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14.シロドロンド騎士団が、ナンパ!?

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 店に現れたのは、銀糸のゴージャスな刺繍をした黒の燕尾服の一団だった。
 朱墨ちゃんに説教されていた人たちだ。
「しどろもどろ騎士団?」
 安菜! 言い方!
 私は「シロドロンド騎士団……」と、ささやき声で伝えた。
 それにしてもあの騎士団、さっきよりも表情が曇って見えるよ。
 何をしにきたかは知らないけど、ああいう表情を見ると、いつもこっちまで暗くなる。
 ハンターキラーになると、ああいう思いつめた表情をよく向けられるんだもの。

「やあ。ファントム・ショットゲーマー」
 朱墨ちゃんをヒーロー名で呼んだ。
 ん?
 着ている服が、さっきより黒く見える。
 あれは、ぬれてる?
 汗だろうけど、きっとテントからここまで歩いただけじゃない。
 朱墨ちゃんにとっても気の毒だね。きっと恐怖からでる汗だよ。
「このお代を払ってもいいかな? 」
 なんとか表情は、笑顔だとわかる。
 引きつってる顔で、私たちのテーブルを指差した。
 一方の朱墨ちゃんは、私を見てる。
 ダイジョウブ。
 さっき私が言ったことを覚えてるはずだね。

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

「世界が代われば、ルールも違う。
 それがほんのわずかな雰囲気の違いでも、相手の世界では「話を聞く価値なし」とされちゃうかもしれないよ」

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 表情は今にも、あのドスの効いたキンキン声で怒鳴りそうだけど。
「では、お願いします。できれば、この2人の分も」
 覚えていてくれた!
「ハイ。じゃあ、何かおごるよ。
 一番高いやつでもいいよ」
 アレ?
 シロドロンド騎士団は、下手なナンパをしている?
 あちらの世界のやり方じゃムリだと思って、方法を変えてきた?
 りりしい目、細身で引き締まった体。
 普段なら綺麗でかっこいい、と好かれていそうな、おじさまが!?
 その手がテーブルの上にあるメニューに伸びた。
 バッ!
 ひえ~。先に朱墨ちゃんがそのメニューをひったくった!
 勝手に決められたくないって怨みが、オーラとなって全身からにじみ出てるよ。
 その直後、朱墨ちゃんの顔が青ざめた。
 凍りついたように、私を見る。
 わ、私にもわかんないよ!
 大丈夫。私は信じてる!
「そ、そこまでは、いりません」
 朱墨ちゃんは、ようやくやっと、という雰囲気でメニューを戻したの。
 おじさまは、手をテーブルに伸ばした姿のまま、固まっていた。
(……どうしよう)
 ムダかもしれないけど、すがる思いでおじさまの部下たちを見た。
 一緒に朱墨ちゃんに怒鳴られた2人だよ。
 20から30代の男女で……それだけ。
 おじさまと同じ服、同じ表情で、なす術もなく直立不動。
 ……アレ?
 2人の後ろに、もう1人いる。
 背はだいぶ小さくて、朱墨ちゃんと同じくらい。
 10歳かな。
 男の子らしい。
 そしてこの子も、本当に暗い表情。

 その時、スマホによばれたの。
 LINEのメッセージ。
 ハンターキラー仲間から送られてきた。
 でもその内容は……え、こんなこと起こるの?
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