娘と二人、異世界に来たようです……頑張る母娘の異世界生活……ラブ少し!

十夜海

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第三章 異世界を満喫する

No.6

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およよよ……まさかまさかのまさかり担いだ金太郎!
って場合じゃない。
なんで?
何故に?
どーして?
いや、歌ったよ?翼が欲しいって。
でも、それは歌だよ?
まあ、ついつい?昔の感情が蘇っちゃったとこあるけどさあ。
今更じゃない?今は魔法があるし……まあ、だからこんなことになってんのか?
……天使ねえ。はあ……。

「ロドさん、離して大丈夫だよ。飛んでく気ないから。」
「だが……。」
「大丈夫だから。」
「ロドさん、私も大丈夫だと思うよ?ママが私を置いていくのは考えられないから。ね?」

うんうん、と私が頷くとようやく納得したのか……と思ったが、私を下に降ろし手だけは離さなかった。
そんな、捨て犬みたいな目で見ないで欲しい。
って言うか、本当に羽生やすとか、すごく痛い奴じゃない?
いや、多少ヲタク気味なのは、認めるよ?でもさあ、この歳で天使みたいに羽根って……やばいコスプレ患者だよ。って、今子供か……。

「本当に飽きなさせない子ねえ。」
「はあ……すいません。」

そう言われてもなあ。
んー、羽根よ、邪魔だから引っ込めー!

「あっ。」

お?見えない?引っ込んだかな?やったね。

「小さくなった。」
「は?」

んー、どうやら無くなったのではなくて、小さい羽根になったみたいだ。
奏歌曰く、よくお祭りとかに売ってるゴムに腕を通して、リュックみたいにしてつける翼くらいなんだそう。まあ、さっきよりはまし?

「まあ、そのうち消えるんじゃない?」
「なら、いいが。しかし柔らかいし…ほのかに体温も感じるな。」
「うひゃあ、くすぐったいから、あんま触んないでよ~。」
「おい、感覚まであるのか?」
「え、あ、そうだね。うん、あるみたいだ。」

わさわさされるとザワザワってなる。くすぐったいような何とも言えない感じだ。
しかし、なんで生えたかな。まあ、歌のせいであるのはわかるんだけど、いまさらだし、
消えないってなんでだ?

「似合ってるけど、邪魔そうねえ。」
「ん、小さいけどね、確かに邪魔だよね。」
「そのうち、消えるかな?でもさあ、ママ。音程狂ってなかったよ?音痴治った?」
「え?私はいつも通りだよ?」

そもそも、自分では音程合わせて歌ってるつもりなんだからさ。

「じゃあ、それも異世界転生補正が入ってるのかもね?」
「え、うそ、ほんと?」
「うん、ママ、いつも『この大空に~』が『この大空に~』になるんだけど、完璧でした。まあ、ほかにもずれるとこあるんだけど、そこも完璧だったよ。ちょっとびっくり。」
「ほんと!なんかうれしい。じゃあ、カラオケで90点とかだせるかな?」
「それ以上いくんじゃない?」
「まじか……もどってカラオケ行きたい。」
「戻ったら、音痴も戻るんじゃない?」
「え?」
「だって、異世界仕様の体だし?」

ぐあああああ……確かに。
じゃ、誰にも音痴じゃない歌を聴かせることはできないのか。
この世界じゃ、みんな知らない歌になるから……音痴かなんてわからないし、カラオケみたいに点数で確認できないし……なんか、宝の持ち腐れ……。

「まあママ、歌は感動を呼ぶもの。聴いて共感して心を揺さぶるもの。誰か一人でも聴いてくれたなら、それでいい。音を完璧に取るのも大事だけど……そこに『心をのせる』ことが出来なければ、ただのBGMでしかない。って、先生がいってた。だから、いいんじゃない?心があったから……翼が生えたんじゃないかなあ?」
「すてきねえ、ソカの先生は。」
「うん。」

そう、かなり年配の先生で……奏歌が最後の弟子だと言っていた。
奏歌が高校合格を報告した1週間後に……入院してその3日後にこの世を去った。
まあ、私たちも先生から1か月もしないうちにあの世界を去ってしまったけどね。
でも、素敵な先生だった。

「そうだね。そう思うことにするよ。」
「あのな、ショウ。歌を止めちまって悪かった。すげーきれいで、本当に天使の歌声ってあるんだなと思った。……だからこそ、焦っちまったよ。置いて行っちまうんじゃないかとな。」

うわあぁぁぁ、なんてストレートに褒めてくんだあ。はずかしい。
顔から火が飛び出すんじゃないかと思うくらいに私は顔が熱いです。
羽が小さくなったので、定番とも思えるくらい自然にロドリヌスに膝抱っこされ、頭を撫でられたのだった。

「もも、私のことはいいから!ほら、ソカ!つぎつぎ!もう、歌ってよ。その間に沈静化して、羽引っ込むかもじゃん!」
「はいはい、もう、照れちゃってさ。でも、ホントこの世界の男子って、イケメン発言にてれないよね!」

うん、それは激しく同意です。

その後もちょこちょこつまみつつ、奏歌の歌を堪能した。
で、私も歌ったんだからっていうのと、この世界の歌が知りたいといった奏歌に頼まれて、みんなが一曲ずつ披露した。
……なんというか。
お経……。
お経……。
お経……。
お経……。
祝詞……。
グレゴリオ聖歌……。
でした。ちなみに強制的にシャルにも歌わせた。

え?だれがどれ?って?


……じゃ、一人だけグレゴリオ聖歌っぽくなっていたのは、ハロルドです。

どうやら、ハロルドはなかなかどうして、使える男のようですよ?

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