異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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ゼンと勇者

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「まあ、それはともかく……なぁ、ゼン。あたしのことばっかり気にしてへんで、たまには、頭カラッポにして、この世界を楽しもうや。忘れてるかもしれへけんど、あたしら、異世界転移してんねんで? チートもってんねんで? これで楽しまへんかったら、それこそ罪やで」




「………………ぁあ……そう、だな」




 無理をしているのがダイレクトに理解できて、だからこそ、ゼンは、歯噛みしながら、笑顔をつくろうとした。




 その姿を見て、シグレは、




(ほんまに、キュン死してまうわ。……なんもかんも、全部が、ごっつツボやわ……)




 心の中でそんな事をつぶやいた。




(なんか、アレやなぁ……あたし、完全に堕ちてんなぁ……いやぁ、ヤバイ呪いを背負った事とか、どうでもよくなるくらい……今、あたし……)




 頭が狂っているという自覚はあった。

 ゼンに狂っている。

 だが、そんな今の状態こそが至福。







 ――まるで、生まれる前から決まっていたかのように、

     シグレは、ゼンに狂っていた。







(ああ、今、あたし、めっちゃ幸せや)




 と、シグレが、ゼンにキュンキュンしていた時、




 ガチャっと扉が開いた。




 入ってきたのは二人組。

 青年と少女。
















「分かったぞ、予選会場の場所」
















 ぶっきらぼうな態度でそう言いながら、封筒を手にしているハルス。

 その後ろを、おずおずとついてきているセイラ。







 冒険者試験に申し込んだ者全員に送られてくる封筒に入っていた暗号文。

 それが、予選の受付会場の場所を示すものだった。







「悪いな、ハルス……俺、暗号は苦手で……」




 言いながら、センは、ハルスの元に歩み寄り、その封筒を受け取った。




「ここ、どこ? 俺、セファイルの地図、まだよめねぇんだ」

「マジでなんもできねぇ野郎だな……」




 ハルスは一度、ためいきをついてから




「ここは、ソロウ侯の第三屋敷だ。貴族の屋敷を予選の受付会場にするのは、まあ、よくある事だな」




「……なるほど。総当たりの当てずっぽうが通じないようになっている訳か……」




 貴族の屋敷に理由もなく近づく事は当然許されていない。




 『冒険者試験を受けにきた』

 そのぐらい明確な理由がなければ、不用意に近づくだけで斬首されるだろう。
















 ――既に、互いの顔合わせは終わっている。

 『勇者という戦力』に心の底から期待しているゼンは、最初から徹頭徹尾、ハルス対して、真摯な態度でのぞんだ。

 もちろん、ハルスは、あんな性格なので、最初は――







 ※※※




「――で、こっちがあたしの旦那で、名前はゼンな」




「誰が旦那だ。出身が同じで、今は協力関係にあるだけだ……えっと、悪いな。ハルス。ゼンだ。冒険者試験ではよろしく頼む。あんたほどの力を持つ『魔人』の協力が得られて本当に幸運だった」




「……」




「どうした?」




「プライドがないのかねぇ……はっ、冒険者試験で、魔人である俺の力に頼ろうって魂胆が見え見えすぎて、気持ち悪いぜ。そんなに権威がほしいかねぇ。あー、やだやだ。てめぇみたいな野郎が、俺は大嫌いだ。殺していいなら、すでに万回殺してる。あ、ごめんなさーい、つい本音が出ちゃったぁ、てへ♪」




 ハルスの感想に対して、ゼンは、フラットなまま、




「ああ、俺も今の自分が嫌いだよ。誰かに頼るしかない、何もできない弱い自分が」




 まっすぐな目でそう答えた。

 それに対して、ハルスは、心底からバカにした顔で、




「はっ、お前、あれか? 自覚があるのは、無いよりマシだと思っているクチか? 自分の弱さを認識していようがいまいが、現実は何もかわらねぇ。つまり、どっちも同じクズでしかねぇ」




「ああ、そうだ。俺はクズだ。だが、やらなければいけない事がある。その現実にも、変わりはない」




 何を言われてもブレないゼンを見て、

 ハルスは、軽く鬱陶しそうな顔をして、




(妙な野郎だ……シグレも大概いかれた女だが、こいつには、それ以上の狂った覚悟を感じる。フーマーの奥地(東方)にいるヤツってのは、こんなんばっかりか?)

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