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第3話 実家は戦闘民族
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「さあ、入れエリー! 積もる話もあるが、まずは飯だ飯!」
父バルバロスが、私の背中をバシバシと叩く。 そのたびに「ドムッ、ドムッ」という重低音が響き、私の体は数センチほど前方に吹き飛ばされそうになるが、足裏で地面を掴んで耐える。 これぞ、ベルシュタイン流のスキンシップだ。 一般人なら脊椎が粉砕されているところだが、私には心地よいマッサージのようなものだ。
「ええ、お父様。もうお腹と背中がくっつきそうですわ」
私は王城から持参した柱を小脇に抱え直すと、懐かしき我が家――ベルシュタイン辺境伯邸の正門を見上げた。
そこにあるのは、優雅な貴族の屋敷ではない。 黒曜石を切り出して作られた、要塞そのものの威容を誇る巨大建造物だ。 窓には鉄格子、屋根にはバリスタ(巨大弩砲)、そして庭には観賞用の植物の代わりに、棘の生えた人食い植物が元気に触手をうねらせている。
これこそが、魔境の最前線基地。 私が生まれ育った、愛すべきマイホームである。
私たちは正門をくぐり、玄関ホールへと向かった。 その後ろを、セバスチャンが涼しい顔でついてくる。 さらにその後ろを、魂の抜けたような顔をした元盗賊たちと、泡を吹いて倒れそうになっている馬たちが、使用人たちによって運ばれていく。
「お帰りなさいませ、お嬢様!!」
玄関ホールに入った瞬間、怒号のような挨拶が飛んできた。 ズラリと整列していたのは、ベルシュタイン家の誇るメイド部隊だ。
彼女たちの装いは、王都のそれとは少々異なる。 フリル付きの可愛らしいエプロンドレスの下には、鎖帷子(チェーンメイル)を着用。 スカートのスリットからは、短剣や暗器がチラリと見え隠れしている。 そして何より、全員が上腕二頭筋の発達した、健康的な肉体美の持ち主だ。
「あら、みんな! 久しぶりね!」
私が手を振ると、メイド長のマリア(御年五十歳、元傭兵団長)が、感極まった表情で進み出てきた。 彼女の右目には古傷があり、その迫力は歴戦の将軍そのものだ。
「お嬢様……! よくぞご無事で! 王都のような軟弱な土地で、さぞかしひもじい思いをされたことでしょう!」
「ええ、マリア。王都の食事は空気みたいに軽くて、食べた気がしなかったわ」
「なんと可哀想に……! さあ、今すぐに栄養のあるものをご用意いたします! 総員、戦闘配置! 配膳開始ッ!」
「「「イエッサーッ!!」」」
マリアの号令一下、メイドたちが目にも止まらぬ速さで散開する。 その足取りは音もなく、しかし風のように速い。
私たちは食堂へと案内された。 そこにあるのは、一本の大木を切り出して作られた巨大なテーブル。 椅子もまた、大人が三人座れそうなほど頑丈な作りだ。
私は父の右隣、兄の左隣という定位置に腰を下ろした。 そして、テーブルの脇に、持ってきた柱を「よいしょ」と立てかける。
ズシン!
床が少し沈んだが、この屋敷の床材はアダマンタイト鉱石を練り込んであるので、割れることはない。
「さて、まずは再会の乾杯といこうか!」
父が巨大なジョッキを持ち上げた。 中に入っているのは、エール……ではなく、滋養強壮に効く『マンドラゴラの生搾りジュース』だ。 ドロリとした紫色をしており、時折「ギャッ」という悲鳴のような泡が弾ける。
「乾杯!」 「乾杯ですわ!」
ガチンッ!!
