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第二章 異世界というものは
No.59
しおりを挟むあれもこれもと沢山の食材を買い込んでいく。あの家には時間停止型収納庫が完備されているので、ロドリヌスが空間収納にいれて持ち帰ってくれる。他のメンバーはマジックバックしか(十分ですけどね。)もっていないからだ。
もう、いいだろうってところでまたあのおじさんが黄昏ていた。
「おじさん、おひさ。」
「おお、のり玉を教えてくれた子か。」
「まだ、売れてないの?」
「いや、あれはなかなかの売れ行きだし、嬢ちゃんのおかげでかなり儲かっているぞ。」
「じゃ、なんでくらいの?」
「んー、また変なもんをノリで仕入れてしまったんだよ……。」
このおじさんは商人として大丈夫なんだろうか…と思わずにはいられない。
「で?」
「ん、ああ…………これだ。」
さすがにこれは無理だろう?と出してきたのは……………………枯れ木の様なもの。
「カツの木の匂いには似てるんだが香木じゃなくて食い物だっていうんだよ。そのうえよう、カビもついてるだろ?なんかカビはふつうだとかなんとか言われたんだが。でもなあ、硬すぎて……刃物でも少ししか削れんし……使い方はわからんし……売ったやつもわかんねとか……なんで買っちまったんだろうなあ。」
うん、やっぱりおじさんは商人としての鼻はいいのかもしれないけど、何かが欠けているんじゃないかなと私はものすごく心配だ。
シャル、後で拭くからちょっとだけ食材切っていい?
『許す。』
ありがとう。
「おじさん、一個ください。私の勘が正しければ……。」
これは鰹節だ……とはいえ、カツオではないかもしれないので…あくまでモドキではあるけども。
シャルの短剣ならどんなに硬くても切れるだろうし。
まずは、やわらかめの布でしっかりとカビを落とす。
シュㇽㇽㇽ~と切れ味MAXな短剣で、薄くすけるほどリボンのように削ってみた。
見た目は花削りのようにできて、目をキラキラさせている奏歌と味見した。
「「んんんん~!!!!」」
まさに鰹節!それも最高級の本枯れ鰹節!
「これ、たくさんあるの?」
「ああ。」
と箱に一杯入ってるものを5箱……使い道わからないのに……5箱……だって、1箱にも100本以上ありそうなのに……5箱って。
「いや、その。コレ売ったやつもさあ、故郷に帰る金も稼げねえって困っててよ?ついノリで……。」
ん、前言撤回……商人としたら……お人好しすぎるよ……。仕方ない。でも、のりで買うのはやめたほうがいいと思うよ。
「で、1箱いくら?」
「レシピを教えてくれんなら、1箱やるぞ?」
「太っ腹!これをこーして……。」
海苔の時と同じで加工して売ったほうが儲かる旨を教えた。
おじさんにはぜひまた、私の欲しい物を仕入れてほしいものだ。………おじさんには運命を感じる。
後におじさんの販売したものでマイマイの実の価値まで上がっていくのは、また別のお話。
「2箱ほしいから………1箱はいくら?」
2箱分払ってもいいけど。そこはおじさんとのビジネスだからね。
「おお、そうだな。1000クルーでいいか?」
「いいの!?」
だって、本枯れだよ?カビもしっかりついてるし!高級なんだよ?
日本なら一本でも5000円くらいしちゃうかもだよ?
それが!1000クルーって。……おじさん、商人向いてないかも。
「お嬢ちゃんに聞かなきゃ、ただのゴミになるとこだったからな。また、来てくれよ。」
「うん、ありがとう、おじさん。」
私は本物の鰹節を手に入れ上機嫌。
あとは、お酢とかスパイス系を見つけられたらいいなあ。んー、いつかカレーをって。
きっと、日本人の異世界あるある欲望だよね!
かなりの食材を買い、ほくほくと市場を後にした。
夕飯はいつもの雑多あふれるお店。初めて名前を知りました。
……『聖女のひざもと』なんだって。ははは。
食事のあとみんなが送ってくれて、奏歌とラナンと3人で女宿にはいった。
帰り道……ロドリヌスにみんなに聞こえないように耳に囁かれた。
『いつか……教えてくれ……。』と。
でも、ロドリヌス……私は……誰にも知られたくないんだ……………………。
そう、誰にも……………………。
――――――――――――――――
Sideロドリヌス
ロドリヌスは帰り道でおもう。彼女はわかってくれただろうか?と。
ソカにも言えず、多分一人で抱え込んでいる何かが………ショウにあることはわかっている。
多分だが………たぶんあの時、そこに”闇”が漬け込んだんじゃないかと。
気がかりがもう一つ。
夫、つまりはソカの父親については一つも出てこない。それが死別なのか………破局しただけなのか?
ショウが女神のような力を持っていても………ソカがいる以上………考えたくもないが相手がいたはずなのだから。
まあ、誰が相手でも決して渡しはしないが。
「いつか、全部はなしてくれたらいいわね?」
ミリも気づいていたのかポツリとつぶやきかけてきた。
「そうだな……。」
「一筋縄じゃいかなそうねえ?」
「そうだな……。」
「天下の勇者様もかたなしねえ?」
「元な?それはお前らもだろ?」
「まったくだ。」
「あの2人には、勝てないよ。」
「でも、いつか話してくれるように………、信用を勝ち取るしかないな。」
「そうね。まあ、とりあえず。一緒に暮らせるところまでこぎつけたし、ソカが成人したのだもの。ガンガンいくことにするわ。」
「ショウの守りは堅―ぞ?」
姉ではなく、娘だということでショウの過保護さは納得できた。あれは、妹が姉を守る雰囲気ではなかった。
母が娘を………で納得した。自分の命をかけて守るべき存在なのだと。
「そこは、ロド様とハリーが頑張ってくれなくちゃ。それでなくてもラナンに一歩先行かれてる気がするんですもの。」
「まったくだ。ソカには俺が先に会ったのに!」
「俺たちが保護したのにな。………まあ、負ける気はないがな。」
「返り討ちにしてやるが?」
とりあえずは、ショウが育つまでになんとしても信頼と愛情を………。
あいつを護るのは絶対俺なのだから。
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