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第23話:残された者たちの末路
王都を離れる前日。
私たちは、最後のけじめをつけるため、ある場所を訪れていた。
王城の、地下深くにある、冷たく、湿った牢獄。
光も届かない、絶望だけが満ちる通路の先に、その二人は、それぞれ別の牢に、入れられていた。
「……何の用よ。私を、笑いに来たの?」
鉄格子の向こう側で、リナが、荒んだ目で私たちを睨みつけた。
髪はぼさぼさで、着ているのは汚れた囚人服。
あの日の、きらびやかな聖女の面影は、どこにもない。
ただの、みすぼらしく、そして哀れな囚人だ。
「お前たちの、最終的な処分が決まった。それを、伝えに来てやった」
カイが、温度のない声で、事務的に告げる。
「リナ・フォン・リンドバーグ。貴様は、聖女詐称、及び、国家転覆未遂の大罪により、終身、北の『黒薔薇修道院』へ幽閉とする」
「……なっ!?」
リナの顔が、絶望に染まる。
黒薔薇修道院。
それは、凶悪な罪を犯した貴族の女たちが、更生の名の下に送られる、この世の地獄と呼ばれる場所。
一度入れば、二度と外の世界へは出られない、生きた牢獄だ。
「いや! いやよ! そんなところ、死んだ方がマシだわ! 汚くて、臭くて、貧しい場所なんて!」
「案ずるな。死ぬほどの苦しみを、生涯、たっぷりと味わわせてやる。それが、お前の犯した罪への、当然の報いだ」
カイの、容赦のない言葉。
「お姉様! お願い! 助けて! 私たち、姉妹じゃない! 血は繋がってなくても、家族だったじゃない!」
リナが、今更になって、私に泣きついてくる。
その見苦しい姿に、私の心は、もう、何も感じなかった。
ただ、冷たく、凪いでいるだけ。
「……いいえ」
私は、静かに首を横に振った。
「あなたは、私の妹ではありません。私の人生を狂わせ、多くの人を傷つけた、ただの悪魔ですわ。あなたの罪は、あなた自身で、一生かけて償ってください。……さようなら」
私の、最後の、決別の言葉。
リナは、がくりと膝から崩れ落ち、鉄格子を掴んで、獣のように泣き叫んだ。
私たちは、そんな彼女に背を向け、隣の牢へ向かう。
そこには、エドワード様が、廃人のように、力なく座り込んでいた。
「エドワード・クライネルト」
カイが、もう殿下とはつけずに、彼の名前を呼んだ。
彼は、ゆっくりと顔を上げる。その瞳には、もう、何の光も宿っていなかった。
「貴様は、王位継承権を完全に剥奪の上、西の国境にある『忘れられた砦』へ、一騎士として配属とする。そこで、生涯、国のために、その身を捧げろ」
「……そうか」
彼は、ただ、力なくそう呟いただけだった。
王太子から、名もなき一介の騎士へ。
彼にとって、それは、死刑よりも、遥かに辛く、屈辱的な罰かもしれない。
「……アリア」
彼は、最後に、私の名前を呼んだ。
「……幸せに、なってくれ」
その言葉は、初めて聞く、彼の心からの、本心からの言葉のような気がした。
「……はい」
私は、小さく頷いた。
もう、彼を憎む気持ちも、憐れむ気持ちも、なかった。
ただ、一人の、大きく道を誤った人間として、彼の未来に、ほんのわずかな救いがあることを、心の片隅で、祈った。
これで、本当に、すべてが終わった。
長くて、辛い、復讐劇は、静かに、幕を閉じたのだ。
牢獄の冷たい闇を後にして、私たちは、光の差す地上へと向かう。
明日になれば、私たちは、ヴォルフガント領へ帰る。
そこには、温かい人々が、私たちの帰りを待っている。
そして、何よりも、愛する人が、隣にいる。
これからは、もう、後ろを振り返らない。
前だけを向いて、幸せになるんだ。