ジョッキ同士がぶつかり合い、火花が散る。 私は一気に中身を煽った。 喉を焼くような強烈な苦味と、その奥にある濃厚な旨味。 胃袋に落ちた瞬間、カッと熱くなり、全身の細胞が活性化していくのが分かる。
「ぷはーっ! これですわ! 生き返ります!」
「だろう? 王都の薄いワインじゃ精がつかんからな」
兄のヴォルフガングが豪快に笑う。 彼は私より五歳年上で、次期当主としての風格を備えている。 身長二メートル五十センチ。 筋肉の鎧をまとったその姿は、オーガ・キングと素手で殴り合っても勝てるレベルだ(実際に勝ったことがある)。
「さあ、メインディッシュだ!」
父の声と共に、厨房の扉が蹴破られるようにして開いた。 数人の屈強な料理人たちが、巨大なワゴンを押して入ってくる。 その上に鎮座しているのは――。
「おお……!」
私は思わず感嘆の声を漏らした。
体長三メートルはある巨大な獣の丸焼き。 こんがりと焼けた皮からは香ばしい脂が滴り落ち、スパイシーな香辛料の香りが鼻腔をくすぐる。 角の形状からして、これは間違いなくS級指定魔獣『ベヒモス』の幼体だ。 幼体といっても、その戦闘力は小国の騎士団を壊滅させるほどだが。
「今朝、裏山で暴れていたのをシメてきたんだ。新鮮だぞ」
父がナイフ……というよりはマチェット(山刀)を取り出し、豪快に肉を切り分ける。 ザシュッ、ザシュッ。 骨ごと断ち切る音が響く。
私の目の前に、山盛りの肉塊が置かれた。 推定重量、五キログラム。
「いただきます!」
私はフォークを突き刺し、大きく口を開けてかぶりついた。
ガブリッ。 ジュワァァ……!
口の中に溢れ出す肉汁。 野生の力が凝縮された濃厚な味。 噛めば噛むほど湧き出る旨味の奔流。 王都の高級レストランで出される、小さく切り分けられたフィレ肉とは次元が違う。 これは「命」を食べているという実感そのものだ。
「ん~っ! 美味しいですわ~っ!」
私は身悶えした。 涙が出そうだ。 三年間、私が夢にまで見た味。 これこそがベルシュタイン家の食卓だ。
「ガハハ! いい食いっぷりだ! やはりエリーはこうでなくてはな!」
父も兄も、手づかみで肉を貪っている。 骨をバリバリと噛み砕く音が、BGMのように響き渡る。
ふと、部屋の隅に目をやると、元盗賊たちが給仕係のメイドに促されて、小さくなっていた。
「あ、あの……俺たちも、これを……?」
リーダー格だった男が、震える手で皿を受け取っている。 彼の皿にも、遠慮なく一キロほどの肉塊が盛られていた。
「ええ、食べなさい。働かざる者食うべからずですが、これからの労働に耐えるには体力が不可欠ですもの」
「は、はい……いただきます……」
彼らは恐る恐る肉を口に運ぶ。 毒でも入っているのではないかという顔で。 しかし。
「……!」
一口食べた瞬間、彼らの目がカッと見開かれた。
「う、うめぇ……!」 「なんだこれ、めちゃくちゃ美味いぞ……!」 「こんな肉、食ったことねぇ!」
彼らは猛然と食らいつき始めた。 涙を流しながら。
「うぅ……母ちゃん、俺、まっとうに生きます……」 「こんな美味いものが食えるなら、地獄の底までついていきます姐さん……!」
どうやら、胃袋の掌握は完了したようだ。 チョロいものである。
◇
満腹になった後、私は自室へと戻った。 三年間空けていたはずだが、部屋は塵一つなく清掃されていた。 マリアたちの仕事ぶりに感謝だ。
部屋に入ると、私はすぐに鏡の前に立った。 そこに映っているのは、豪奢なドレスを着た、金髪碧眼の令嬢。 ……の、なれの果てだ。
ドレスの裾は破れ、泥と魔獣の返り血で汚れ、コルセットは呼吸を妨げている。 王都での「猫かぶり」の象徴。
「もう、こんなものは必要ありませんわ」
私は躊躇なくドレスの背中の紐を引きちぎった。 ブチブチッ! 悲鳴を上げる布地。 コルセットを外し、床に投げ捨てる。
