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神はいた。ひくほど無能な神が(笑)
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アダムは瞠目した。
異常を感じ取った時にはもう遅かった。
(なんだ……どうなっている……これは……いったい……)
時間が止まっていた。
気付いた時には、『自分以外の全てが停止した世界』に迷い込んでいた。
つい一瞬前まで、大きな剣を振り回していた幼女魔王が、
『歯をむき出しにしたまま空中で止まって』いて、
下品な勇者の周囲では、
『魔法陣が生成途中で止まって』いる。
「まさか、時間停止……いや、ありえない。……そんな事――」
「なんだ、初経験か? 存在値1000を超えているなら、時間系の魔法くらい使えるはずだが……もしかして、魔法は苦手か?」
アダムは、即座に無数のジオメトリを展開する。
迷いない速手。
神々しい輝きに照らされて、美しさにグっと磨きがかかる。
チラりと見える谷間はどこまでも深い。
高速無詠唱で、自身にありったけのバフをかける。
同時に、反応。
知覚。
背後。
ニっと微笑んでいる『ザコ』がいた。
そいつは、多少マシな召喚術が使えるだけの、存在値80を切っているクソッカス。
「ラムド……様」
「ん? ああ、擬態、解いてなかった。……まあ、いいや。一々、擬態し直すのもタルいし。このままでいこう」
(擬態? ……ラムドじゃない? 何者かがラムドに化け……いや、ありえない。神霧すら見通せる私のセブンスアイをごまかせる擬態などある訳がない。こいつは、間違いなくラムド)
だが、とアダムは思う。
(なんだ……違う。間違いなくラムド……こいつは間違いなくラムドだが……私の本能が……魂が……『これは違う』と叫んでいる……)
違うと気付けたのは、センが遊んだから。
センが、戯れに、威嚇の圧を出していなければ、
アダム如きでは絶対に気付けない。
ランク1000の擬態魔法は、
神でも見抜けない。
――センは、スっと指先をアダムに向けて、
「模倣、ランク30」
ステータスをコピーする魔法を使う。
これで、センの能力は、アダムと全く同じになる。スキルも、体力も、敏捷性も、魔力も、何もかも全て同じ。
唯一違うのは『戦闘力(ステータス関係ない強さ。格ゲーでの強さ的な感じ)』。
「ランク……30……だと……」
超最上級世界アルファの中でも、ぶっちぎり最上位の超々位生命であるアダムでも、使える魔法の最高ランクは27。
もちろん、ランク27は、ありえないほど高位の魔法。
仮に、ベータやシータの魔法使いが、ランク27の魔法などを目の当たりにすれば、そのあまりの凄まじさに、最低でも失禁は免れない。
アダムを越える魔法の使い手など、『現世』に存在するはずがない。
現世の生物では、絶対にありえない。
――つまり、
「そうか……なるほど…………………『いた』のか」
当然だが、アダムは己の能力を完璧に把握している。
アダムの戦闘タイプは、魔法だとバフ系以外はほとんど使わない、グリムアーツ特化。
ゆえに、神が存在して、魔法を得意としていれば、
自分よりも高位の魔法を使えても、なんらおかしくはない。
アダムは急速に冷静さを取りもどす。
と同時に嘲笑。
妖艶に笑う。
ムンムンとエロさが漂う、そのぷっくりとした唇が三日月になる。
「得意技はコピー……なるほど、なるほど。しかし、まあ、なんとも狡猾ではないですか。とても神とは思えない。流石は下賤な中級世界エックスの神……くく」
アダムは想う。
やはり、自分は生物としての格が違う。
生まれて初めて神と邂逅していながら、アダムの心拍数は既に平常時まで戻っていた。
アダムは、より嗤う。
精神力も神の領域に至っている自分を誇りに思う。
「敵がどれだけ強かろうと、その力をそのまま写してしまえば敗北はなくなる。くはは、バカの考えですね……」
偉大なる自分と比べ、目の前に立つ神の、なんとちっぽけな事か。
愚か。
ぁあ、愚か。
神とは、なんと愚かな下等種なのか。
――いや、違うな。
おそらく、高尚になりすぎたのだ。
アダムという個が、少しばかり高みに登りすぎただけ。
きっと、それだけの話。
「しかし、一応、流石と褒めておきましょう。まさか、ランク30の魔法が使えるとは思っていませんでしたよ。龍の女神ですら、使える魔法の最高ランクは20を切っていた……神か……なるほど、多少は……ふふっ」
アダムは、そこで、恭しく右手を胸にあててお辞儀をする。
「挨拶が遅れて申し訳ございません。私はアダム。かつて超最上級世界アルファを奪った者。究極の魔。つまりは、本物の神です。どうぞ、お見知りおきを」
「不遜がエグいねぇ」
「事実ですゆえ」
「そっすか」
言いながら、センはゆったりと戦闘態勢に入る。
頭の中で、アダムの能力を吟味する。
すぐに戦闘プランが浮かぶ。
(……うん。隙のないビルド(能力構成)だ。素晴らしい)
称賛する。
諸手を挙げて絶賛とまでは行かないが、充分、合格点はあげられる。
「能力が同じならば負けはない……その勘違い諸共、殺してさしあげましょう」
死体でも構わない。
直後であれば、魂を吸収するのに支障はない。
アダムは両の拳を握りしめる。
センと全く同じ構え。
アダムが最も得意としている、天と地を奪う構え。
「愚かな神。真実を目の当たりにして絶望するがいい。私は、戦闘力も神の領域にある」
