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生命力バリア
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ゼンが顔をしかめていると、
「ゲギャギャ」
ゴブリンは右手に魔力を集めた。
そして、ピンポン玉サイズの火の玉をつくると、ゼンに投げつけてくる。
「うおっ、あっつぅううう!」
不意をつかれ、かつ、なかなかの速度だったため、避けられなかった。
右腕を前に出して、その腕を盾に受け止めると、火が、一瞬で、全身を包んだ。
「どわ、どわぁ!!」
パニックになりかけたが、全身をつつむ火は、一瞬で消えてしまったので、
(き、消えた、消えたぁ……ああ、良かったぁ……このまま焼け死ぬのかと、一瞬、ヒヤっとした。すげぇ熱かったのに、ヒヤッとした……言っている場合かっ)
深い溜息をつきながら、
(今のは、どういう魔法だ? ……火に包まれたってのに、別に、ヤケドとかはしてねぇ。……幻想の炎? そんな感じでもなかったんだけど……いったい、なにが――)
一瞬、混乱しかけたが、少し、頭の中を探ってみると、答えがみつかった。
(なるほど。GLで上がった分のHPは、本来の生命力そのものではなく、生命力を媒体にしたバリアになるのか……『生命力バリア』っていうのは、単なるHPの別表記じゃなかった訳ね)
ゼンは、ゴブリンを睨みつけ、戦闘態勢をとりながらも、頭の中を探り続ける。
(今の魔法は『威力が弱かった』から、ヤケドまでは至らなかったが、実際のところ、生命力バリアは、ヤケドなんかの『現象』を完全に無効化する事はできないし、仮に、生命力バリア内の『隠しパラメータ』である『耐久値』を超えるような一撃を受ければ、腕が切断されるような場合も充分にありうる……と)
生命力バリアの値は、『本来のHP(人間種でレベル2だと50くらい)』を、『GLの上昇に伴い手に入れた生命力を媒体にした特殊なバリア』で覆って『守っている量』というイメージが正しい。
完璧なバリアではないため、貫通される場合も多々あるが、色々な外敵や外邪から肉体を守ってくれる便利なオーラ。
状態異常にはなりにくいし、ウイルスや虫も滅多に寄りつかない。
(虫が避けていたのは、服のせいじゃなく、生命力バリアのおかげだったのか……ただ、耐久値とかの隠しパラメータの『ボーダー』は、ちょっと、分からない……うーん、でも、まあ、そういうのは、これからの『人生』で理解していけばいいか……)
魔法を放ったあとのゴブリンは、「この敵にはあまり魔法の効果はない」と判断したのか、こんぼうを構えて、ジリジリと、ゼンとの距離をつめようと近づいてきている。
ゼンは、足場を確認しつつ、近くに武器になりそうなモノが落ちていないか探しながら、
(で、俺の服は、神様からもらったヤツ以外も全部、勝手に特殊コーティングを受けているから、もし破れたり燃えたりするほどの攻撃を受けても、自動で再生すると……このご都合主義は助かるねぇ)
経験を糧に、頭に刻み込まれた情報の意味と価値を分析・解析し、魂にトレースしていく。
(しかし、この生命力バリアってすげぇな。ダメージを受けた際に、『痛みは感じるが、一定以上はカットされる』とか、これだけで結構なチートな気がする。生命力バリアを持っているヤツは、持っていないヤツより、あらゆる意味で優位になれる)
『瀕死で動けない重症』でも、『気絶・失神』に至る『瞬間的な大ダメージ』を負っても、『普通に動き回る事ができる』というアドバンテージ。
もちろん、『気絶』という状態異常に『絶対陥らない』という訳ではないが――
(……生命力バリアは、生命力を媒体にしているから、ゼロになると同時に死ぬ……ここは気をつけておかないとな)
HP+生命力バリア=表記されている数字であり、
生命力バリアが剥がされたら本来のHPが出てくる――という訳ではない。
(――『動けるからまだいける』と無謀につっこんだ結果、バリアがゼロになって死にました……ありうる未来だぜ)
痛みを感じる意味。
体に無茶をさせないためのリミッター。
今のゼンは、それが若干緩んでいる状態ともいえる。
(で、痛みの感じ方は、生命力バリアの減少量とイコール……この感覚は……うん、少し分かる。さっきの、火の玉をくらった分……たぶん、俺は、今……HPが50くらい減っている……)
ゴブリンから一瞬だけ視線を外して、スマホの画面を確認してみた。
生命力バリアの減少値は20だった。
(20か思ったよりも少ない……感覚がズレている……でも、これは、たぶん、慣れの問題だな。プロのトンカツ屋は、豚肉をミリグラム単位で切り分けられるようになる……みたいな、そういう領域の話だと思う)
なにかのテレビで見た事がある知識を思い返しながら、ゼンは、
(60発くらっても大丈夫なら、死ぬ前に殺し切れる……はず)
ようやく見つけた、『ほどよいサイズ』の『少し尖った石』を拾って、
「よし、行こうか。記念すべき、異世界転移後『最初の戦闘』……まずは、てめぇを殺して、経験値と、その『こんぼう』をもらう」
「ゲギャギャ」
ゼンの殺意を敏感に感じ取ったようで、ゴブリンは、目に力を込めた。
互いの距離が、互いの射程圏内に迫る。
ゼンは、
「あらゆる点で圧倒的なアドバンテージ。何もかもが優遇されている俺を――お前は、恨む権利がある。生きている以上、格差からは逃れられねぇ。……奪われ続けてきた俺が……今日からは奪う側に回る。それだけの事さ。だから、遠慮はしねぇ。許してくれなんてナメた事もいわねぇ」
