異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話

閃幽零

文字の大きさ
277 / 380

ラスボス『ゴート・ラムド・セノワール』

しおりを挟む
「ふむふむ」

 返事をしながら、心の中で、

(最初、UV1が言っていた、ゼノリカが目指す概念的な『巨悪』……そこに変更はなく、魔王国のポジションの変化を望むというのは……つまり、魔王国がメインのミッションに変更されたという事か? 元々が何をメインにしていたのか知らないが、なんにせよ、これは、チャンスがきたってことじゃないか?)

 最初のメインは『ゼンを鍛える事』
 しかし、バロールは、そんな事、聞かされていない。
 この作戦が、基本的には、『ゼンという存在を強化する事』であるという事を知っているのは、ゼノリカ内では酒神終理しかいない。

 そして、彼女は、センの意思を尊重している。
 つまり、『ゼン』については、ゼノリカの誰にも言っていない。

 ここで明確にしておこう。
 『センの意思』とは何か。
 単純。

 どんな時でも、ゼノリカという概念を、『茶番』にしたくない。
 ゼンを鍛える道具として利用する――が、
 ゼノリカをゼンのオモチャにはしたくない。

 センのワガママを、シューリは聞きいれた。
 その結果が現在。





 ――いずれ、ゼノリカは、ゼンという存在に気付く。
 今回のミッションにおいて、ゼノリカの面々は、みな、最終的にはゼノリカがジンテーゼ(高次の最終解)に昇華すると認識(誤解)している。
 非常に簡単な言葉で言えば、ゼノリカに属する者は、終理をのぞいて、みな、

 ――神は、『明確な悪』の『統合と解決』によって、
 『高次の平和』を実現させようとしているのだ――

 と思い込んでいる。





 『世界がヤバい!』
 『みんなで解決しよう!』
 『ヒーロー見参!』
 『世界が一つになって、平和になった! めでたし、めでたし』





 少し解説すると↓こんな感じ

 『世界がヤバい!』←急進的なゼノリカ。傲慢で非人道的と言わざるをえない抜本的な改変を求める巨大組織。途上世界視点での分かりやすい巨悪。
 『みんなで解決しよう!』←そこにゼノリカの一部も介入。ゼノリカ内部の漸進派と手を取り合い、完全なる平和の模索。戦争は手段で、基本は対話。
 『ヒーロー見参!』←最終解への到達。最初から用意しておくが、それがバレないよう、慎重に。
 『世界が一つになって、平和になった! めでたし、めでたし』←今後はゼノリカと世界が手を取り合っていきましょう。


 その過程で、ゼノリカは『悪』を理解し、
 ゼノリカという組織の『器』は強化される。

 このミッションは、ゼノリカが『より高次の代弁者』となるために必要な一手。
 と、ゼノリカに属する誰もが誤解している。


 実質的に巨悪を前面に押し出していくゼノリカと、本質がセンエースである『ゼン』は、どこかで絶対的に対立する。
 先の流れの中で、ゼンが『ヒーロー見参(最終解そのもの)』を宣言し、全てが救われる。

 それが、シューリのプランだったが、
 シューリが、
 『そのガキが本当にセンエースなら、別に、何もしなくても、勝手にそうするだろ。で、その過程で勝手に強くなるだろう。だって、センエースだもん』
 と、綿密に立てたプランを、ペーンッと投げ捨てた。

 そして、シューリは、このミッションの『ヒーロー見参(最終解)』が誰によって行われる予定なのかを伝えていない。
 結果、丸投げされた、『ゼン』という存在を知らないバロールは、『ヒーロー見参』を叫ぶ象徴をゼロから創り上げるハメになった。


 その結果が、現在。
 分かりやすい混沌。


(反ポピュリズム……いや、非ポピュリズムかな、求められているのは……)


 そして、当然のように、ラムド(ゴート)は、自分がアンチテーゼを任されたと理解する。
 ラムド・セノワールが、『分かりやすい巨悪』となる。
 ゼノリカの闇そのもの、明確なラスボス、倒せば終わりになる黒幕。
 アンチテーゼが自分で、ジンテーゼがゼノリカ。
 ならば、テーゼはなんだ?

