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第一章
いよいよ合宿が始まる、はず……。#01
しおりを挟む十月に入ると今までの暑さと一変して急に秋を通り越して冬のように寒くなる。
特に朝晩は今まで半袖で余裕ぶっこいていたのが嘘のように寒く、季節が一気に進んでしまったのだと実感する。
そんな十月中旬のある土曜日。
早朝五時から私は小さめなキャリーケースをカラコロ転がしながら田無駅へと向かっていた。
そう、今日は合宿初日の朝なのである。
集合場所は事務所前に朝の六時厳守。
始発に乗ってもギリギリ間に合うか間に合わないかの瀬戸際だが、遠方組のように前日から近場のホテルに泊まるのもなんか違うような気がしたのでこうして駅へ向かって歩いている。
なんか集合時間に悪意を感じると思いつつ、予定表に目を通すと一泊二日なはずなのに、解散が月曜朝の五時とか鬼畜なことが書かれていた。
あの月曜日、普通に学校あるんだけど……。
一泊二日とはなんだったのか……。
まあ、そんなことを今更言っても仕方があるまい。
人が疎らな田無駅の改札を通り抜け、上りホームで電車を待つ。
しばらくすると黄色の準急列車がホームへと滑り込んできた。
プシューッと空気式の銀色のドアが開き、空席が目立つ車内ではオレンジ色のふかふかの座席が出迎える。
「おはようさん、カラカナ」
「……おはよう」
疎らな車内に見知った顔を見つけその隣に腰を下ろす。
「いよいよ、始まるんやな――うちらの青春の一ページが」
「……あーはいはい」
「なんやテンション低いな。もっとぐいぐいテンション上げていかなあかんで」
車内であることを考慮してか、小声なのに力強く高峰が告げてきた。
なんで朝からこんなに元気なんだ、こいつは……。
「…………」
正直返事が面倒なので寝たふりをして誤魔化す。
しばし名残惜しそうに私の顔を覗いたりしてたけれど、二、三度電車のドアが開閉する頃には諦めたのかスマホをぽちぽち弄り始めた。
そして、私は寝たふりのつもりが、マジで眠りについてしまったのだった……。
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