異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

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俺の名は

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モクモクモクモクゥっと上がった紫の煙。

 すぐに、その煙は霧散していった。







 魔法陣の上には、一人の男が立っていた。




 中年の魔人。

 ラムドの面影を残している、三十代後半に見える何者か。




 その男は、ペタペタと両手で、自分の体を確認しながら、




「ラムド・セノワール、それがあんたの名前か……マジで感謝するぜ。俺を呼んでくれて。ただ、クソみたいに『諦め』て、ゴミのように『敗北』して、無様に死にゆくだけだった俺を引き揚げてくれて……本当に……心から感謝する。全部はすくえなかったが……どうにか、あんたの意思の欠片は残せた」




 追悼するように、ゆっくりと目を閉じて、




「なんつーか、俺達、ピッコロとネイルの関係に似ているな。本体は間違いなく俺だが、俺の中に、あんたは確実にいる。……あんたの記憶、あんたの想い、あんたの意思……確かに感じているぜ。俺の中に、あんたは、確かに残っている……よかった」













 その男は、ぶつぶつとそうつぶやくと、

 キョロキョロと周囲を一度見渡し、UV1を見つけると同時に、







「どうも、我が親愛なる上司、UV1様」




「……」




「どうしました? 怪訝な顔をなさっていますが」




(ラムド……では、ない。見た目には面影が少しだけ残っているが、雰囲気がまるで違う……これは、完全に別人……いったい、どういう……)




 暗殺者としては頂点にいるUV1だが、召喚について詳しくない。

 ゆえに、現状、何が起こっているのかサッパリ分からない。




 もちろん、召喚についても、まったく何も知らないという訳ではない。

 UV1も、簡単なモノならいくつか召喚できる(飛行ユニットやシャドウ系のモンスター等)。

 UV1は、ゼノリカという全世界最高峰の組織に属している超人。

 下部組織とはいえ、一つの勢力の『頭』を負かされている超越者。

 とうぜん、最低限以上の教養はある。

 だが、現状は、理解できない。

 当然。




 仮にUV1が召喚の専門家だったとしても、現状を正しく理解する事はできない。

 これは、それほどの異常事態。










「そんな、不審者を見るような眼を向けられるのは心外ですねぇ。俺は別に、UV1様の敵じゃありませんよ。というか、あなたと敵対はできません。あなたは強すぎる」










 目の前にいる、『ラムドではない誰か』のそんな発言を受けて、UV1は、わずかに逡巡してから、







「答えなさい」







 冷静に、声音をフラットに、




「もしかして、お前は……」




 とりあえずの推測を、




「ラムドと融合したの?」







 口にしてみた。




 どうやら、目の前の『こいつ』は、間違いなくラムドではないにも関わらず、状況を理解しているようだ。

 なぜか。

 ラムドと一つになったからではないか。




 単純な推測。




「融合とは少し違うような気がしますね。吸収でも、同化でもない。ただ、俺の中に、ラムドもいる。それだけ……いえ、結局、合体なんですかね。ぶっちゃけ、俺にも、よくわかんねぇんすわ」




 実際、『彼』にもよくは分かっていない。

 彼はただ、ラムドをすくいあげただけ。

 ギリギリのところで、

 はじけ飛ぶ寸前の『意識』が、

 そうしたいと『思った』だけ。




 それが可能であると理解していた訳でも、

 明確にその方法を認識していた訳でもなんでもなく、

 ただ、そうしたいと思ったら出来た――それだけ。




 だから、詳細は一つも理解できていない。




「まあ、ただ、一応、今も、俺は、あなたの部下のつもりですよ。なぜなら、先ほども言ったように、あなたは強すぎるから。もちろん、他にも、いろいろと理由はありますが、やっぱり、それが一番ですね。俺の本能とラムドの意識が、あんたには敵対するなと叫んでいる」




 ラムドの意識が叫ぶ事などない。

 『彼』の中にいるラムドは、『彼』の中に『あるだけ』で自己主張などしない。

 今のは、いわゆる、『彼』なりの、ラムドに対する、ちょっとした配慮でしかない。




「敵対せざるをえない理由があるのならともかく、今のところ、俺があなたに刃向う理由はない。むしろ、あなたの庇護下でいたいとすら思う。どうです? 合理的でしょう? だから、俺のことを信じろとは言いませんが、警戒心バリバリで睨みつけてくるのはやめてくれません? 普通に恐いんですよ」




 合理を並べられたことで、UV1の意識に変化が起きた。




 何度でも言うが、UV1はゼノリカに属する者。

 その中でも、彼女は、司法に携わっており、というか、その頂点(極めて限定的だが)と言ってもいい立場。

 すなわち、神法への帰属意識がハンパじゃない。




 神法は、合理を尊び、不条理を許さない法。

 『完全な善』にはなりきれない『生命の業』を背負いながら、

 それでも『善であろうとする想い』、

 そんな、狂気的とも言うべき、摂理への抵抗。




 ゆえに、UV1は、いつだって、合理を前にすると冷静にならざるをえなくなる。




 まるでパブロフの犬。

 条件反射的に、UV1は、道理を模索する。

 ゆえに、目の前の男と、建設的な会話を試みようとする。







「……ちなみに、お前は誰?」




「おっと、自己紹介が遅れましたね。どうも、はじめまして。えーっと、どこから言おうかなぁ。んー、そうだなぁ……とりあえず、年齢は38。出身は、早稲田大学法学部。ここに来る前に所属していたのは、警視庁公安部公安第五課。役職は課長。職業を正確に言うなら、『異界事件』特別対策係の特命捜査官。名前は――」




























 ――閃壱番せん えーす。







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