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天上天下唯我独尊
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ゼンは、スゥっと息を吸ってから、ホルスドを睨みつけて、
「……仮の話だけど、俺が、ここから、空間魔法を使って逃げようとした場合、その成功率はどのくらいだ?」
「ランク8を超える空間魔法なら、対処方法を持っていないから、数時間は隠れられるかもしれないが……それ以下なら、干渉する魔法が使えるのでね。数分と持たないだろう。すぐに解析して侵入する。嘘だと思うなら試してみたらどうだ? 空間魔法などという超高位の魔法が、貴様に使えるとは思えないが」
「別に嘘だとは思っていないけど……あのさ、一つ、質問。なんで、色々と、ご親切に教えてくれるんだ? もしかして、なんか、アリア・ギアスでも使ってんの?」
「私が貴様を相手するのに、アリア・ギアスを使う必要があると本気で思うか?」
「……ねぇな」
「教えてやったのは、ただ、その方がより絶望できるだろうと思ったからだ。弱者にとって、『事実』よりも重たい絶望などない。くく……大サービスで、もうひとつ、教えてやろうか。貴様は、『我が主の興味をひいたイレギュラー』の眷属だけあって、異常なほど膨大な生命力を有しているようだ――が」
そこで、ホルスドは、右手に魔力を溜めていく。
「このぐらいかな……」
ある程度ためてから、そうつぶやくと、右手を、ゼンに向けて、
「これを受ければ、貴様は死ぬ。もしどうにか踏ん張って耐えても、すぐに二発目を撃つ。つまり、貴様は、今日、ここで、これから数秒以内に、確実に死ぬ」
「……そっか……最高だな……」
そこで、ゼンは、ニカァっと微笑んで、
「わが生涯には、全編にわたって『悔い』しか、無し。……はっ、爆笑だぜ。笑えねぇって点が何より可笑しくてたまらねぇ」
諦念を超えた感情の中で、そうつぶやいた。
そんなゼンに、ホルスドは尋ねた。
「一つ聞かせろ。貴様……なぜ、私の前に出てきた? この私には絶対に勝てない。そのぐらい、どれほどのアホウであろうと、流石に分かるはず。――なぜ……本当に、どうして、私の前に飛びだしてきた?」
「……」
「この戦闘は、偶然や事故で起きている訳ではない。お前は、自分の意志で、私の前に立った。貴様自身に命の危機があった訳でもないのに……どころか、他者が狙われていて逃げるチャンスだったはず。なのに、なぜだ? なぜ、貴様は私と闘っている。こんなもの、闘いでもなんでもないが……そういう質的な問題は、この際どうでもいい。答えろ。確定した死を飲み込んでまで私の前に立つ、その理由はなんだ? 自殺志願か?」
「絶対に違う。それだけは絶対に違う。自殺は最も忌むべき逃避だ。『俺以外の誰か』が『その道を選択する』のを止めはしないし非難をする気もないが……俺が実行する事だけは絶対にありえない。俺は、絶対に自殺だけはしない」
「では、いったい、何がしたかった?」
そこで、ゼンは間髪いれずに、
剣を上空に放り投げ、
そのまま、剣を放り投げた右手の人差し指を天に向け、
左手の人差し指を地に向けながら、
「決まってんだろ? かわいい女子の前でカッコつけたかったんだよ」
ハッキリと、シッカリと、ニィっと微笑んで、
「――どうだ? ハッピー(愉快)だろ?」
そう言った。
全身全霊でおどけるゼン。
とびっきりダサい、天上天下唯我独尊。
―― どうだ? 俺ほど尊い(バカな)やつは他にいねぇだろ? ――
「……」
ゼンが魅せた『最後の意地』を受けて、ホルスドは、眉間にシワをよせた。
「……ヨソでやれ。神の前でやる事ではない」
「仰る通りだよ」
言って、ゼンは、回転しながら落ちてきた剣を右手で掴み、構えなおす。
一瞬、掴み損ないそうになったが、それもまた一興!
――そして、言う。
「なんで、あの時、飛びだしたのか……この世で一番聞きたがっているのは、この俺自身だよ」
最後にそう言うと、ゼンは、最後の攻撃を開始した。
分かる。
理解できる。
死ぬ。
今日、死ぬ。
今、死ぬ。
「どうせ死ぬなら、せめて、髪の毛の一本くらいは切ってやらぁ!」
もちろん、そんな事をする意味はない。
髪の毛を切ったからなんだってんだ。
無意味。
クソ無意味。
そんなことは分かっている。
ゆえに、これは、意味どうこうを求めての行動ではない。
意地。
最後の抵抗。
――せめて――
「さらばだ、稀にみる愚か者よ。――光撃、ランク8!!」
ホルスドの魔法。
耀きが、ゼンを襲う。
死が見えた。
それでも、ゼンは止まらない。
――暴れて、果てて、死んでみせる!!