 魔王国がメインになった理由は?
 つながりは密接。
 すぐに、ゴートは理解した。

(リーン・サクリファイス・ゾーンか……)

 脳筋お花畑のバカ魔王。

(あのバカ魔王の幼稚な思想は、しかし、矯正可能と判断された……アホ丸出しという弱点さえカバーできれば、誰よりも平和を熱望するカリスマの塊。つまりは、象徴たりうる)

 ゼノリカがバックにつけば、リーンの思想は余裕で現実可能となる。
 ↑これを、最終解に置いてストーリーをくみ上げる。


 本来であれば『ゼン』の役目。
 バロールは、そこに、リーンを当てはめようと決断した。
 そして、巨悪――這い寄る混沌をラムドに任せる。
 なぜ?
 適任だから。
 この世界で、表の上層部が恐れている時限爆弾。
 強大な力を持つ魔物サイドの頭がおかしい召喚士、ラムド・セノワール。
 今なら『人類の希望である勇者を殺した』というハクもついている。
 まあ、なんて、うってつけ。
 あとは、『天』が背中を押してやれば、立派な巨悪のできあがり。

 ゼノリカが手を貸す事で、ラムドは巨悪になれる。
 そして、その巨悪を、正義のリーンがねじふせる。





『バックにゼノリカの急進派を背負ったラムドの暴走で、世界が大変なことになった』
『誰か助けて』
『リーン「ヒーロー見参」』
『めでたし、めでたし』





 魔王国は、混沌ラムドと救済リーンが内包する国となる。
 最初、ゼノリカの急進派を背負ったラムドは混沌を撒き散らし、最後には、ゼノリカの漸進派を背負ったリーンと共に完全な救済を描く。

 魔王国という舞台の上で、ゼノリカがジンテーゼとして昇華される。
 この世界は、それを黙って見ていればいい。
 完全で平和な世界征服。


 本来ならば、
 この混沌を、
 なんであれ、
 ゼンが解決するはずだった。

 バロールが暴走しようがどうしようが、
 リーンが代役になりかけようがどうしようが、
 どうせ、最終的にはゼンが全てをかっさらう。

 シューリの中には、そんな考えもあった。
 というか、そうなるだろうと予測をたてて計画を投げ捨てた。

 そして、実際にそうなって、
 しかし、この混沌は、思いもよらない方向に向かって加速する事になる。





 いくらシューリでも、
 センエースがもう一人現れ、ラムドを飲み込んでしまうなどとは考えつかなかった。
 究極の可能性を背負ったラムド(ゴート)。
 混沌の中心になる事を宿命づけられたゴート(ラムド)。



 この混沌の明日はどっちだ!
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

狙って追放された創聖魔法使いは異世界を謳歌する

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーから追放される~異世界転生前の記憶が戻ったのにこのままいいように使われてたまるか!  【第15回ファンタジー小説大賞の爽快バトル賞を受賞しました】 ここは異世界エールドラド。その中の国家の1つ⋯⋯グランドダイン帝国の首都シュバルツバイン。  主人公リックはグランドダイン帝国子爵家の次男であり、回復、支援を主とする補助魔法の使い手で勇者パーティーの一員だった。  そんな中グランドダイン帝国の第二皇子で勇者のハインツに公衆の面前で宣言される。 「リック⋯⋯お前は勇者パーティーから追放する」  その言葉にリックは絶望し地面に膝を着く。 「もう2度と俺達の前に現れるな」  そう言って勇者パーティーはリックの前から去っていった。  それを見ていた周囲の人達もリックに声をかけるわけでもなく、1人2人と消えていく。  そしてこの場に誰もいなくなった時リックは⋯⋯笑っていた。 「記憶が戻った今、あんなワガママ皇子には従っていられない。俺はこれからこの異世界を謳歌するぞ」  そう⋯⋯リックは以前生きていた前世の記憶があり、女神の力で異世界転生した者だった。  これは狙って勇者パーティーから追放され、前世の記憶と女神から貰った力を使って無双するリックのドタバタハーレム物語である。 *他サイトにも掲載しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...