真剣な表情で、重たく、そうつぶやいてから、
「さあ、行くぞ……殺してやる」
飛びだした。
「ゲギャギャ」
ゴブリンは右手に魔力を集めた。
そして、ピンポン玉サイズの火の玉をつくると、ゼンに投げつけてくる。
「うおっ、あっつぅううう!」
不意をつかれ、かつ、なかなかの速度だったため、避けられなかった。
右腕を前に出して、その腕を盾に受け止めると、火が、一瞬で、全身を包んだ。
「どわ、どわぁ!!」
パニックになりかけたが、全身をつつむ火は、一瞬で消えてしまったので、
(き、消えた、消えたぁ……ああ、良かったぁ……このまま焼け死ぬのかと、一瞬、ヒヤっとした。すげぇ熱かったのに、ヒヤッとした……言っている場合かっ)
深い溜息をつきながら、
(今のは、どういう魔法だ? ……火に包まれたってのに、別に、ヤケドとかはしてねぇ。……幻想の炎? そんな感じでもなかったんだけど……いったい、なにが――)
一瞬、混乱しかけたが、少し、頭の中を探ってみると、答えがみつかった。
(なるほど。GLで上がった分のHPは、本来の生命力そのものではなく、生命力を媒体にしたバリアになるのか……『生命力バリア』っていうのは、単なるHPの別表記じゃなかった訳ね)
ゼンは、ゴブリンを睨みつけ、戦闘態勢をとりながらも、頭の中を探り続ける。
(今の魔法は『威力が弱かった』から、ヤケドまでは至らなかったが、実際のところ、生命力バリアは、ヤケドなんかの『現象』を完全に無効化する事はできないし、仮に、生命力バリア内の『隠しパラメータ』である『耐久値』を超えるような一撃を受ければ、腕が切断されるような場合も充分にありうる……と)
生命力バリアの値は、『本来のHP(人間種でレベル2だと50くらい)』を、『GLの上昇に伴い手に入れた生命力を媒体にした特殊なバリア』で覆って『守っている量』というイメージが正しい。
完璧なバリアではないため、貫通される場合も多々あるが、色々な外敵や外邪から肉体を守ってくれる便利なオーラ。
状態異常にはなりにくいし、ウイルスや虫も滅多に寄りつかない。
(虫が避けていたのは、服のせいじゃなく、生命力バリアのおかげだったのか……ただ、耐久値とかの隠しパラメータの『ボーダー』は、ちょっと、分からない……うーん、でも、まあ、そういうのは、これからの『人生』で理解していけばいいか……)
魔法を放ったあとのゴブリンは、「この敵にはあまり魔法の効果はない」と判断したのか、こんぼうを構えて、ジリジリと、ゼンとの距離をつめようと近づいてきている。
ゼンは、足場を確認しつつ、近くに武器になりそうなモノが落ちていないか探しながら、
(で、俺の服は、神様からもらったヤツ以外も全部、勝手に特殊コーティングを受けているから、もし破れたり燃えたりするほどの攻撃を受けても、自動で再生すると……このご都合主義は助かるねぇ)
経験を糧に、頭に刻み込まれた情報の意味と価値を分析・解析し、魂にトレースしていく。
(しかし、この生命力バリアってすげぇな。ダメージを受けた際に、『痛みは感じるが、一定以上はカットされる』とか、これだけで結構なチートな気がする。生命力バリアを持っているヤツは、持っていないヤツより、あらゆる意味で優位になれる)
『瀕死で動けない重症』でも、『気絶・失神』に至る『瞬間的な大ダメージ』を負っても、『普通に動き回る事ができる』というアドバンテージ。
もちろん、『気絶』という状態異常に『絶対陥らない』という訳ではないが――
(……生命力バリアは、生命力を媒体にしているから、ゼロになると同時に死ぬ……ここは気をつけておかないとな)
HP+生命力バリア=表記されている数字であり、
生命力バリアが剥がされたら本来のHPが出てくる――という訳ではない。
(――『動けるからまだいける』と無謀につっこんだ結果、バリアがゼロになって死にました……ありうる未来だぜ)
痛みを感じる意味。
体に無茶をさせないためのリミッター。
今のゼンは、それが若干緩んでいる状態ともいえる。
(で、痛みの感じ方は、生命力バリアの減少量とイコール……この感覚は……うん、少し分かる。さっきの、火の玉をくらった分……たぶん、俺は、今……HPが50くらい減っている……)
ゴブリンから一瞬だけ視線を外して、スマホの画面を確認してみた。
生命力バリアの減少値は20だった。
(20か思ったよりも少ない……感覚がズレている……でも、これは、たぶん、慣れの問題だな。プロのトンカツ屋は、豚肉をミリグラム単位で切り分けられるようになる……みたいな、そういう領域の話だと思う)
なにかのテレビで見た事がある知識を思い返しながら、ゼンは、
(60発くらっても大丈夫なら、死ぬ前に殺し切れる……はず)
ようやく見つけた、『ほどよいサイズ』の『少し尖った石』を拾って、
「よし、行こうか。記念すべき、異世界転移後『最初の戦闘』……まずは、てめぇを殺して、経験値と、その『こんぼう』をもらう」
「ゲギャギャ」
ゼンの殺意を敏感に感じ取ったようで、ゴブリンは、目に力を込めた。
互いの距離が、互いの射程圏内に迫る。
ゼンは、
「あらゆる点で圧倒的なアドバンテージ。何もかもが優遇されている俺を――お前は、恨む権利がある。生きている以上、格差からは逃れられねぇ。……奪われ続けてきた俺が……今日からは奪う側に回る。それだけの事さ。だから、遠慮はしねぇ。許してくれなんてナメた事もいわねぇ」
真剣な表情で、重たく、そうつぶやいてから、
「さあ、行くぞ……殺してやる」
飛びだした。
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