「はぁ~……! 空気が美味しい!」
肋骨が広がり、肺いっぱいに酸素が入ってくる。 私は下着姿(といっても、機能性重視のさらしのようなものだが)になり、クローゼットを開けた。
そこには、フリフリのドレスなど一着もない。 代わりに並んでいるのは、実用一点張りの「部屋着」たちだ。
私はその中から、特注の一着を取り出した。 素材は『エンシェント・ドラゴン』の腹部の皮。 しなやかで伸縮性に富み、それでいて鋼鉄の刃も通さない最強の素材だ。 デザインは動きやすさを最優先した、上下セパレートのチュニックとパンツスタイル。 色は汚れの目立たない漆黒。
袖を通す。 ピタリと肌に吸い付くようなフィット感。 どんなに激しく動いても邪魔にならない。
「やっぱり、これですわね」
鏡の前で軽くシャドーボクシングをしてみる。 シュッ、シュッ。 拳が風を切る音が鋭い。 キレも戻ってきている。
足元は、これも特注のミスリル製ブーツ。 底にはスパイクが仕込まれており、岩壁でも垂直に駆け上がれる優れものだ。
「よし、完璧」
私は髪をポニーテールにまとめ上げ、満足げに頷いた。 これぞ「スローライフ(物理)」の正装だ。
着替えを終えて部屋を出ようとした時、ふと、部屋の隅に置いたままの柱が目に入った。
「ああ、そういえば」
王城から持ってきた「お土産」。 父は国宝級のアーティファクトだと言っていたが、私にとってはただの戦利品であり、便利な石柱に過ぎない。
私は柱を担ぎ上げ、部屋のバルコニーへと出た。 そこには、大きな樽が置かれている。 中には、先日収穫されたばかりの巨大野菜「マンドラ・キャベツ」が塩漬けにされていた。 しかし、重石が足りないのか、まだ漬かりが浅いようだ。
「ちょうどいいですわ」
私は柱を縦にし、樽の上にそっと(当社比)置いた。
ズプッ。
柱の自重で、キャベツがギュムッと圧縮される音がする。 完璧なサイズ感だ。 王国の守護石が、辺境の漬物石として第二の人生を歩み始めた瞬間である。
「美味しく漬かりますように」
私はポンポンと柱を叩き、部屋を後にした。
◇
着替えを済ませてリビングに戻ると、父と兄が地図を広げて何やら話し込んでいた。 私が入っていくと、二人は私の姿を見てニヤリと笑った。
「おお、やっとその格好に戻ったか。ドレス姿のエリーも悪くなかったが、やはりそのドラゴン皮のほうがしっくりくるな」
「ええ、動きやすくて最高ですわ。それで、お話とは?」
私はソファに深々と腰掛けた。 クッションが高級羽毛ではなく、グリフォンの毛皮で作られているので弾力が素晴らしい。
「ああ、王都の情勢について少しな」
兄が地図上の王都を指差した。
「親父殿の読み通り、お前が柱を引っこ抜いたせいで、王都周辺の結界強度が著しく低下しているようだ。我が家の密偵――『影』からの報告によると、既に近隣の森から低級魔獣が溢れ出し、街道を封鎖し始めているらしい」
「まあ。それは大変ですわね(棒読み)」
私はテーブルの上の木の実(鉄のように硬いが、噛むと美味い)をコリコリと齧りながら答えた。 正直、どうでもいい。 私を追い出したのは彼らなのだから、自業自得だ。
「さらに、お前が発していた『殺気』という名の抑止力が消えたことで、王都の地下に眠るダンジョンも活性化の兆しを見せているそうだ。ジェラルド王子は『エリーの呪いだ』と喚いているらしいが、騎士団の一部は事態の深刻さに気づき始めているようだな」
「呪いなんて失礼しちゃいますわ。私はただ、日々のストレスを魔力に変換して発散していただけですのに」
王都にいた頃、私は定期的に地下ダンジョンに潜り、ボス部屋のモンスターをサンドバッグにしてストレス解消をしていた。 その際に漏れ出る私の「気」が、結果的に他の魔獣たちを恐れさせ、王都に近づけないようにしていたのだが……まあ、今となってはどうでもいい話だ。