そう、固く、心に誓った。
私たちは、最後のけじめをつけるため、ある場所を訪れていた。
王城の、地下深くにある、冷たく、湿った牢獄。
光も届かない、絶望だけが満ちる通路の先に、その二人は、それぞれ別の牢に、入れられていた。
「……何の用よ。私を、笑いに来たの?」
鉄格子の向こう側で、リナが、荒んだ目で私たちを睨みつけた。
髪はぼさぼさで、着ているのは汚れた囚人服。
あの日の、きらびやかな聖女の面影は、どこにもない。
ただの、みすぼらしく、そして哀れな囚人だ。
「お前たちの、最終的な処分が決まった。それを、伝えに来てやった」
カイが、温度のない声で、事務的に告げる。
「リナ・フォン・リンドバーグ。貴様は、聖女詐称、及び、国家転覆未遂の大罪により、終身、北の『黒薔薇修道院』へ幽閉とする」
「……なっ!?」
リナの顔が、絶望に染まる。
黒薔薇修道院。
それは、凶悪な罪を犯した貴族の女たちが、更生の名の下に送られる、この世の地獄と呼ばれる場所。
一度入れば、二度と外の世界へは出られない、生きた牢獄だ。
「いや! いやよ! そんなところ、死んだ方がマシだわ! 汚くて、臭くて、貧しい場所なんて!」
「案ずるな。死ぬほどの苦しみを、生涯、たっぷりと味わわせてやる。それが、お前の犯した罪への、当然の報いだ」
カイの、容赦のない言葉。
「お姉様! お願い! 助けて! 私たち、姉妹じゃない! 血は繋がってなくても、家族だったじゃない!」
リナが、今更になって、私に泣きついてくる。
その見苦しい姿に、私の心は、もう、何も感じなかった。
ただ、冷たく、凪いでいるだけ。
「……いいえ」
私は、静かに首を横に振った。
「あなたは、私の妹ではありません。私の人生を狂わせ、多くの人を傷つけた、ただの悪魔ですわ。あなたの罪は、あなた自身で、一生かけて償ってください。……さようなら」
私の、最後の、決別の言葉。
リナは、がくりと膝から崩れ落ち、鉄格子を掴んで、獣のように泣き叫んだ。
私たちは、そんな彼女に背を向け、隣の牢へ向かう。
そこには、エドワード様が、廃人のように、力なく座り込んでいた。
「エドワード・クライネルト」
カイが、もう殿下とはつけずに、彼の名前を呼んだ。
彼は、ゆっくりと顔を上げる。その瞳には、もう、何の光も宿っていなかった。
「貴様は、王位継承権を完全に剥奪の上、西の国境にある『忘れられた砦』へ、一騎士として配属とする。そこで、生涯、国のために、その身を捧げろ」
「……そうか」
彼は、ただ、力なくそう呟いただけだった。
王太子から、名もなき一介の騎士へ。
彼にとって、それは、死刑よりも、遥かに辛く、屈辱的な罰かもしれない。
「……アリア」
彼は、最後に、私の名前を呼んだ。
「……幸せに、なってくれ」
その言葉は、初めて聞く、彼の心からの、本心からの言葉のような気がした。
「……はい」
私は、小さく頷いた。
もう、彼を憎む気持ちも、憐れむ気持ちも、なかった。
ただ、一人の、大きく道を誤った人間として、彼の未来に、ほんのわずかな救いがあることを、心の片隅で、祈った。
これで、本当に、すべてが終わった。
長くて、辛い、復讐劇は、静かに、幕を閉じたのだ。
牢獄の冷たい闇を後にして、私たちは、光の差す地上へと向かう。
明日になれば、私たちは、ヴォルフガント領へ帰る。
そこには、温かい人々が、私たちの帰りを待っている。
そして、何よりも、愛する人が、隣にいる。
これからは、もう、後ろを振り返らない。
前だけを向いて、幸せになるんだ。
そう、固く、心に誓った。
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