないよね?
そもそも、誰かの庇護下にはいり奏歌を守ろうとしたこと自体が間違いなのかもしれない。
ずっと頑張ってきたじゃない?
今更、人に頼ってどうする?
そう、たしかにこの世界での一般知識はない。
それは、今までのように教えてもらうなり、調べるなりすればいい。そう、教えてくれそうな人なら多々いるじゃない。
でも、私自身の目標は『奏歌を幸せにする』だ。
それ以外は二の次三の次だ。
もちろん恋なんか、五の次六の次だ!
だったら?
やることは一つだけ!
奏歌の人生を奏歌のための幸せいっぱいな人生にするために。
まあ、『玉の輿』の意味は変わるかもしれないけどさ。
ただの金持ちじゃだめ!
権力があってもだめ!
富、力、能力……全てを兼ね備えた最高の男で奏歌を溺愛し、また、奏歌自身も惚れる男!
そうだよ。
いないなら育て上げればいいじゃない?
今までは限られた時間だったのが、今は余りある時間に変わったんだもん。
それに?
一応、側には原石がゴロゴロしていそうじゃない?
私の恋愛?
あははは。
それはどーでもいいわ。
だって、今度のことでわかったことが一つあるもの。
私が、この世で唯一愛せるのは、たぶん奏歌だけ。
私には恋愛という愛は理解できない……たぶん、一生。
この胸の奥に隠しているものが消えない限り。
……消えることはないから。
私の最大の『秘密』でもある……これは、これからも誰かに打ち明ける気はない。
そう、奏歌にもね。
だから……。
男はいらないかな……。
うん、いらないな。私の人生に男はいらない。
申し訳ないけど?
娘のためだけに利用させてもらうことにする。
ふふ、改めて?
娘を意味ある玉の輿に乗せるためために……がんばりますかね!
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