異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

文字の大きさ
141 / 380

生命力バリア

しおりを挟む
 ゼンが顔をしかめていると、




「ゲギャギャ」




 ゴブリンは右手に魔力を集めた。




 そして、ピンポン玉サイズの火の玉をつくると、ゼンに投げつけてくる。




「うおっ、あっつぅううう!」




 不意をつかれ、かつ、なかなかの速度だったため、避けられなかった。

 右腕を前に出して、その腕を盾に受け止めると、火が、一瞬で、全身を包んだ。







「どわ、どわぁ!!」







 パニックになりかけたが、全身をつつむ火は、一瞬で消えてしまったので、




(き、消えた、消えたぁ……ああ、良かったぁ……このまま焼け死ぬのかと、一瞬、ヒヤっとした。すげぇ熱かったのに、ヒヤッとした……言っている場合かっ)







 深い溜息をつきながら、







(今のは、どういう魔法だ? ……火に包まれたってのに、別に、ヤケドとかはしてねぇ。……幻想の炎? そんな感じでもなかったんだけど……いったい、なにが――)







 一瞬、混乱しかけたが、少し、頭の中を探ってみると、答えがみつかった。







(なるほど。GLで上がった分のHPは、本来の生命力そのものではなく、生命力を媒体にしたバリアになるのか……『生命力バリア』っていうのは、単なるHPの別表記じゃなかった訳ね)




 ゼンは、ゴブリンを睨みつけ、戦闘態勢をとりながらも、頭の中を探り続ける。




(今の魔法は『威力が弱かった』から、ヤケドまでは至らなかったが、実際のところ、生命力バリアは、ヤケドなんかの『現象』を完全に無効化する事はできないし、仮に、生命力バリア内の『隠しパラメータ』である『耐久値』を超えるような一撃を受ければ、腕が切断されるような場合も充分にありうる……と)




 生命力バリアの値は、『本来のHP(人間種でレベル2だと50くらい)』を、『GLの上昇に伴い手に入れた生命力を媒体にした特殊なバリア』で覆って『守っている量』というイメージが正しい。




 完璧なバリアではないため、貫通される場合も多々あるが、色々な外敵や外邪から肉体を守ってくれる便利なオーラ。

 状態異常にはなりにくいし、ウイルスや虫も滅多に寄りつかない。




(虫が避けていたのは、服のせいじゃなく、生命力バリアのおかげだったのか……ただ、耐久値とかの隠しパラメータの『ボーダー』は、ちょっと、分からない……うーん、でも、まあ、そういうのは、これからの『人生』で理解していけばいいか……)




 魔法を放ったあとのゴブリンは、「この敵にはあまり魔法の効果はない」と判断したのか、こんぼうを構えて、ジリジリと、ゼンとの距離をつめようと近づいてきている。




 ゼンは、足場を確認しつつ、近くに武器になりそうなモノが落ちていないか探しながら、




(で、俺の服は、神様からもらったヤツ以外も全部、勝手に特殊コーティングを受けているから、もし破れたり燃えたりするほどの攻撃を受けても、自動で再生すると……このご都合主義は助かるねぇ)




 経験を糧に、頭に刻み込まれた情報の意味と価値を分析・解析し、魂にトレースしていく。




(しかし、この生命力バリアってすげぇな。ダメージを受けた際に、『痛みは感じるが、一定以上はカットされる』とか、これだけで結構なチートな気がする。生命力バリアを持っているヤツは、持っていないヤツより、あらゆる意味で優位になれる)




 『瀕死で動けない重症』でも、『気絶・失神』に至る『瞬間的な大ダメージ』を負っても、『普通に動き回る事ができる』というアドバンテージ。




 もちろん、『気絶』という状態異常に『絶対陥らない』という訳ではないが――




(……生命力バリアは、生命力を媒体にしているから、ゼロになると同時に死ぬ……ここは気をつけておかないとな)




 HP+生命力バリア=表記されている数字であり、

 生命力バリアが剥がされたら本来のHPが出てくる――という訳ではない。




(――『動けるからまだいける』と無謀につっこんだ結果、バリアがゼロになって死にました……ありうる未来だぜ)




 痛みを感じる意味。

 体に無茶をさせないためのリミッター。




 今のゼンは、それが若干緩んでいる状態ともいえる。




(で、痛みの感じ方は、生命力バリアの減少量とイコール……この感覚は……うん、少し分かる。さっきの、火の玉をくらった分……たぶん、俺は、今……HPが50くらい減っている……)




 ゴブリンから一瞬だけ視線を外して、スマホの画面を確認してみた。

 生命力バリアの減少値は20だった。




(20か思ったよりも少ない……感覚がズレている……でも、これは、たぶん、慣れの問題だな。プロのトンカツ屋は、豚肉をミリグラム単位で切り分けられるようになる……みたいな、そういう領域の話だと思う)




 なにかのテレビで見た事がある知識を思い返しながら、ゼンは、




(60発くらっても大丈夫なら、死ぬ前に殺し切れる……はず)




 ようやく見つけた、『ほどよいサイズ』の『少し尖った石』を拾って、




「よし、行こうか。記念すべき、異世界転移後『最初の戦闘』……まずは、てめぇを殺して、経験値と、その『こんぼう』をもらう」




「ゲギャギャ」




 ゼンの殺意を敏感に感じ取ったようで、ゴブリンは、目に力を込めた。




 互いの距離が、互いの射程圏内に迫る。




 ゼンは、




「あらゆる点で圧倒的なアドバンテージ。何もかもが優遇されている俺を――お前は、恨む権利がある。生きている以上、格差からは逃れられねぇ。……奪われ続けてきた俺が……今日からは奪う側に回る。それだけの事さ。だから、遠慮はしねぇ。許してくれなんてナメた事もいわねぇ」




 真剣な表情で、重たく、そうつぶやいてから、










「さあ、行くぞ……殺してやる」










 飛びだした。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...