7 / 75
7.大・大衝撃波
しおりを挟む――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――
私はこの時、ショックダイルの正面に陣取ったの。
ウイークエンダー・ラビットと言えば重装甲と高パワー。
ショックダイルが震動波を放とうと向く。
私が相手の注目の的になって、味方への注目を減らそうと思ったの。
その隙にホクシン・フォクシスが四方から襲いかかる。
あの滑る動きの中で、青い炎が、刃に変わる。
そして、ショックダイルの黒いウロコを上から下まで切り裂いた。
宇宙からもたらされた力が、空気のクッションを、元素1個分の厚みしかない切っ先に変えたんだ。
ウロコの間に見える、小さくキラリと光るモノ。
その目の近くを切り裂かれ、4本の足も傷ついて、ついにショックダイルはへたり込む。
傷から勢いよく飛びだしたのは、赤い血などではなく、白い火花だった。
ショックダイルが、どう言うエネルギーで動いているのかは、今も研究中なの。
へたり込みながらも、あのダムのような尾と、震動波はまだ使える。
2つのアゴが、震えはじめた。
狙われるのは、私!
私は、逃げるか進むか、すぐに決めなければいけなくなった!
決めなければ、待っているのは、死!
その時に、私の母艦の雷切から通信が入った。
『ホクシン・フォクシスは撤退しなさい。うさぎ、5秒後に突撃しなさい』
お母さんの声だ。
うちのお母さんはアンドロイド。
人間に似せて作られた機械なの。
純然たる戦闘用で、今は作戦を考えてくれている。
そのお母さんの指示に従うと、ショックダイルの振動波が放たれるまでここにいなきゃならない。
でも私には、従うことへの迷いはなかった。
得意のパンチをいつでも打てるよう、構えるだけだ。
ショックダイルのアゴが震える。
ウイークエンダーの装甲が揺れだしてきた。
一瞬で砕かれた山の岩が、怖さとともに思いだされる。
その時、ショックダイルの後ろに巨大な茶と緑のまだら模様が滑り込んだ。
全長100メートル。低速での大気圏航空に有利な、真横に伸びた主翼。
急襲揚陸艦、雷切はエンジンを切って音もなく飛べるの。
その直後、光が生まれた。
暴風だね。
ショックダイルのあの巨体が、シッポからあおられる!
その後ろから、煙になった砕けた岩がビュンビュン飛んでくる!
雷切が、ジェットエンジンを地面に向けて噴射したんだ。
ショックダイルの後ろで起こったことは、大爆発なんだ。
私は走りだす。
ショックダイルに向かって。
振動波はジェットに流される。私は近づくから、振動波は焦点を合わせれない。
ウイークエンダーの2つのこぶしに、腕からせり出した装甲が重ねる。
シンプルだけど必殺の、全体重を最高まで加速した、パンチ!
狙うのは、震えてぼやけて見えるショックダイルのアゴ、二つ!
当たった瞬間、この戦いで最も大きな衝撃が起こった。
アゴは、もうぼやけていない。
少し体にめり込んで、ひしゃげたかもしれない。
ショックダイルが、後づさる。
その先には、崖があった。
踏み外す、後ろ脚。
そこから這い上がる力は、もう残っていなかった。
黒い巨体は、岩を砕き、低い木や草花をはぎ取りながら落ちていく。
こうして、戦いは終わったの。
こんなときは、「うれしい!」みたいな感情は浮かばない。
ただ、「もう考えなくていい、耐えなくていい」という感情が浮かぶだけだよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる