偽聖女と蔑まれた私、実は【魔力鑑定EX】の持ち主でした~追放先で出会った無愛想な公爵様に見初められ、今更帰ってきて言われてももう遅いです

放浪人

文字の大きさ
24 / 32

第24話:ただいまと、おかえりと、祝福の輪

王都を出発して、数日後。
私たちは、懐かしいヴォルフガントの城へと、帰ってきた。
旅の終わりを告げる、高くそびえる黒い城壁が見えた時、私は、心の底から「帰ってきた」のだと実感した。

城門の前では、ゼバスさんをはじめ、城の使用人たちが、総出で私たちを迎えてくれた。
その列は、城門を越えて、城下町の方まで続いている。領民たちも、私たちの帰りを、今か今かと待ちわびてくれていたのだ。

「「「おかえリなさいませー!! カイ様、アリア様!!!」」」

割れんばかりの歓声と、祝福の拍手。
色とりどりの花びらが、空に舞う。
その顔、顔、顔が、心からの笑顔で、私たちの帰還を喜んでくれているのが、痛いほどに伝わってくる。

「……ただいま、ゼバス」

「ええ、ええ! お待ちしておりましたとも! 公爵様!」

カイの、ぶっきらぼうな挨拶に、ゼバスさんは、皺くちゃの顔で、涙を浮かべて喜んでいる。
そして、その優しい視線が、私に向けられた。

「アリア様。……いえ、これからは、奥様、と、お呼びせねばなりませんな」

ゼバスさんの、からかうような言葉に、私の顔が、カッと熱くなる。

「ぜ、ゼバスさん!」

「ほっほっほ。これは、失礼いたしました。いやはや、このゼバス、カイ様が、これほどお幸せそうなお顔をなさる日が来るとは……感無量でございます」

見ると、カイが、少しだけ、照れくさそうに、でも、とても嬉しそうに、微笑んでいた。
その笑顔は、領民たちの心を、一瞬で温かくしたようだった。

その日の夜。
城では、私たちの帰還と、正式な婚約を祝う、ささやかな、しかし、心のこもった祝宴が開かれた。
領内の有力者たちも招かれ、皆、私たちを心から祝福してくれた。

その中に、あの夜会で、私に敵意を向けてきた、クラリス嬢の姿もあった。
彼女は、私の前に来ると、深々と、本当に深く、頭を下げた。

「アリア様。先日は、私の嫉妬心から、大変、無礼な振る舞いをいたしました。私の、あまりにも浅はかな行い……どうか、お許しください」

「もう、気にしておりませんわ、クラリス様。私の方こそ、少し、意地悪な態度をとってしまいましたもの」

「そ、そんな……!」

「これからは、共に、このヴォルフガント領を、カイ様と一緒に、盛り立てていきましょう。あなたの力も、お借りしたいのです」

私がそう言って手を差し出すと、彼女は、ぱあっと顔を輝かせ、その手を、力強く握り返してくれた。

「は、はい! 喜んで! このクラリス・バーンズ、アリア様のために、いえ、未来の公爵夫人様のために、この身を捧げますわ!」

もう、この城に、私の敵はいない。
誰もが、私を、未来の公爵夫人として、温かく、そして力強く、受け入れてくれている。

宴が終わり、自室に戻る。
窓から、ヴォルフガントの、澄み切った夜空に輝く、美しい満月が見えた。

「……綺麗……」

「ああ」

いつの間にか、カイが、私の後ろに立っていた。
そして、そっと、私を後ろから抱きしめる。
彼の逞しい胸に、背中を預ける。その温かさが、心地いい。

「疲れただろう」

「いいえ。とても、とても、幸せな一日でしたわ」

「そうか」

彼は、私の髪に、顔をうずめた。その仕草が、とても愛おしい。

「アリア」
「はい?」

「……愛している」

耳元で囁かれた、ストレートな愛の言葉。
私の心臓が、甘く、高鳴る。
もう、この気持ちを、隠す必要なんて、どこにもない。

「……私も、ですわ。カイ。心から、あなたを、愛しています」

振り返って、彼の首に腕を回す。
自然と、唇が重なった。
それは、王都で交わした、初めてのキスとは違う、穏やかで、満ち足りた、安らぎのキスだった。

「おかえりなさい、カイ」

「……ああ。ただいま、アリア」

二人だけの、甘い囁き。
ヴォルフガントの夜は、優しく、静かに、更けていった。
ここが、私の還る場所。
私の、幸せの在り処。
感想 1

あなたにおすすめの小説

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

【結婚式当日に捨てられました】身代わりの役目は不要だと姉を選んだ王子は、隣国皇帝が私を国ごと奪いに来てから後悔しても手遅れです。

唯崎りいち
恋愛
結婚式当日、私は“替え玉”として捨てられた。 本物の姉が戻ってきたから、もう必要ないのだと。 けれど—— 私こそが、誰も知らなかった“本物の価値”を持っていた。 世界でただ一人、すべてを癒す力。 そして、その価値を知るただ一人の人が、皇帝となって私を迎えに来る。 これは、すべてを失った少女が、本当に必要とされる場所へ辿り着く物語。

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

婚約破棄された令嬢、実は隣国王子に溺愛されていました

かきんとう
恋愛
「リリアナ・エルフォード。貴様との婚約は、ここに破棄する!」 華やかな夜会の中心で、その声は高らかに響いた。 王太子アーヴィンの宣言に、会場はざわめきに包まれる。 私は静かに扇子を閉じた。 「理由をお伺いしても?」 努めて冷静に問いかけると、彼は鼻で笑った。

国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!! 隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!? 何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。 「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」 彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。 瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット! 彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる! その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。 一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。 知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!

婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました

おりあ
恋愛
 アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。 だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。  失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。  赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。 そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。  一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。  静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。 これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。