異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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初デレ

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 アダムは、かつての世界で、63000年という永き時を闘い抜き、頂点に立った。


 当たり前の話だが、決して楽な道のりではなかった。


 吸収は確かにチートスキルだが、無敵の能力ではない。
 自分より強い者に出会った時点でアウト。

 アダムはもがいた。
 必死にもがいた。

 魔王が山ほどいるアルファという、弱者にとっては地獄のような世界で、最下級の魔物として生まれ、それでも、アダムは、頂きに上ったのだ。

 運もあった。
 幸運に助けられた場面は何度もある。
 それは事実。


 だが、それは、自分の力で引き寄せた幸運だ。


 アダムは、一度も神に祈った事はない。
 助けてくれと祈った事など一度もない。

 常に、どうすれば、目の前の困難を討ち砕けるか。
 それのみに腐心し、今日という『己の運命が決まる日』まで、自分の足で歩いてきた。

 ずっと、ずっと、ずっと、自分の力だけで闘ってきた。
 そして、頂点にたったのだ。

 何度も死を乗り越えた。
 積み重ねてきた。





 ――だから、その武は、センに届いたのだ――





 決して一蹴はされない。
 闘える。
 通用する。
 それだけの強さがアダムにはあった。

 無数のグリムアーツを組み合わせた音速のコンボを叩きこむ。
 決して反撃を受けない距離の奪い合い。

 ――AGI(敏捷性)は同じはずなのに、どうして、
      どうして、そうまでも、私を置き去りにした動きができるのですか――



 一度、『本当にコピーなのか?』と疑った。
 自分のステータスに、自分の能力を上乗せしたのではないか?



 疑いはすぐに晴れた。



 ――闘いの中で、見てしまったのだ。

 己が、もっと果てしない研鑽を積んだ果てに、
 目の前で魅せられている領域へと辿りつく姿。


 まだ、闘える。
 腕は一本も折れていない。

 心臓は動いている。

 眼球に異常は見当たらない。
 何も問題はない。

 闘える。
 ここから、三日三晩だって、やろうと思えばできなくはない。


 ――しかし――


(勝てない……何千年闘い続けても……私が、勝つ事はありない。……これは、そんな、つまらない次元じゃない)

 15分経った。


 六万年よりも遥かに濃密な15分を経て、アダムは両膝をついた。


「はぁ……はぁ……」



 ただ、力なくうなだれて、顎から垂れていく汗だけを見つめていた。



「素晴らしいぞ、アダム。お前ほどの戦闘力を持つ者を、俺は、他に5柱しかしらない」

 柱。
 それは、神の数え方。

 アダムはつい、微笑んでしまった。

「私より……『強い』者は……どのくらいいるのですか?」

「さぁ、分からん。数えた事がないからなぁ」

「なるほど……数え切れないほど……ですか……はは……」

「あ、ちなみに、俺より強い神はいないから、安心しろ。戦闘力だけなら同等のヤツが二柱いるが、あれは、色々と例外だ。勘定に入れる必要はない」

「色々と例外な神すら、あなたは超越しているのですか……つまり、まぎれもない全世界の頂点が……ここにいるという事……はは……なんという僥倖……」

 アダムは顔をあげて、センを見つめる。

 その表情は、神であるセンですら、欲情するほど美しかった。

 凛とした、大きな瞳。
 頬を伝う汗。
 より輝きを増した髪が肌に張り付いて眼福。
 溺れてしまいそうなほどに薫る、極上のフェロモン。

 キュっと引き締まったパツンパツンのパーフェクトボディが畏怖に震えた。



 ――アダムは、覚悟を決める。



 腹をくくる。

 彼女は思う。
 もしかしたら、自分は壊れてしまうかもしれない。

 しかし、
 それでも!

「もし、よろしければ……わたくしめに、あなた様の高みを、見せていただけませんか?」

 闘いの中で、アダムは理解した。

 戦闘中にいくつか交わした会話、僅かな機微、諸々の所作、一手一手の匙加減、全てが、『コピーの魔法はハンデ』だと物語っていた。

 ただのハンデじゃない。



 『小さな虫を、潰してしまわぬように』
 それと同じくらい、丁寧に慎重に繊細に、神の手は、アダムを包み込んでいた。





 センはアダムのまっすぐな視線を受け止めて、ゆっくりと目を閉じた。
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