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第四章 異世界を自由に静かに……生きたい
No.7
しおりを挟むとりあえず中に入れたことだし……深く考えることはやめよう。
うん、やめてしまおう。
それがいい。
中はものすごーく人が多い。
市場がすごく活気がある。何というか、狭いところにひしめき合っているんだ。
……七夕やお祭り、初詣なんかの屋台がひしめいている感じと言ったらわかるかな?
そんな感じに生鮮なんかも並んでるんだ。
串焼きとかが美味しそう。
肉や魚が焼ける匂いって、よだれが出てくるよね。
特にこの……味噌焼きっぽい匂い!
私は何だろうと、匂いを嗅いだ。ちなみに、ロドリヌスに抱っこされているのは言うまでもない。
この人混みで、やつが私を野放しにするわけがない。
いや、人混みじゃないとしても……だな。
「ロド、あれ、あれ食べてみたい!」
「ん?アレか?ああ、よくお前が作る“やきおにぎり”に匂いが似てるな。」
そう!そうなんだよ。
たぶん、味噌焼きだと思うんだ!
あるじゃん、ソーの実を使った料理!
「あー……あれか……。」
「うーん、あれか。」
「たぶん、ショウの考えてる味じゃないとおもう。」
「え、そうなの?」
「そうなのか?俺も知らないが。」
「まあ、ロドさんもある意味引きこもりじゃん?ママと一緒に。
たぶん、なんだけどねえ、聞いてなのか……わからないんだけど、王都の黒猫亭の味噌焼きおにぎりとかねー、真似したっぽいんだよね。ただ……。」
「匂いだけなんだよな。」
「うん。」
「美味しくないの?」
美味しい味付けは少ないとはいえ、素材自体は美味しく食べれるものもある。だから『飽きる』ってことを考えなければ、塩だけでも美味しく食べれるんだよね。
どちらかというと、スープとかのが出汁文化が無い分……マズイかもしれない。
「味は味噌って言うか、ソーの実じゃないの?」
「……食べてみたらわかるよ。」
というわけで屋台にレッツゴー。
「親父、とりあえず4本くれ。」
奏歌たちは遠慮するとのことで、ロドリヌスとアスカ、ティアとわたしの分を買う。
「ぐふぉっ……うう、なんで……。甘いの?」
「食えなくはないが、美味くねーな。」
「肉だから大丈夫―。」
「肉だからおっけー。」
さすが、肉食獣たち。
肉であれば、とりあえず味は我慢できるようだ。
わたしには無理だ。
もったいないからとアスカがペロリと食べてくれた。
これなら塩で焼いた方がいいとおもう。
名前はなんと……王都焼き。
王都を冒涜してはいまいか?
心配になる味だ。
だが、貴族たちにはウケているというからさらにびっくりだ。
しかしなんと味を表現したらいいのだろうか。
強いて言うなら、塩辛に蜂蜜とイチゴジャムをトッピングして焼いたうえにレモンと一味をふりかけたような味。
分析したら……余計気持ち悪くなってしまった。
「ショウの飯がうますぎるからな。
まあ、この程度の味ならまだましだぞ?」
「マジで?」
「あー、ラナンも言ってた。」
「食えるだけマシだろ?」
いや、売り物としてそれはどうなんだ?
と、わたしは言いたい。
「まあ、屋台なんてそんなもんだぞ?腐った肉やまずい肉を使ってないだけマシだろ?」
「……考え方が根本的にも違うよ……。」
でも、と思う。このピリッとした一味の味の分が調味料なら、それはほしいと思う!
「ロド、さっきのお店にもう一度行って。味で一つ知りたい。」
「また、食うのか?」
「いや、食べないし!」
ということで、行ってもらった。
そこで、一味の味にについて聞いた。
見せてくれたのは、ピリピリの実という赤いパチンコ大の実。
潰すと中から胡麻くらいの大きさの赤い種が出てくるらしい。それがピリピリした辛味だという。
肉の保存に使うんだとか。
この地方は割と暖かく湿度が高いらしく、肉が痛みやすいんだとか。ピリピリの実につけて保存すると良いんだとか。
この町の野菜や肉を扱っているところなら、どこでも買えるらしい。
良いことを聞きました!
焼き鳥に一味!サイコーですよね。
無難な肉の串焼きをかって、全員で食べたり、クレープみたいな肉ハサミパンとかもあった。
でも、やっぱ塩胡椒なんだよね。
そうそう、この世界、塩と胡椒はよく取れるらしく、どこでも安めで手に入る。
砂糖に近い糖飴も塩の10倍とはいえ、貴族しか無理というほどじゃない。大量には使えないとは言ってもね。
そんな中で、醤油の匂いがした。
私からすると10歳くらいかなあ、小学校高学年くらいの子が二人で、何かを煮ている。
それをさっき売っていたクレープを厚めに焼いたものにくるんで渡していた。
匂いからすると醤油。つまり、シュを使った料理っぽい。
さっきのパターンもあるからな。
「あれは、前に来た時はなかったよ。」
「そうなの?」
「うん。」
「じゃ、買ってみる?」
「あたいが買ってくるよ。とりあえず、ソカとショウだけでいいか?」
「アスカも!」
「ティアも!」
「だとよ。」
「あいよ!」
程なくして、包みを四つ持ったラナンが戻ってきた。
「なかなか、うまそうだが……ダメならあたいが食うよ。」
「うん。じゃ、いただきます。」
匂いからすると甘辛く煮込んだ感じ?
アグリと一口。
うっまー!たぶん、シュと糖飴?糖飴じゃないかなあ?でも、似た感じ?
あと、お酒!でつゆだくに柔らかく煮てある。それもたぶん、安いスジ肉を。だからトロトロで、生野菜にタレが染みていて、クレープ部にも少し染みてる。でも、漏れてくるほどじゃない!
これはっ!この世界で初めてうまい!って思う。
「うまいのか?」
「うん!食べてみる?」
「いいのか?」
「うん、はい。」
え?間接キス?
……今更ですよ。既に彼はわたしの食べて残したものを残したことはない。
それになあ、キスはされてるし……まあ、チューくらいはパパ代わりに……受け入れてしまっている。
う、かなりほだされてる感はある。
まあ、そのあと、ティアやアスカにもペロペロされてしまうので、感覚的には同じ!ってことで。
「ん、これは、うまいな。」
「本当かい?」
「すごく、美味しい。」
「そりゃ、すごい。じゃ、また買ってくるよ。」
とラナンがまた買いに行った。
戻ってきたラナンの手にはたくさんのクレープが……いくつ食べる気なんだ……ラナン。
屋台を見ると、ニコニコと手を振ってから片付けはじめる子供二人の姿が。
どうやら、全てお買い上げしてきたらしい。
これで5クルーならお得だと思うんだ。
私は半分でお腹いっぱいになったけど、奏歌は一つ丸々食べきっていた。
残りはロドリヌスが食べましたよ。
で、シャルも食べたいというので空間収納に一個入れて(流石に町中でシャルをいきなり出せないからね)、残りは皆んなが取り合うように、食べきってました。
……10個以上あったよね?
宿屋には三日ほど泊まる予定です。
奏歌がお城に行く日らしいのですよね……。
チッ、ミリオンめっ!
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