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第四章 異世界を自由に静かに……生きたい
No.9
しおりを挟む「ギャハハハハ……そ、そんなことがあったんだー。うけるー。」
奏歌が帰ってきて、何をしていたかと聞くので、子供を助けた話をした。
そう、そして現在大笑い。
なぜだ……。
ようやく奏歌が、笑いの発作を引っ込め落ち着いた頃にハロルドがボソリという。
「しかし、ショウがあんなに怖いとは思わなかったぜ?」
「あー、ママは子供や動物への虐待は許したくない人だし……でも、よくママ、その人の大声に耐えられたね?」
「うーん。怒りが先に勝ったから?かもね。」
「まあ、慣れもあるか。ギルド行くと騒がしいし、喧嘩もよくあるしね。」
「しかし、お仕置きの仕方がこえーぞ?」
「んー、まあ、ママも染まりつつあるんじゃない?この世界に。」
「いや。何度も癒して繰り返すっつーのは……。」
「はは、心が折れそうだよね。」
「いーじゃん、折っちゃえばさ。ついでにあそこも折ればよかったのに……。」
「まあ、落ち着け。母親も治して働けそうだし。アイツはとりあえず、王都の牢屋だ。だが……ショウの話だと病気なんだろ?」
「うん。たぶんね。母親の方はたぶんまだ二期くらいの症状だったから、わりと魔力も少なくてすんだよ。でも、あの男の方は三期に進んでる感じがあった。男が元気なのはきっと、体力と元々の体の差だろうな。
母親は、かなりひどい栄養失調だったしね。そっちのが、ひどかったもん。
そうそう、あの子たちってあの美味しいサンド買った子たちだったんだよね。
ね?ラナン。」
「ああ、なんでも母親がまだ動ける頃に作ってくれた味だそうだよ。」
「そ、で、その売り上げを全部取り上げようとしたんだよ?許せる?許せないでしょう?」
「ひでー。最低だね!子供に寄生する親なんて!」
「だしょ、だしょ?」
「うん!ママが怒るのは正解だと思う!」
「まあ、安心しろ。たぶん二度と戻ってこれねーから。」
「「うん。」」
とりあえずは、お互いの報告も済んで、今日一日はゆっくり……するはずが。
「じゃ、その子たちの陣中見舞いに行こう!」
という奏歌の一言で、またあのサンドを買いに行くことにした。
まあね、あのサンドイッチは美味しかったしね。
「おねーちゃん!」
「天使様!」
「だから、ちがうし!」
「あははは。まあ、しゃーないしゃーない。」
奏歌が私の肩をぱんぱんと叩きながらいう。
奏歌……なんだか、ばば臭いぞ?
なんだか、酔っ払いのようでもある。
「昨日は、母さんも助けてくれてありがとう!」
「お母さんは?」
「病み上がりだから、今日は家で大人しくしとけって、言ってきた。」
「そうなんだ。」
「ふたりで、だいじょーぶだの。」
「そっか。お兄ちゃん、優しいもんね?」
「うん!」
「や、優しいのは天使のおねーちゃんだ。」
「あは、天使は余計だけどありがとう。で、コレを人数分頂戴な。」
「毎度あり!本当は、お礼に渡したいんだけど……。」
「いいって、いいって。美味しいから買いにきたんだし。」
「そうそう。」
「め、女神様?」
「おや?私が女神に見えるの?」
「はい!」
「なら、サービスせねば!」
「おーい?」
くるりと人の多い通りに向かって、奏歌が声をかける。
「みなさーん。このサンドイッチはとっても美味しいですよー。なんと今買っていただけて、売り切れたなら!
遠い王都の『黒猫亭』の声楽家ソカがこの場で歌います!」
……おーい。
目立ってますよ?
しかし、目立ってナンボよと言っていた奏歌……さすがですな。
「おい、黒猫亭って!」
「貴族もなかなか行けないとか?」
「そうそう。」
「そこの歌い手だろ?ソカって。」
「ばか!ソカ様だ。女神様だぞ?」
「なんで、こんなとこに?」
「いや、それより、買わなきゃだろ?」
「「「「だな!」」」」
ほー、さすがに知ってる人が増えたなあ。
こんな離れた場所……ああ、そうでした。私の絵を持ってる奴がいるんだもんな……。
ちろりとラナンたちを見ると、いつものことなのか……気にしていない。
しかし、まだ歌い手として有名ならよいかもしれない。
え?だって、次期王妃として名前が発表されているんだよ?
誰も、王妃とは言わないのはある意味、暁光かもしれない。
だって、反ミリオン派ってのはいるようだしねえ。
その軍団からしたら、飛んで火にいる夏の虫って感じじゃない?
でも、今名前が売れているのは、黒猫亭の歌い手ソカ!
ってことで。私からしたら嬉しい。
だって、一応、世界は変わったけど夢の一つは叶ったってことじゃん?いつか、この世界にたくさんの歌ができたらいいよね?決してお経なんかじゃなくさ。
そして、瞬く間にサンドイッチは売れた。サンドイッチと言っていいのかは、わからないが……。
早く売れたらそれだけ早く、お母さんの様子を見に行けるもんね。
それに、美味しいからか、一つ買って食べた人がもう一つ買っている。
これならずっと売れて行けそうだ!
周りにいた屋台の人も相乗効果でガンガン売れているしね。
これなら、子供達に難癖つける人はいないだろう……。
いたら、相手になってやるぞ?
「さて、売り切れになったみたいです。では。私、黒猫亭ソカの歌をぜひ、お聴きくださいませ。」
私は、素早くスマホを起動した。
録音機能とかはあったので、そこにソカのピアノ伴奏が入っている。
ここにピアノはないしね。
もちろん、アカペラでも問題ないけどさ、やっぱり曲付きのが盛り上がるじゃない?
でもね。
歌を聴きながらさあ、ふと思ったんだよね。
たぶん?
なんだけど、うちらチートじゃない?
いや、まごうことなきか。
特に私はなんでか、かなり色々と神様からもらって、話だと一応強めの魔法を奏歌にもくれていた。
まあ……何を基準にしたのかわからないけど、奏歌もチートでおかしくないだろう。
でもね?
さらに奏歌は、歌というか音楽に関して超チートになっているんだよね……。
たぶん、絶対音感があっても無理なんじゃないかというくらい音楽にチートというか天才なのさ。
いや、その親バカって言われたらそこまでだけど……さ。
でもね?
何度か観に行ったオペラとか、オペラのDVDとか声楽家のCDとか……一度しか聴いたことないような曲や一度しか見たことない楽譜を弾いたり歌うことができるのはチートだろう?
って思うんだけど。どうよ?
だって普通なら、ありえないでしょ?
ただ、私が聴いてるだけなのでどこまで正確かはわからんけども?
でもね、全く違和感はないんだよ。
私も一緒に見たからさ。
聞いただけで習っていないはずの歌も完璧っぽいんだよね。
……天才超えてるでしょ?
まあ、もしかしたらそんな凄い人も、地球にいたのかもしれないけど……。
私は凄いなって思う。
今もさ、年齢的に難しいらしいシンデレラのアリアだしね……。
はっきり言って、家では何度か聞いただけの曲なんだよね……。
まあ、そんなで青空リサイタルは、少し通行には迷惑かけてしまったけど、好評でしたよ。
だって、注意に来た警備兵も聞き惚れてましたから。
皆が笑顔で拍手喝采!
さすが、我が娘だね!
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