「で、どうする? 王家から泣きついてくるのも時間の問題だが」
父が試すような目で私を見た。
私は即答した。
「知りませんわ。私は疲れましたの。これからは、この領地で静かに、平和に、スローライフを送ると決めたんです」
「スローライフ、か。お前の言うスローライフとは、具体的に何だ?」
「それはもちろん……」
私は夢見るように目を細めた。
「朝は小鳥のさえずりで目覚め、午前中は畑を耕して汗を流し、午後は森を散策して可愛い動物たちと触れ合い、夜は温泉に浸かって星を眺める……そんな生活ですわ!」
父と兄が顔を見合わせ、微妙な表情をした。 彼らの脳裏には、おそらく私とは違う光景が浮かんでいるのだろう。 畑を耕す=荒野を拳で開墾する。 森を散策=魔獣の巣を強襲する。 動物と触れ合う=魔獣を狩って食べる。
だが、あえて訂正はしなかった。 結果が同じなら過程はどうでもいいのだ。
「なるほど、畑と森か。……ならば、ちょうどいい仕事があるぞ」
父がニヤリと笑った。
「北の『嘆きの森』だがな、最近、主(ぬし)が代替わりしたらしい」
「あら、そうなのですか?」
『嘆きの森』は、領地の中でも特に危険度が高いエリアだ。 以前の主は、三つ首のキメラだったはずだが。
「新入りは少々ヤンチャでな。森の生態系を乱すほど食い荒らしている。おかげで、我々の狩り場が荒らされて困っているんだ」
「それは聞き捨てなりませんわね。私たちの食卓を脅かすなんて」
私の目がギラリと光った。 食料問題は、ベルシュタイン家にとって安全保障問題と同義である。
「挨拶に行ってくるといい。ついでに、その『スローライフ』とやらのための食材調達もな」
「ええ、喜んで! 新入りのご近所さんには、しっかりとご挨拶(物理)をしておきませんとね」
私は立ち上がった。 体がうずうずする。 これだ。この高揚感だ。 王都の茶会で、毒にも薬にもならない会話をしている時とは比べ物にならない充実感。
「お供はどうする? ヴォルフを行かせるか?」
「いえ、結構ですわ。お兄様は領地の見回りで忙しいでしょうし。……そうね、あの元盗賊たちを連れて行きますわ」
「ほう? あの貧弱な連中をか? 即死するぞ」
「荷物持ちくらいにはなりますわ。それに、彼らにも『こちらの流儀』を叩き込んでおかないといけませんから」
私は邪悪な(本人としては慈愛に満ちた)笑みを浮かべた。
「スパルタ教育で、立派なベルシュタイン家の使用人に育て上げてみせますわ」
◇
屋敷の裏庭。 そこに集められた元盗賊――現在は『ベルシュタイン家雑用部隊(仮)』の面々は、ガタガタと震えていた。
彼らは見てしまったのだ。 私が庭の隅にあった岩山(高さ五メートル)を、準備運動がわりに粉砕したところを。
「さあ、皆さん! スローライフの第一歩ですわよ!」
私はリュックサック(容量無限の魔法鞄)を背負い、彼らに振り返った。 手には、父から譲り受けたミスリル合金製のスコップ(武器としても使用可)を持っている。
「これから『嘆きの森』へピクニックに行きます。主な目的は、食材の確保と、ご近所への挨拶回りです」
「あ、挨拶回り……? ピクニック……?」
リーダー格の男――名前は確か、ボブと言ったか――がおずおずと手を挙げた。
「あのぅ、姐さん……いや、お嬢様。『嘆きの森』って、地元の伝説だと『入ったら二度と戻れない』って言われてる場所じゃ……」
「あら、そんな大げさな。ちょっと魔獣が元気なだけの、自然豊かな森ですわよ」
「ひぃっ……」
「大丈夫、私の後ろにいれば安全ですわ。ただし、遅れたら置いていきますからね」
私はニッコリと笑い、森の方角を指差した。
「それでは、出発進行!」
ドガァァン!
