120 / 124
第四章 異世界を自由に静かに……生きたい
No.10
しおりを挟む何ともあれ、路上リサイタルは大好評で終わった。
だが、わかるよね……。
これだけ派手にやってしまうとね……目立ってナンボと言いつつも……目立ちすぎますよねー?
まあね?
警備兵は、終わりと共に帰っていっていれたんだけどもさー。
目立ったらめんどくさい者がやってくるわけで……。
「そこの者、領主様がお呼びだ。」
と上からの呼び出しが来ましたが……ムカつきますよね?
名乗りもせずにですよ?
それも、すんごい上から目線ってやつですわ。
「領主ねえ……?だが、断る!」
一度言ってみたかった!
領主だろうがだれだろうが、関係ねーったらねー。ってやつですわ。
「は?!」
派手騎士は断られることを全く考えていなかったようで、口ポカになっているが……それもどーでもいいことだよね?
だって、義理もないし。
とりあえず、断りをいれたことだし、うちらはその領主とやらに命令された派手な騎士と沢山の騎士を無視することにした。
だって、知り合いじゃないし、知り合いに思われたくもないし。
「さて、宿屋に帰るか?」
「うん。そうだね。」
「目的は果たしたもんね。」
あえて、子供らには声はかけないことにした。
だって、知り合い程度なのに目をつけられたら大変だもんね。
その場を後にしようとしたら、派手騎士が顔を真っ赤にしている。
どうやら、無視されていることに気づいたようだ……脳筋なんだろうか?
やっぱり。
脳に回るまでが遅くないですか?
「な、何を!我らを無視するな!」
頭から湯気が出そうなくらい更に真っ赤っか!
だがしかし、うちらはスルーだ!
「ロド、帰ろう。」
「そうだな。……予定を早めるか?」
「そうだね。」
「うん、私は元気いっぱいだからいいよー。歌ってスッキリ。」
「そうだな。面倒そうだし。さっさと出るか?」
「おい!おおい!我を、我らを無視するな!不敬者め!みな、ひっ捕らえろ!」
って、お前は悪代官か?
そもそも、どちらが不敬かだよね。
次期王妃に、元々勇者(それも未だに国王からの絶大な信頼を寄せられているらしい)ですよ?
ちなみに、宰相からもらったメダルも貴族から難癖つけられない効果があるらしいんだけど……歓迎と称して舞踏会やらが開かれてしまう恐れを孕んでしまうらしい。
舞踏会じゃなく、武道会なら出てみたい気もする……目立ちそうだから出ないけど。
なので出来る限り使いたくはない。
でもだからって、まともに相手にする気がないので、さっさと歩きだすことにした。
もちろん私は安定のロドリヌス抱っこでだが。
それも片手ね……。子供抱っこってやつ。
ティアとアスカは、何やらぶつぶつ言っている。
よく聞くと、『あいつら、臭いね』とか、『嫌な臭い!』とか言っていた。
まあ、それは同感だ。
なんだろう。体臭を無理やり香水で誤魔化した臭い。
はっきり言って臭いです。
クリーンが下手なのかもしれない。
前にラナンが言っていたなあ。
クリーンの精度で魔法操作の力量がわかるって。
魔力少なめでも操作に長けている者は、少ない魔力で効率よく精度の高いクリーンが出来るとか。
『だから、あたいは苦手でねー。』って。まあ、基本的に側にいれば奏歌かわたしが強制的にクリーンしてしまうけどね!
「おのれー!さっさと捕らえろ!」
とつらつら考えていたらば、あー、逆切れた?らしい。
……面倒だなあ。
と思ったら……奏歌が歌い出した。
……子守唄だ。
優しく眠りを誘う歌。
広範囲の魔法の歌。
でも、対象者にしか効かない歌なんだよね。
魔力の色が見えるロドリヌス曰く、歌の調べにのって、奏歌の魔力が相手に絡みつくんだとか。
だから、対象者じゃない人にはただの綺麗な子守唄にしか聞こえない。
目の前でパタパタと騎士が倒れて眠っていく。
……すごいな!
「ふふふん、ご清聴ありがとうございました。……ってか?」
「……さすがです。」
「まあね。だって、さー。パティくんで戦うと、後衛ばっかなんだもん。こーゆー魔法ばっか、得意にもなりますって。」
「器用だな、ソカは。……ショウも少しは見習え?」
「えー!まさかの飛び火?」
「うーん?どーゆー意味?」
「ショウはな、眠りの魔法やら回復の魔法やらの広範囲魔法は……敵味方関係ないんだよ。」
「つまり?」
「……魔獣を癒すことは魔獣やティマーにしかできない。が、ショウはティマーでもないのに、出来るのは知ってるな?」
「うん。」
「魔獣と戦って、相手が闇属性ならいいんだが……魔獣は魔物とは違う。だから、ほとんど光魔法の癒しが効いてしまうんだよ。」
「つまり、敵対象も癒すと。」
「そうだ。」
「眠らせると味方も寝ちゃう?的な?」
「そうだ。」
「……眠らせるのはわたしの前に位置する者だけになったもん。」
「……つまり。後衛にいたら味方全員、寝ちゃうわけね?」
「……うん。」
だってねー、難しいんだもん。
「その話、今必要?ないよね!
うん、絶対ない。
だから、起きる前に移動しようよ!」
「誤魔化したね?……でも、そうだね。さっさと移動しよう!」
「うんうん。」
誤魔化してなんかいないよー。
だって、起きたらマジ面倒じゃないですかっ!
「じゃ、さっさと宿を引き払って出発しよう。」
「「臭いからっ!はやくいこー!」」
とさっさと宿屋に戻り、今夜の泊まりを取り消して出発することにした。
……追いかけてこないことを祈る!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,415
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる