氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~

放浪人

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第五話:初めての嫉妬と芽生える決意

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王都での噂やイザベラ様の視線が、わたくしの心に小さな影を落としていた。
アレクシス様との穏やかな日々は続いているけれど、ふとした瞬間に不安が胸をよぎる。

そんなある日、アレクシス様の元に、騎士団からの使者が訪れた。
使者は、アレクシス様の信頼する部下である若い騎士、カイン殿だった。

「副団長、お加減はいかがですか」
「ああ、カインか。変わりない。それより、団の方はどうだ?」

アレクシス様とカイン殿は、書斎で何やら話し込んでいる。
わたくしは邪魔にならないように、そっと薬草茶を運んだ。

「失礼いたします。アレクシス様、カイン殿、お茶をどうぞ」
「おお、リリア殿、いつもすまないな」

カイン殿は、にこやかにわたくしに礼を言った。
彼はアレクシス様のことを心から尊敬しているようで、その眼差しは真っ直ぐだ。

アレクシス様は、カイン殿と話している時、普段よりも少しだけ表情が和らぐように見えた。
それは、心を許せる相手に見せる、特別な顔なのかもしれない。

(わたくしには、見せない顔……)

そう思った瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。
これは……嫉妬、なのだろうか。

アレクシス様の特別な存在になりたい。
けれど、わたくしにはその資格がない。
そんな思いが交錯し、苦しくなる。

カイン殿が帰った後、アレクシス様はどこか疲れた様子でため息をついた。

「王都では、色々な憶測が飛び交っているようだ」
「……そう、なのですか?」

わたくしが恐る恐る尋ねると、アレクシス様は静かに頷いた。

「俺が任務を離れている理由について、よからぬ噂を流す者もいるらしい。……まあ、いつものことだが」

彼の言葉には、諦めと、ほんの少しの苛立ちが滲んでいるように聞こえた。
きっと、彼の立場は常に多くの目に晒され、様々な思惑の中で揺れ動いているのだろう。

「アレクシス様……」

わたくしは、何か言葉をかけようとしたけれど、適切な言葉が見つからなかった。
ただ、彼の隣に寄り添い、その手をそっと握ることしかできなかった。

アレクシス様は、驚いたようにわたくしを見た。
そして、わたくしの手を弱々しく握り返し、ぽつりと言った。

「……リリア殿。お前がいると、心が安らぐ」

その言葉は、まるで魔法のように、わたくしの心の中の不安を溶かしていく。
彼の温もりが、握られた手を通して伝わってくる。

ああ、やっぱり、わたくしはこの人が好きだ。

どんな困難があっても、この人の力になりたい。
この人の笑顔を、守りたい。

その想いが、胸の奥から強く湧き上がってきた。

「アレクシス様。わたくしは、薬師として、あなた様のお力になりたいと心から願っております。わたくしにできることなら、何でもいたしますわ」

それは、わたくしの偽らざる気持ちだった。
身分違いの恋だとしても、この想いを諦めたくない。

アレクシス様は、わたくしの言葉をじっと聞いていた。
そして、力強い眼差しでわたくしを見つめ、言った。

「……ありがとう、リリア。その言葉だけで、十分だ」

彼は初めて、わたくしのことを「リリア」と、名前だけで呼んだ。
その響きが、わたくしの心に甘く、そして切なく響いた。

この時、わたくしは密かに決意した。
アレクシス様の古傷の呪いを解く方法を、必ず見つけ出す、と。
それが、わたくしにできる、彼への最大の貢献のはずだから。

たとえそれが、どんなに困難な道だとしても。
わたくしは、もう迷わない。
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