異常を感じ取った時にはもう遅かった。
(なんだ……どうなっている……これは……いったい……)
時間が止まっていた。
気付いた時には、『自分以外の全てが停止した世界』に迷い込んでいた。
つい一瞬前まで、大きな剣を振り回していた幼女魔王が、
『歯をむき出しにしたまま空中で止まって』いて、
下品な勇者の周囲では、
『魔法陣が生成途中で止まって』いる。
「まさか、時間停止……いや、ありえない。……そんな事――」
「なんだ、初経験か? 存在値1000を超えているなら、時間系の魔法くらい使えるはずだが……もしかして、魔法は苦手か?」
アダムは、即座に無数のジオメトリを展開する。
迷いない速手。
神々しい輝きに照らされて、美しさにグっと磨きがかかる。
チラりと見える谷間はどこまでも深い。
高速無詠唱で、自身にありったけのバフをかける。
同時に、反応。
知覚。
背後。
ニっと微笑んでいる『ザコ』がいた。
そいつは、多少マシな召喚術が使えるだけの、存在値80を切っているクソッカス。
「ラムド……様」
「ん? ああ、擬態、解いてなかった。……まあ、いいや。一々、擬態し直すのもタルいし。このままでいこう」
(擬態? ……ラムドじゃない? 何者かがラムドに化け……いや、ありえない。神霧すら見通せる私のセブンスアイをごまかせる擬態などある訳がない。こいつは、間違いなくラムド)
だが、とアダムは思う。
(なんだ……違う。間違いなくラムド……こいつは間違いなくラムドだが……私の本能が……魂が……『これは違う』と叫んでいる……)
違うと気付けたのは、センが遊んだから。
センが、戯れに、威嚇の圧を出していなければ、
アダム如きでは絶対に気付けない。
ランク1000の擬態魔法は、
神でも見抜けない。
――センは、スっと指先をアダムに向けて、
「模倣、ランク30」
ステータスをコピーする魔法を使う。
これで、センの能力は、アダムと全く同じになる。スキルも、体力も、敏捷性も、魔力も、何もかも全て同じ。
唯一違うのは『戦闘力(ステータス関係ない強さ。格ゲーでの強さ的な感じ)』。
「ランク……30……だと……」
超最上級世界アルファの中でも、ぶっちぎり最上位の超々位生命であるアダムでも、使える魔法の最高ランクは27。
もちろん、ランク27は、ありえないほど高位の魔法。
仮に、ベータやシータの魔法使いが、ランク27の魔法などを目の当たりにすれば、そのあまりの凄まじさに、最低でも失禁は免れない。
アダムを越える魔法の使い手など、『現世』に存在するはずがない。
現世の生物では、絶対にありえない。
――つまり、
「そうか……なるほど…………………『いた』のか」
当然だが、アダムは己の能力を完璧に把握している。
アダムの戦闘タイプは、魔法だとバフ系以外はほとんど使わない、グリムアーツ特化。
ゆえに、神が存在して、魔法を得意としていれば、
自分よりも高位の魔法を使えても、なんらおかしくはない。
アダムは急速に冷静さを取りもどす。
と同時に嘲笑。
妖艶に笑う。
ムンムンとエロさが漂う、そのぷっくりとした唇が三日月になる。
「得意技はコピー……なるほど、なるほど。しかし、まあ、なんとも狡猾ではないですか。とても神とは思えない。流石は下賤な中級世界エックスの神……くく」
アダムは想う。
やはり、自分は生物としての格が違う。
生まれて初めて神と邂逅していながら、アダムの心拍数は既に平常時まで戻っていた。
アダムは、より嗤う。
精神力も神の領域に至っている自分を誇りに思う。
「敵がどれだけ強かろうと、その力をそのまま写してしまえば敗北はなくなる。くはは、バカの考えですね……」
偉大なる自分と比べ、目の前に立つ神の、なんとちっぽけな事か。
愚か。
ぁあ、愚か。
神とは、なんと愚かな下等種なのか。
――いや、違うな。
おそらく、高尚になりすぎたのだ。
アダムという個が、少しばかり高みに登りすぎただけ。
きっと、それだけの話。
「しかし、一応、流石と褒めておきましょう。まさか、ランク30の魔法が使えるとは思っていませんでしたよ。龍の女神ですら、使える魔法の最高ランクは20を切っていた……神か……なるほど、多少は……ふふっ」
アダムは、そこで、恭しく右手を胸にあててお辞儀をする。
「挨拶が遅れて申し訳ございません。私はアダム。かつて超最上級世界アルファを奪った者。究極の魔。つまりは、本物の神です。どうぞ、お見知りおきを」
「不遜がエグいねぇ」
「事実ですゆえ」
「そっすか」
言いながら、センはゆったりと戦闘態勢に入る。
頭の中で、アダムの能力を吟味する。
すぐに戦闘プランが浮かぶ。
(……うん。隙のないビルド(能力構成)だ。素晴らしい)
称賛する。
諸手を挙げて絶賛とまでは行かないが、充分、合格点はあげられる。
「能力が同じならば負けはない……その勘違い諸共、殺してさしあげましょう」
死体でも構わない。
直後であれば、魂を吸収するのに支障はない。
アダムは両の拳を握りしめる。
センと全く同じ構え。
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*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
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