私は地面を蹴って飛び出した。 その後ろを、セバスチャンが音もなく続き、そして元盗賊たちが「死にたくねぇぇぇ!」と絶叫しながら必死に追いかけてくる。
青い空。白い雲。 そして、森の奥から聞こえる、飢えた魔獣たちの咆哮。
ああ、なんて素晴らしいスローライフの始まりだろう。 私は全身で風を感じながら、森へと突き進んでいった。
その森で待ち受けているのが、単なる魔獣ではなく、王国の運命を揺るがすほどの『厄介事』の種だとは、まだ知らずに。 まあ、知ったところで、今の私なら「肥料にして畑に撒きますわ」と笑い飛ばしただろうけれど。
父バルバロスが、私の背中をバシバシと叩く。 そのたびに「ドムッ、ドムッ」という重低音が響き、私の体は数センチほど前方に吹き飛ばされそうになるが、足裏で地面を掴んで耐える。 これぞ、ベルシュタイン流のスキンシップだ。 一般人なら脊椎が粉砕されているところだが、私には心地よいマッサージのようなものだ。
「ええ、お父様。もうお腹と背中がくっつきそうですわ」
私は王城から持参した柱を小脇に抱え直すと、懐かしき我が家――ベルシュタイン辺境伯邸の正門を見上げた。
そこにあるのは、優雅な貴族の屋敷ではない。 黒曜石を切り出して作られた、要塞そのものの威容を誇る巨大建造物だ。 窓には鉄格子、屋根にはバリスタ(巨大弩砲)、そして庭には観賞用の植物の代わりに、棘の生えた人食い植物が元気に触手をうねらせている。
これこそが、魔境の最前線基地。 私が生まれ育った、愛すべきマイホームである。
私たちは正門をくぐり、玄関ホールへと向かった。 その後ろを、セバスチャンが涼しい顔でついてくる。 さらにその後ろを、魂の抜けたような顔をした元盗賊たちと、泡を吹いて倒れそうになっている馬たちが、使用人たちによって運ばれていく。
「お帰りなさいませ、お嬢様!!」
玄関ホールに入った瞬間、怒号のような挨拶が飛んできた。 ズラリと整列していたのは、ベルシュタイン家の誇るメイド部隊だ。
彼女たちの装いは、王都のそれとは少々異なる。 フリル付きの可愛らしいエプロンドレスの下には、鎖帷子(チェーンメイル)を着用。 スカートのスリットからは、短剣や暗器がチラリと見え隠れしている。 そして何より、全員が上腕二頭筋の発達した、健康的な肉体美の持ち主だ。
「あら、みんな! 久しぶりね!」
私が手を振ると、メイド長のマリア(御年五十歳、元傭兵団長)が、感極まった表情で進み出てきた。 彼女の右目には古傷があり、その迫力は歴戦の将軍そのものだ。
「お嬢様……! よくぞご無事で! 王都のような軟弱な土地で、さぞかしひもじい思いをされたことでしょう!」
「ええ、マリア。王都の食事は空気みたいに軽くて、食べた気がしなかったわ」
「なんと可哀想に……! さあ、今すぐに栄養のあるものをご用意いたします! 総員、戦闘配置! 配膳開始ッ!」
「「「イエッサーッ!!」」」
マリアの号令一下、メイドたちが目にも止まらぬ速さで散開する。 その足取りは音もなく、しかし風のように速い。
私たちは食堂へと案内された。 そこにあるのは、一本の大木を切り出して作られた巨大なテーブル。 椅子もまた、大人が三人座れそうなほど頑丈な作りだ。
私は父の右隣、兄の左隣という定位置に腰を下ろした。 そして、テーブルの脇に、持ってきた柱を「よいしょ」と立てかける。
ズシン!
床が少し沈んだが、この屋敷の床材はアダマンタイト鉱石を練り込んであるので、割れることはない。
「さて、まずは再会の乾杯といこうか!」
父が巨大なジョッキを持ち上げた。 中に入っているのは、エール……ではなく、滋養強壮に効く『マンドラゴラの生搾りジュース』だ。 ドロリとした紫色をしており、時折「ギャッ」という悲鳴のような泡が弾ける。
「乾杯!」 「乾杯ですわ!」
ガチンッ!!