「……仮の話だけど、俺が、ここから、空間魔法を使って逃げようとした場合、その成功率はどのくらいだ?」
「ランク8を超える空間魔法なら、対処方法を持っていないから、数時間は隠れられるかもしれないが……それ以下なら、干渉する魔法が使えるのでね。数分と持たないだろう。すぐに解析して侵入する。嘘だと思うなら試してみたらどうだ? 空間魔法などという超高位の魔法が、貴様に使えるとは思えないが」
「別に嘘だとは思っていないけど……あのさ、一つ、質問。なんで、色々と、ご親切に教えてくれるんだ? もしかして、なんか、アリア・ギアスでも使ってんの?」
「私が貴様を相手するのに、アリア・ギアスを使う必要があると本気で思うか?」
「……ねぇな」
「教えてやったのは、ただ、その方がより絶望できるだろうと思ったからだ。弱者にとって、『事実』よりも重たい絶望などない。くく……大サービスで、もうひとつ、教えてやろうか。貴様は、『我が主の興味をひいたイレギュラー』の眷属だけあって、異常なほど膨大な生命力を有しているようだ――が」
そこで、ホルスドは、右手に魔力を溜めていく。
「このぐらいかな……」
ある程度ためてから、そうつぶやくと、右手を、ゼンに向けて、
「これを受ければ、貴様は死ぬ。もしどうにか踏ん張って耐えても、すぐに二発目を撃つ。つまり、貴様は、今日、ここで、これから数秒以内に、確実に死ぬ」
「……そっか……最高だな……」
そこで、ゼンは、ニカァっと微笑んで、
「わが生涯には、全編にわたって『悔い』しか、無し。……はっ、爆笑だぜ。笑えねぇって点が何より可笑しくてたまらねぇ」
諦念を超えた感情の中で、そうつぶやいた。
そんなゼンに、ホルスドは尋ねた。
「一つ聞かせろ。貴様……なぜ、私の前に出てきた? この私には絶対に勝てない。そのぐらい、どれほどのアホウであろうと、流石に分かるはず。――なぜ……本当に、どうして、私の前に飛びだしてきた?」
「……」
「この戦闘は、偶然や事故で起きている訳ではない。お前は、自分の意志で、私の前に立った。貴様自身に命の危機があった訳でもないのに……どころか、他者が狙われていて逃げるチャンスだったはず。なのに、なぜだ? なぜ、貴様は私と闘っている。こんなもの、闘いでもなんでもないが……そういう質的な問題は、この際どうでもいい。答えろ。確定した死を飲み込んでまで私の前に立つ、その理由はなんだ? 自殺志願か?」
「絶対に違う。それだけは絶対に違う。自殺は最も忌むべき逃避だ。『俺以外の誰か』が『その道を選択する』のを止めはしないし非難をする気もないが……俺が実行する事だけは絶対にありえない。俺は、絶対に自殺だけはしない」
「では、いったい、何がしたかった?」
そこで、ゼンは間髪いれずに、
剣を上空に放り投げ、
そのまま、剣を放り投げた右手の人差し指を天に向け、
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「決まってんだろ? かわいい女子の前でカッコつけたかったんだよ」
ハッキリと、シッカリと、ニィっと微笑んで、
「――どうだ? ハッピー(愉快)だろ?」
そう言った。
全身全霊でおどけるゼン。
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―― どうだ? 俺ほど尊い(バカな)やつは他にいねぇだろ? ――
「……」
ゼンが魅せた『最後の意地』を受けて、ホルスドは、眉間にシワをよせた。
「……ヨソでやれ。神の前でやる事ではない」
「仰る通りだよ」
言って、ゼンは、回転しながら落ちてきた剣を右手で掴み、構えなおす。
一瞬、掴み損ないそうになったが、それもまた一興!
――そして、言う。
「なんで、あの時、飛びだしたのか……この世で一番聞きたがっているのは、この俺自身だよ」
最後にそう言うと、ゼンは、最後の攻撃を開始した。
分かる。
理解できる。
死ぬ。
今日、死ぬ。
今、死ぬ。
「どうせ死ぬなら、せめて、髪の毛の一本くらいは切ってやらぁ!」
もちろん、そんな事をする意味はない。
髪の毛を切ったからなんだってんだ。
無意味。
クソ無意味。
そんなことは分かっている。
ゆえに、これは、意味どうこうを求めての行動ではない。
意地。
最後の抵抗。
――せめて――
「さらばだ、稀にみる愚か者よ。――光撃、ランク8!!」
ホルスドの魔法。
耀きが、ゼンを襲う。
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それでも、ゼンは止まらない。
――暴れて、果てて、死んでみせる!!
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