ジョッキ同士がぶつかり合い、火花が散る。 私は一気に中身を煽った。 喉を焼くような強烈な苦味と、その奥にある濃厚な旨味。 胃袋に落ちた瞬間、カッと熱くなり、全身の細胞が活性化していくのが分かる。
「ぷはーっ! これですわ! 生き返ります!」
「だろう? 王都の薄いワインじゃ精がつかんからな」
兄のヴォルフガングが豪快に笑う。 彼は私より五歳年上で、次期当主としての風格を備えている。 身長二メートル五十センチ。 筋肉の鎧をまとったその姿は、オーガ・キングと素手で殴り合っても勝てるレベルだ(実際に勝ったことがある)。
「さあ、メインディッシュだ!」
父の声と共に、厨房の扉が蹴破られるようにして開いた。 数人の屈強な料理人たちが、巨大なワゴンを押して入ってくる。 その上に鎮座しているのは――。
「おお……!」
私は思わず感嘆の声を漏らした。
体長三メートルはある巨大な獣の丸焼き。 こんがりと焼けた皮からは香ばしい脂が滴り落ち、スパイシーな香辛料の香りが鼻腔をくすぐる。 角の形状からして、これは間違いなくS級指定魔獣『ベヒモス』の幼体だ。 幼体といっても、その戦闘力は小国の騎士団を壊滅させるほどだが。
「今朝、裏山で暴れていたのをシメてきたんだ。新鮮だぞ」
父がナイフ……というよりはマチェット(山刀)を取り出し、豪快に肉を切り分ける。 ザシュッ、ザシュッ。 骨ごと断ち切る音が響く。
私の目の前に、山盛りの肉塊が置かれた。 推定重量、五キログラム。
「いただきます!」
私はフォークを突き刺し、大きく口を開けてかぶりついた。
ガブリッ。 ジュワァァ……!
口の中に溢れ出す肉汁。 野生の力が凝縮された濃厚な味。 噛めば噛むほど湧き出る旨味の奔流。 王都の高級レストランで出される、小さく切り分けられたフィレ肉とは次元が違う。 これは「命」を食べているという実感そのものだ。
「ん~っ! 美味しいですわ~っ!」
私は身悶えした。 涙が出そうだ。 三年間、私が夢にまで見た味。 これこそがベルシュタイン家の食卓だ。
「ガハハ! いい食いっぷりだ! やはりエリーはこうでなくてはな!」
父も兄も、手づかみで肉を貪っている。 骨をバリバリと噛み砕く音が、BGMのように響き渡る。
ふと、部屋の隅に目をやると、元盗賊たちが給仕係のメイドに促されて、小さくなっていた。
「あ、あの……俺たちも、これを……?」
リーダー格だった男が、震える手で皿を受け取っている。 彼の皿にも、遠慮なく一キロほどの肉塊が盛られていた。
「ええ、食べなさい。働かざる者食うべからずですが、これからの労働に耐えるには体力が不可欠ですもの」
「は、はい……いただきます……」
彼らは恐る恐る肉を口に運ぶ。 毒でも入っているのではないかという顔で。 しかし。
「……!」
一口食べた瞬間、彼らの目がカッと見開かれた。
「う、うめぇ……!」 「なんだこれ、めちゃくちゃ美味いぞ……!」 「こんな肉、食ったことねぇ!」
彼らは猛然と食らいつき始めた。 涙を流しながら。
「うぅ……母ちゃん、俺、まっとうに生きます……」 「こんな美味いものが食えるなら、地獄の底までついていきます姐さん……!」
どうやら、胃袋の掌握は完了したようだ。 チョロいものである。
◇
満腹になった後、私は自室へと戻った。 三年間空けていたはずだが、部屋は塵一つなく清掃されていた。 マリアたちの仕事ぶりに感謝だ。
部屋に入ると、私はすぐに鏡の前に立った。 そこに映っているのは、豪奢なドレスを着た、金髪碧眼の令嬢。 ……の、なれの果てだ。
ドレスの裾は破れ、泥と魔獣の返り血で汚れ、コルセットは呼吸を妨げている。 王都での「猫かぶり」の象徴。
「もう、こんなものは必要ありませんわ」
私は躊躇なくドレスの背中の紐を引きちぎった。 ブチブチッ! 悲鳴を上げる布地。 コルセットを外し、床に投げ捨てる。
「はぁ~……! 空気が美味しい!」
肋骨が広がり、肺いっぱいに酸素が入ってくる。 私は下着姿(といっても、機能性重視のさらしのようなものだが)になり、クローゼットを開けた。
そこには、フリフリのドレスなど一着もない。 代わりに並んでいるのは、実用一点張りの「部屋着」たちだ。
私はその中から、特注の一着を取り出した。 素材は『エンシェント・ドラゴン』の腹部の皮。 しなやかで伸縮性に富み、それでいて鋼鉄の刃も通さない最強の素材だ。 デザインは動きやすさを最優先した、上下セパレートのチュニックとパンツスタイル。 色は汚れの目立たない漆黒。
袖を通す。 ピタリと肌に吸い付くようなフィット感。 どんなに激しく動いても邪魔にならない。
「やっぱり、これですわね」
鏡の前で軽くシャドーボクシングをしてみる。 シュッ、シュッ。 拳が風を切る音が鋭い。 キレも戻ってきている。
足元は、これも特注のミスリル製ブーツ。 底にはスパイクが仕込まれており、岩壁でも垂直に駆け上がれる優れものだ。
「よし、完璧」
私は髪をポニーテールにまとめ上げ、満足げに頷いた。 これぞ「スローライフ(物理)」の正装だ。
着替えを終えて部屋を出ようとした時、ふと、部屋の隅に置いたままの柱が目に入った。
「ああ、そういえば」
王城から持ってきた「お土産」。 父は国宝級のアーティファクトだと言っていたが、私にとってはただの戦利品であり、便利な石柱に過ぎない。
私は柱を担ぎ上げ、部屋のバルコニーへと出た。 そこには、大きな樽が置かれている。 中には、先日収穫されたばかりの巨大野菜「マンドラ・キャベツ」が塩漬けにされていた。 しかし、重石が足りないのか、まだ漬かりが浅いようだ。
「ちょうどいいですわ」
私は柱を縦にし、樽の上にそっと(当社比)置いた。
ズプッ。
柱の自重で、キャベツがギュムッと圧縮される音がする。 完璧なサイズ感だ。 王国の守護石が、辺境の漬物石として第二の人生を歩み始めた瞬間である。
「美味しく漬かりますように」
私はポンポンと柱を叩き、部屋を後にした。
◇
着替えを済ませてリビングに戻ると、父と兄が地図を広げて何やら話し込んでいた。 私が入っていくと、二人は私の姿を見てニヤリと笑った。
「おお、やっとその格好に戻ったか。ドレス姿のエリーも悪くなかったが、やはりそのドラゴン皮のほうがしっくりくるな」
「ええ、動きやすくて最高ですわ。それで、お話とは?」
私はソファに深々と腰掛けた。 クッションが高級羽毛ではなく、グリフォンの毛皮で作られているので弾力が素晴らしい。
「ああ、王都の情勢について少しな」
兄が地図上の王都を指差した。
「親父殿の読み通り、お前が柱を引っこ抜いたせいで、王都周辺の結界強度が著しく低下しているようだ。我が家の密偵――『影』からの報告によると、既に近隣の森から低級魔獣が溢れ出し、街道を封鎖し始めているらしい」
「まあ。それは大変ですわね(棒読み)」
私はテーブルの上の木の実(鉄のように硬いが、噛むと美味い)をコリコリと齧りながら答えた。 正直、どうでもいい。 私を追い出したのは彼らなのだから、自業自得だ。
「さらに、お前が発していた『殺気』という名の抑止力が消えたことで、王都の地下に眠るダンジョンも活性化の兆しを見せているそうだ。ジェラルド王子は『エリーの呪いだ』と喚いているらしいが、騎士団の一部は事態の深刻さに気づき始めているようだな」
「呪いなんて失礼しちゃいますわ。私はただ、日々のストレスを魔力に変換して発散していただけですのに」
王都にいた頃、私は定期的に地下ダンジョンに潜り、ボス部屋のモンスターをサンドバッグにしてストレス解消をしていた。 その際に漏れ出る私の「気」が、結果的に他の魔獣たちを恐れさせ、王都に近づけないようにしていたのだが……まあ、今となってはどうでもいい話だ。
「で、どうする? 王家から泣きついてくるのも時間の問題だが」
父が試すような目で私を見た。
私は即答した。
「知りませんわ。私は疲れましたの。これからは、この領地で静かに、平和に、スローライフを送ると決めたんです」
「スローライフ、か。お前の言うスローライフとは、具体的に何だ?」
「それはもちろん……」
私は夢見るように目を細めた。
「朝は小鳥のさえずりで目覚め、午前中は畑を耕して汗を流し、午後は森を散策して可愛い動物たちと触れ合い、夜は温泉に浸かって星を眺める……そんな生活ですわ!」
父と兄が顔を見合わせ、微妙な表情をした。 彼らの脳裏には、おそらく私とは違う光景が浮かんでいるのだろう。 畑を耕す=荒野を拳で開墾する。 森を散策=魔獣の巣を強襲する。 動物と触れ合う=魔獣を狩って食べる。
だが、あえて訂正はしなかった。 結果が同じなら過程はどうでもいいのだ。
「なるほど、畑と森か。……ならば、ちょうどいい仕事があるぞ」
父がニヤリと笑った。
「北の『嘆きの森』だがな、最近、主(ぬし)が代替わりしたらしい」
「あら、そうなのですか?」
『嘆きの森』は、領地の中でも特に危険度が高いエリアだ。 以前の主は、三つ首のキメラだったはずだが。
「新入りは少々ヤンチャでな。森の生態系を乱すほど食い荒らしている。おかげで、我々の狩り場が荒らされて困っているんだ」
「それは聞き捨てなりませんわね。私たちの食卓を脅かすなんて」
私の目がギラリと光った。 食料問題は、ベルシュタイン家にとって安全保障問題と同義である。
「挨拶に行ってくるといい。ついでに、その『スローライフ』とやらのための食材調達もな」
「ええ、喜んで! 新入りのご近所さんには、しっかりとご挨拶(物理)をしておきませんとね」
私は立ち上がった。 体がうずうずする。 これだ。この高揚感だ。 王都の茶会で、毒にも薬にもならない会話をしている時とは比べ物にならない充実感。
「お供はどうする? ヴォルフを行かせるか?」
「いえ、結構ですわ。お兄様は領地の見回りで忙しいでしょうし。……そうね、あの元盗賊たちを連れて行きますわ」
「ほう? あの貧弱な連中をか? 即死するぞ」
「荷物持ちくらいにはなりますわ。それに、彼らにも『こちらの流儀』を叩き込んでおかないといけませんから」
私は邪悪な(本人としては慈愛に満ちた)笑みを浮かべた。
「スパルタ教育で、立派なベルシュタイン家の使用人に育て上げてみせますわ」
◇
屋敷の裏庭。 そこに集められた元盗賊――現在は『ベルシュタイン家雑用部隊(仮)』の面々は、ガタガタと震えていた。
彼らは見てしまったのだ。 私が庭の隅にあった岩山(高さ五メートル)を、準備運動がわりに粉砕したところを。
「さあ、皆さん! スローライフの第一歩ですわよ!」
私はリュックサック(容量無限の魔法鞄)を背負い、彼らに振り返った。 手には、父から譲り受けたミスリル合金製のスコップ(武器としても使用可)を持っている。
「これから『嘆きの森』へピクニックに行きます。主な目的は、食材の確保と、ご近所への挨拶回りです」
「あ、挨拶回り……? ピクニック……?」
リーダー格の男――名前は確か、ボブと言ったか――がおずおずと手を挙げた。
「あのぅ、姐さん……いや、お嬢様。『嘆きの森』って、地元の伝説だと『入ったら二度と戻れない』って言われてる場所じゃ……」
「あら、そんな大げさな。ちょっと魔獣が元気なだけの、自然豊かな森ですわよ」
「ひぃっ……」
「大丈夫、私の後ろにいれば安全ですわ。ただし、遅れたら置いていきますからね」
私はニッコリと笑い、森の方角を指差した。
「それでは、出発進行!」
ドガァァン!
私は地面を蹴って飛び出した。 その後ろを、セバスチャンが音もなく続き、そして元盗賊たちが「死にたくねぇぇぇ!」と絶叫しながら必死に追いかけてくる。
青い空。白い雲。 そして、森の奥から聞こえる、飢えた魔獣たちの咆哮。
ああ、なんて素晴らしいスローライフの始まりだろう。 私は全身で風を感じながら、森へと突き進んでいった。
その森で待ち受けているのが、単なる魔獣ではなく、王国の運命を揺るがすほどの『厄介事』の種だとは、まだ知らずに。 まあ、知ったところで、今の私なら「肥料にして畑に撒きますわ」と笑い飛ばしただろうけれど。
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